よろこんで!**してみました。

アラフィフ男子が、何気ない日常生活で楽しいと思うことを、つれづれに書く雑記ブログ。美術・落語・スポーツ観戦・グルメ・お酒に旅行等々。たまには、なにか語ることもあるかも・・・

【展覧会】2019年12月 東京の展覧会通信(2019/12/4)

こんばんは。

 

  「令和」の今年もあと1か月弱。本当に時が経つのは早いですねぇ。

そろそろ、今年を振り返るテレビ番組等も多くなってくるでしょうが、今年はどんな年でしたか。また、そんなことも記事に書いてみたいと思います。個人的には、なかなか、忙しかったかなぁ・・・

 

  さて、今年最後の展覧会通信。見に行く方が忙しくて、なかなか美術展の記事を書けていませんが、今月も自分のための展覧会備忘録、これだけはまとめておきたいと思います。とにかく、一貫性はありません。「今、気になるものを、ただ載せる」というコンセプトで書いてます。長い目で、お付き合いのいただけますと幸いです。

なお、今月も初出の展覧会は「☆彡」印を、見て来た展覧会は「(見た!)」を付けてます。

もし、気になる展覧会がございましたら、お早めに(^^)

 

f:id:YoroCon:20191204003412j:image

(浮世絵オールスターが勢揃いです)

 

【目次】

 

1. 情報源

今回も次の情報を中心に書いていきます。ご参考まで。

・「日経 おとなのOFF」2019年1月号(+付録「2019 美術展100ハンドブック」)

・チラシミュージアム(iPhoneソフト):チケットのe-plusのスマホアプリ

チラシミュージアム~美術館・博物館の情報&クーポン|イープラス

・アートスケープ:大日本印刷さんのアート情報サイト。各地域の展覧会情報も検索できます。

展覧会スケジュール|美術館・アート情報 artscape

 

それでは、いよいよ本題です。

 

2. 西洋美術

今月から開催の展覧会はこちら。

 

☆彡「日本・ハンガリー国交樹立150周年記念  ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵 ブダペストーヨーロッパとハンガリーの美術400年」乃木坂・国立新美術館 2019/12/4(水)~2020/3/16(月)

budapest.exhn.jp※ なかなか長いタイトルの展覧会ですが、シニェイ・メルシェ・パール「紫のドレスの婦人」(1874年)に目を惹かれたのが見たいと思ったきっかけです。開催期間も長いですし、普段、あまり意識して見ることのないハンガリーの美術を堪能したいと思います。クラーナハ、テイツィアーノから印象派の作品もあるようです。

 

こちらは、見に行った展覧会です。

「コートールド美術館展」上野・東京都美術館 開催中~12/15(日) (見た!)

courtauld.jp※ 会期末も近づき、結構混んでいるとは思いますが、今年1、2をあらそう見どころの多い展覧会です。目玉であるマネ最晩年の作「フォリー=ベルジェールのバー」(1882年)は、絶対に生で見るべき一枚だと思います。マネはこの絵にいろいろな企みを込めていると思います。是非、直接味わってみてください。

f:id:YoroCon:20191204003403j:image(絵ハガキより)

 

「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」横浜・横浜美術館 開催中~2020/1/13(月・祝) (見た!)

artexhibition.jp※ こちらも見に行ってきました。オランジュリーの中でもモネなどの印象派作品というよりはマティス、アンドレ・ドラン、ユトリロ、ローランサン等の絵が多く来ているという印象です。その中でもアンドレ・ドランの「座っている画家の姪」(1931年)、とても好きな一枚なので、この絵を日本で見られたことは感慨深いものがあります。

f:id:YoroCon:20191204003418j:image(絵ハガキより)

 

そして、やはり展覧会中心はルノワール。「ピアノを弾く少女たち」(1892年)、オランジュリーで見たときの感動が思い起こされます。 f:id:YoroCon:20191204003406j:image(絵ハガキより)

 

ほかにはセザンヌの作品もまとまって来ています。

 

  続いては開催中の展覧会。会期末が早い順に並べます。

 

・「ラウル・デュフィ展 - 絵画とテキスタイル・デザイン」汐留(新橋)・パナソニック汐留美術館 開催中~12/15(日)  

panasonic.co.jp※ 残る期間も、あとわずか。見に行けたら良いなぁ。

  

・「ミュシャ展 ~運命の女たち~」横浜・そごう美術館 開催中~2019/12/25(水)  

www.sogo-seibu.jp※ Bunkamuraで開催していたミュシャ展は現在、京都文化博物館で開催中のようですが、今年もミュシャは人気でした。ミュシャの見た「運命の女たち」、興味がそそられます。

 

 

・「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアム 開催中~12/26(木)(会期延長) 

www.bunkamura.co.jp※ 侯爵家が誇るコレクションの展覧会。12/23までの予定が12/26まで会期延長です。(前売もそのまま12/26まで使えるようです)

  

・「ゴッホ展」上野・上野の森美術館 開催中~2020/1/13(月・祝)  

go-go-gogh.jp※ およそ10年の画業で多くの作品を制作したゴッホ。先月、見に行く予定でしたが仕事で・・・(^^;)今月こそはリベンジ。

 

・「フランス絵画の精華 - 大様式の形成と変容」八王子・東京富士美術館 開催中~2020/1/19(日)  

www.fujibi.or.jp※ エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランの作品を見に行きたい!

 

・「印象派からその先へ - 世界に誇る吉野石膏コレクション」東京(丸の内)・三菱一号館美術館 開催中~20/20/1/20(月)  

mimt.jp※ 印象派に加え、国内有数のシャガールの作品も目を引く展覧会のよう。

  

「ハプスブルク展 - 600年にわたる帝国コレクションの歴史」上野・国立西洋美術館 開催中~2020/1/26(日) 

habsburg2019.jp※ 日本・オーストリア友好150周年を記念したオーストリア帝国のコレクションの展覧会。王家が集めたいろいろな作品を堪能できそうです。 

 

3. 日本美術

こちらも今月から開催の展覧会です。

・「鏑木清方 幻の<<築地明石町>>特別公開」竹橋東京国立近代美術館 開催中~2019/12/15(日) (見た!)

www.momat.go.jp

※ 鏑木清方の最高傑作とも言われる<<築地明石町>>

清方には珍しく実在のモデルを描いた作品とのこと。そのモデルは清方夫人の友人・江木ませ子。若かりし頃より美人で有名だったそうですが、少し年を経て描かれたその姿は落ち着きと気品があり、目の周りの一本の涙腺が彼女がこれまで過ごした時間を表現しています。44年ぶりに見せるその姿は見るべき一品だと思います。

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(絵ハガキより)

 

  ちなみに常設展も観覧できます。

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(こちらは、撮影可能な作品から)

 

・「大浮世絵展 ― 歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演 」両国・江戸東京博物館 2019/11/19(火)~2020/1/19(日) (見た!)

dai-ukiyoe.jp※人気の高い絵師5人の作品を集めた展覧会。こちらは11/30(土)の次のイベントとあわせて見てきました。

www.1101.com

今年1月に他界した橋本治さんの「ひらがな日本美術史」の話などをベースに美術ライターの橋本麻里さんのトークショーが開催されました。

江戸時代の版元・蔦屋十兵衛は最初、美人画の喜多川歌麿とタッグを組んでいたが、そのうち疎遠になり、あとから写楽が出てくる。これは蔦屋十兵衛が写楽を推し過ぎて歌麿と仲たがいしたからではないか?世間に求められるまま風景画を描き続けざるを得なかった広重は天才・北斎にいじましいほどのライバル心を燃やしていた?国芳の絵は当時のEXILE?などなど。とても示唆に富んで、想像力を掻き立てられる面白いお話しでした。

この展覧会は浮世絵五大スターの代表作が集まる展覧会で、これ以上の作品が一堂に会することは今後ないのではないか?とのことです。本当に有名な作品が集まっています。きっと見たことのある絵が多くあると思いますので、初めて浮世絵を見るという方にも、とてもおススメです。

 

  さて、こちらも続いては開催中の展覧会。会期末が早い順に並べます。

☆彡「東山魁夷の青・奥田元宋の赤 -色で読み解く日本画-」広尾(恵比寿)山種美術館 開催中~2019/12/22(日)  

www.yamatane-museum.jp※ 山種美術館広尾開館10周年記念の特別展です。

  

・「東洋文庫の北斎展」駒込(千石)・東洋文庫ミュージアム 開催中~2020/1/13(月・祝) 

www.toyo-bunko.or.jp※ 東洋文庫のコレクション展です。

 

4. その他

こちらは、また来年(^^)

 

5. さいごに

今年もあと少しですが、年末・年始は展覧会が華やぐ季節です。是非、見たい展覧会は今年のうちに。さて、あといくつ見に行けるだろう。

 

以上、ここまで、お読みいただき、ありがとうございます。

 

今月は、お休みをいただいて、少し関西方面を旅行しようか、なんて思っています。(奥様は仕事なので一人でですが^^;)そこでも、どこか美術館・博物館に行ければ良いなぁとおもってます。また、いろいろと回ったら、報告したいと思います。

 

ということで、以上です。それでは、次回の展覧会通信はまた来年。ではでは


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(千客万来。きっと福が来ることでしょう)
 

【展覧会】2019年11月 東京の展覧会通信(2019/11/4)

こんばんは。

 

  44日間、盛り上がったラグビーワールドカップ。土曜日で終わりました。なんだか寂しいです。そして、今年もあと2か月。時が経つのは早いです。

 

  さて、展覧会の方は先月から開催のものが多くなりますが、確認の意味も込めて、今月も自分のための展覧会備忘録をまとめていきたいと思います。とにかく、一貫性はありません。「今、気になるものを、ただ載せる」というコンセプトで書いてます。長い目で、お付き合いのいただけますと幸いです。

なお、今月も初出の展覧会は「☆彡」印を、見て来た展覧会は「(見た!)」を付けてます。

もし、気になる展覧会がございましたら、お早めに(^^)

 

f:id:YoroCon:20191103172850j:image

(素晴らしかった。この展覧会は間違いなく必見です)

 

【目次】

 

1. 情報源

今回も次の情報を中心に書いていきます。ご参考まで。

・「日経 おとなのOFF」2019年1月号(+付録「2019 美術展100ハンドブック」)

・チラシミュージアム(iPhoneソフト):チケットのe-plusのスマホアプリ

チラシミュージアム~美術館・博物館の情報&クーポン|イープラス

・アートスケープ:大日本印刷さんのアート情報サイト。各地域の展覧会情報も検索できます。

展覧会スケジュール|美術館・アート情報 artscape

 

それでは、いよいよ本題です。

 

2. 西洋美術

今月から開催の展覧会です。

☆彡「ミュシャ展 ~運命の女たち~」横浜・そごう美術館 2019/11/23(土・祝)~2020/1/13(月・祝)  

www.sogo-seibu.jp※ ミュシャ生家近くのチマル博士のコレクションから約150点が展示されるとのこと。ミュシャの人生を彩る女性たちにまつわる作品とのこと。渋谷Bunkamuraのミュシャ展との違いも含め、見に行ってみたいと思っています。なお、こちらの美術館は11/17(日)まで、「不思議の国のアリス展」を開催中です。

 

こちらは、見に行きました!

「コートールド美術館展」上野・東京都美術館 開催中~12/15(日) (見た!)

courtauld.jp※ 11/1の金曜日、仕事を早上がりして見に行ってきました。平日の午後でしたが、結構、混んでいました。とにかく、今年、見るべき展覧会の一つだと思います。展示数は多くはない(60点)のですが、逆にゆったりとした配置になっていて、人が多い割にはゆっくり見られたと思います。それでも、人気作品の周りには人が集まります。セザンヌの手紙など、資料も多く、解説も詳しいので、鑑賞時間は結構かかります。私は90分でした。絶対に会期末に近づくほど長蛇の列ができることは必至。お早めに行かれることをおススメします。(11/1はまだ入場待ちなどはありませんでした)

 

  開催中の展覧会。会期末が早い順に並べます。

・「ピカソ展 - ゲルニカ「タピスリ」をめぐって」群馬県館林・群馬県立館林美術館 開催中~12/8(日)  

www.gmat.pref.gunma.jp※ 東京からはちょっと遠いのですが、ゲルニカ[タピスリ]は興味あり。紅葉もキレイな季節だし、ドライブがてら、見に行きたいですねぁ。

 

・「ラウル・デュフィ展 - 絵画とテキスタイル・デザイン」汐留(新橋)・パナソニック汐留美術館 開催中~12/15(日)  

panasonic.co.jp※ 明るい色彩に包まれた、華やかな展示を期待しています。

 

・「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアム 開催中~12/23(月)  

www.bunkamura.co.jp※ 侯爵家が誇るコレクションの展覧会です。

 

「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」横浜・横浜美術館 開催中~2020/1/13(月・祝) 

artexhibition.jp※ こちらは本日(11/4)、これから見に行きます。とにかく、パリの中でも大好きな美術館。早くルノワールを見たい!行ってきます。

 

・「ゴッホ展」上野・上野の森美術館 開催中~2020/1/13(月・祝)  

go-go-gogh.jp※ およそ10年の画業で多くの作品を制作したゴッホ。これまで私の知るゴッホとは違う作風の作品もあるようで、ゴッホの理解を深められる展覧会のようです。こちらも楽しみです。来週、見に行く予定。

 

・「フランス絵画の精華 - 大様式の形成と変容」八王子・東京富士美術館 開催中~2020/1/19(日)  

www.fujibi.or.jp※ エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランの作品がお目当てです。

 

・「印象派からその先へ - 世界に誇る吉野石膏コレクション」東京(丸の内)・三菱一号館美術館 開催中~20/20/1/20(月)  

mimt.jp※ 印象派の名品ぞろいの展覧会。年末年始に混む前に行きたいところ。

  

「ハプスブルク展 - 600年にわたる帝国コレクションの歴史」上野・国立西洋美術館 開催中~2020/1/26(日) 

habsburg2019.jp※ 日本・オーストリア友好150周年を記念したオーストリア帝国のコレクションの展覧会。王家が集めたいろいろな作品を堪能できそうです。 

 

3. 日本美術

こちらも今月から開催の展覧会です。

☆彡「鏑木清方 幻の<<築地明石町>>特別公開」竹橋・東京国立近代美術館 開催中~2019/12/15(月・祝)  

www.momat.go.jp

※ 美人画の大家、鏑木清方。<<築地明石町>>は1975年から行方不明だった幻の名画とのこと。<<新富町>>、<<浜町河岸>>とあわせての公開です。これは見逃せない。

 

☆彡「東山魁夷の青・奥田元宋の赤 -色で読み解く日本画-」広尾(恵比寿)」・山種美術館 開催中~2019/12/22(日)  

www.yamatane-museum.jp※ 山種美術館広尾開館10周年記念の特別展。最近、全然、こちらに行けていないので、この展覧会は是非、行きたいところです。

 

☆彡「大浮世絵展 ― 歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演 」両国・江戸東京博物館 2019/11/19(火)~2020/1/19(日) 

dai-ukiyoe.jp※人気の高い絵師5人の作品を集めた展覧会。こちらでは11/30に次のイベントもあります。

www.1101.comということで、こちらのイベントのチケットを購入しました!

 

さて、現在開催中の展覧会は、こちら。

・「美人画の時代 -春信から歌麿、そして清方へ-」町田・町田市立国際版画美術館 開催中~11/24(日) 

hanga-museum.jp※ こちらは来週行ってこようかと。 

 

・「おかえり「美しき明治」」府中・府中市美術館 開催中~12/1(日) 

www.city.fuchu.tokyo.jp※ 現在は後期展示です。

 

・「東洋文庫の北斎展」駒込(千石)・東洋文庫ミュージアム 開催中~2020/1/13(月・祝) 

www.toyo-bunko.or.jp※ 東洋文庫のコレクション展です。

 

4. その他

・「正倉院の世界 - 皇室がまもり伝えた美」上野・東京国立博物館・平成館 開催中~11/24(日) 

artexhibition.jp※ 11/1(金)、16:00過ぎ、上野の駅のチケット売り場の表示では70分待ち。この日はナイトミュージアムでしたが、すごい混雑のようです。朝いちで行く方が良いのかも。前期展示は本日11/4まで。11/6(水)から後期展示です。

 

5. さいごに

この他にも、六本木・森アーツセンターのバスキア展は今月終了(11/17(日))。練馬区立美術館のエドワード・ゴーリーも今月終了(11/24(日))。見たい展覧会は数多くあります。全部は見に行けないので、一つでも多く、見に行ければなぁと思います。

 

では、リンクです。

先月見た美術展。

www.yorocon46.com

現在、京都に巡回中

www.yorocon46.com

www.yorocon46.com

 年間通じての展覧会情報はこちら。

www.yorocon46.com 

以上、ここまで、お読みいただき、ありがとうございます。

そして今月は私の所属している書道の会の展示もあります。銀座シックスの向かい、かねまつホールで11/14(木)~11/17(日) 伯翠会書展に、昨年に引き続きひとつ出展しました。

銀座かねまつホール|銀座駅から徒歩3分の多目的ホール

また、機会があれば、ご紹介したいと思います。

 

ということで、また来月に。ではでは

 

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【展覧会】「岸田劉生展」@東京ステーションギャラリー(2019/10/18):慈しむべきものを描く

こんばんは。

 

  9月後半からラグビーワールドカップが忙しく(^^;)、なかなか展覧会に行けていませんでしたが、昨日(10/18)、久しぶりに行ってきましたのでご報告です。

 

没後90年記念 岸田劉生展」

 

「この世の宝なるものを目指し」

東京ステーションギャラリーで本日10/20(日)まで開催です。

岸田劉生。教科書にも載っていた「麗子」の肖像画はあまりにも有名。(私の頃の教科書ですが。今はどうでしょう?)

日本美術史の中でも強烈な個性を放つ画家。ここまでの作品をまとめて見るのは今回初めてです。簡単ではありますが、少しご紹介を。相変わらず、まとまりのない内容ですが、しばし、お付き合いください。

それでは、さっそく、展覧会場へ!

 

※ 以下の記述は展覧会のパンフレット、作品説明、図録、そのほかWeb上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真は図録、パンフレットを撮りました。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1) 展覧会:「岸田劉生展」

www.ejrcf.or.jp

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岸田劉生

1891年(明治24)6月23日、東京銀座生まれ。父は実業家の岸田吟香。

1905年(明治38)、劉生15歳のときに父・母を続けて亡くし、キリスト教に傾倒。牧師を目指しますが、画家になるように促され黒田清輝に師事します。1908年(明治41)、劉生18歳のときでした。

1911年(明治44)、雑誌「白樺」からゴッホ、ゴーギャンに衝撃を受けます。その年10月の白樺主催の第2回泰西版画展では陶芸家であり画家のバーナード・リーチと出会い、また武者小路実篤ら、白樺周辺の人物とのつながりが強まります。この頃を劉生曰く「第二の誕生」。ゴッホ、ゴーギャンのほかマチス、セザンヌ等からも影響を受けた時期でした。

その後、劉生は北方ルネッサンスや中世絵画、東洋美術等にも影響を受け、画風も写実的な作品から日本画、技法も油絵から水彩画などと、次々に変転していきます。

自画像、肖像画、家の周りの風景、妻、麗子が生まれてからは麗子をはじめとした子どもの肖像等、その時々で対象は変わりつつも同じモチーフを何度も描き続けました。

1929年(昭和4)秋、松方コレクションで有名な松方幸次郎の弟・松方三郎の斡旋で初めての海外・満州に渡ります。帰国後、同行していた画商・田島一郎の故郷・山口県徳山を訪問しますが、心臓の痛みを訴え、その後、尿毒症を併発し、滞在中の12月20日、38年という短い生涯を終えています。

生涯その絵に情熱を傾け、慈しむべきものを描き続けた劉生。そんな劉生の作品が一堂に会した展覧会です。 f:id:YoroCon:20191019190235j:image

(1917年11月。岸田家写真。左から劉生本人、娘・麗子、妻・蓁(しげる)

 劉生の絵にたびたび登場します)

 

(2) 会場:東京ステーションギャラリー(東京駅・丸の内北口)

www.ejrcf.or.jpf:id:YoroCon:20191019190315j:image

東京駅前・KITTE(日本郵政)のビル。18:00前。まだ煌煌と光る蛍光灯がシャンパンの泡に光が反射してキラキラ光っているようで、なんだか綺麗で印象的でした。でも、まだみなさん仕事中ということですよね(^^;)

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(3) 会期・開館時間・展示替等

2019/8/31(土)~2019/10/20(日) ※ 本日、最終日です。

・休みは月曜です。

・開館時間は10:00~18:00。入館は30分前まで。

・金曜はナイトミュージアム!20:00まで開館です。

   近くで会社の研修があったので、帰りにナイトミュージアムで寄ってきました。

 

(4) 料金

・一般1,100円、大学生・高校生900円(中学生以下無料)

・東京駅でもらえる東京駅周辺美術館MAPを見せると100円OFFになります。

 

(5) 訪問時間と混雑状況

・10/18(金)の18:00頃に訪問。ナイトミュージアムでしたが会期末ぎりぎりだったので結構、混んでいました。混んでいて見るのが大変というほどではありませんでしたが。最終日はどうでしょう。

・鑑賞時間は75分くらいでした。作品数が結構ありますので、それなりに時間はかかります。


(6) 美術館メモ

・展示の撮影NGでした。

・ミュージアムショップでは、カタログ:2,500円(税込)でした。今回はカタログ購入です。

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(7) 行くきっかけ(情報源等)

日経おとなのOFF1月号でも載っていました。前のメスキータ展でも告知がありました。JRの駅の看板、車内でも宣伝されていました。ので、展覧会自体は知っていました。岸田劉生の絵は東京国立近代美術館(竹橋)でも見ていたので、この展覧会を見に行くかは少し迷っていました。が、近くで会社の研修があって、帰りに寄れたので、「では行ってみるか」と思い、見に行きました。(少し消極的な理由ですね^^;)

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

岸田劉生の絵は個性的で、「好き」とも「嫌い」とも言えない、なんか不思議な感情を抱いていました。「麗子」の絵。写実といえば写実ですが、なにか「異様」(本音は少し不気味)な雰囲気も感じます。風景画も、図録の表紙の「道路と土手と塀(切通之写生)」など写実的で好きですが、土の盛り上がり方など、かなり誇張された箇所もあり、独特です。個々に見ると劉生の強烈な個性が際立つ絵たちですが、一堂に会し、時代を追って見て行くと、そこに劉生の心や体の変遷までもが見えてくるような気がします。岸田劉生の追い求めた芸術が感じられる展覧会だと思います。(私、少し岸田を「好き」になりました)

 

(パンフレット表面は麗子ちゃんです)f:id:YoroCon:20191019190246j:image

(パンフレット裏面)

 

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さて、いよいよですが、会場の中へ。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

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こちらの展覧会では、岸田劉生の作風に応じて年代を区切り、その変遷を追って作品が展示されています。

 

展示構成

   今回は最初に展示の構成について記述し、続けて気になる作品をテーマ別でまとめてご紹介します。

まずは展示構成。次のとおりです。

 

・第一章「第二の誕生」まで:1907~1913

  初期の頃の水彩画などから雑誌「白樺」でゴッホ、ゴーギャンに影響を受けた「第二の誕生」までの作品です。

 

・第二章「近代的傾向・・・離れ」から「クラシックの感化」まで:1913~1915

  岸田が影響を受けた「ゴッホの眼・マチスの頭」ではなく岸田本人の眼・頭で描くことを模索した時代の作品です。人の顔をみては肖像画のモデルをさせていたようで「劉生の首狩り」なんて言われていたようです。この頃「自分の最っとも尊敬する人物の一人」とした武者小路実篤の肖像も描いています。

 

・第三章「実在の神秘」を越えて:1915~1918

  デューラーやファン・エイク等の北方ルネッサンスにも影響を受けた時代。風景画に新しい道を見出します。1913年、代々木に転居。周辺の風景を描きますが、1916年に肺病を患い戸外で写生ができなくなります。病気になってからは静物画を描きます。

 

・第四章「東洋の美」への目覚め:1919~1921

  この頃は日本画に、そして東洋の美の伝統に目覚めます。「内なる美」を素早く描くため、水彩や素描にも目覚めます。

 

・第五章「卑近美」と「写実の欠除」を巡って:1922~1926

  初期肉筆浮世絵や歌舞伎に傾注していた頃。関東大震災で居を京都に移し、古美術蒐集などを行っていた時期の作品です。

 

・第六章「新しい余の道」へ:1926~1929

  1924年11月から京都の茶屋遊びで放蕩をしていたらしく、乱れた生活から再起を目指した時期の作品です。そんな頃があったのですね。満州に訪れ、新しい創作への意欲に満ち溢れていたのですが・・・

 

  では、気になる作品です。

「風景画」

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「雨」1907年9月17日 水彩、鉛筆・紙

最初期の頃の作品。宇都宮の教会から見た風景。絵の中の洋館は「三光館写真店」とのこと。

 

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「銀座と数寄屋橋畔」1910-1911年頃 油彩・板

銀座の街に赤い日傘が印象的な明るい作品です。少し印象派的でしょうか。

 

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「築地居留地風景」1912年12月23日 油彩・麻布

「第二の誕生」の頃。ゴーギャンの影響を受けているかなぁと思いました。実際の絵の黄色はもっと明るく鮮やかです。

 

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「代々木附近(代々木附近の赤土風景)」1915年10月15日 油彩・麻布

劉生は変わりゆく代々木の町の風景を何度も描いています。この絵に続くのが・・・

 

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「道路と土手と塀(切通之写生)」1915年11月5日 油彩・麻布

重要文化財の絵です。先程の絵の電信柱がこの絵の下の方に2本の「影」として描かれています。写実的ではありますが、坂道の上部が塀より高く描かれているところが岸田のデフォルメした世界で坂の盛り上がりが更なる立体感を生んでいます。

(なお、この写真は2019年5月に訪問した東京国立近代美術館の常設展示(撮影OK)を撮影しています。本展での撮影はNGです)

 

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 「満州総裁邸の庭」1929年11月 油彩・麻布

暗く映っていますが、空の青、紅葉の赤など、色鮮やかな絵です。奥の海はすこし深めの青で描かれています。今後の制作への高揚感を感じさせる爽やかな一枚でした。この後、日本に戻って間もなく、その生涯の幕を閉じることになってしまいます。さぞかし残念だったことでしょう。

 

「静物画」

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「壺の上に林檎が載って在る」1916年11月3日 油彩・板

肺病を患い戸外の写生に行けなくなった後の作品。壺はバーナード・リーチ作。大胆な構図です。林檎の絵も何枚も描いています。

 

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「林檎三個」1917年2月 油彩・麻布

この三つのリンゴに劉生、蓁、麗子の三人を託して描いているよう。病気を患い、お金もなかった劉生。少し不安定そうな林檎に自分たちの姿を重ねたのかもしれません。この年、療養のため神奈川県藤沢の鵠沼海岸に転居します。

 

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「竹籠含春」1923年4月9日 油彩・麻布

竹籠の編み目まで細かく忠実に描かれた写実の作品です。「宋元風の花籠を頭におき油画の写実でかっちりとした美を」目標とした作品とのこと(図録説明より)。ここでも東洋の美が頭にあります。

 

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「椿の図」1924年頃 絹本着彩

東洋の美に目覚め、追い求めていた頃の作品。椿も多く描かれています。岸田劉生が日本画も描いていたことは今回、初めて知りました。

 

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「冬瓜茄子の図」1926年夏 絹本着彩

劉生は緑の皮の表面に白い粉を吹く冬瓜を好んで何枚も描いています。これは日本画です。茄子との対比、粉を吹いた様子をデフォルメした色遣い等が目を引く作品です。

 

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「冬瓜葡萄図」1927年10月 油彩・麻布

こちらは油彩で描かれたものです。写実的です。絵の手法でも東洋と油絵とを行き来しています。

 

「自画像」

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「自画像」1912年3月14日 油彩・麻布

「第二の誕生」でゴッホの影響が強かった頃の自画像です。今回の展覧会でも多数の自画像が展示されています。

 

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「自画像」1914年2月13日 油彩・麻布

ゴッホやマチスなどの影響を抜け出し、自分自身の絵画を模索している頃の作品。光の捉え方など、より写実的になっているかと思います。

 

  そして、最初に掲載した美術館の液晶パネル(パンフレット裏)に映る「自画像」は1921年4月27日 油彩・麻布の作品で、東洋の美に目覚めた後の作品です。

 

「妻・蓁」

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「黒き土の上に立てる女」1914年7月25日 油彩・麻布

妻・蓁をモデルに描いた作品は2012年、51年ぶりにその所在が確認されたとのこと。健康的で大地と繋がっているような女性の姿が、少しルノワールに通じるかなぁと思いました。今回の展覧会ではとても目を引く作品でした。

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「画家の妻」1915年1月10日 油彩・麻布

こちらは同じく妻・蓁をモデルにしながら「クラシックの感化」を感じさせる作品。北方ルネッサンスに惹かれていたとか。背景の装飾や文字、R(=劉生)のエンブレム等、中世絵画を思わせます。

 

「娘・麗子」

岸田最愛の娘・麗子。本当に慈しんでいたようです。それは展覧会の説明に書かれている麗子さんの発言からも感じ取れます。

 

パンフレットの絵は「麗子肖像(麗子五歳之像)」1918年10月8日。この絵に自信を深めた岸田は「内なる美」を求めて東洋の美へと傾倒していきます。

 

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「麗子坐像」1919年8月23日 油彩・麻布

麗子が着ている着物は縮緬絞りまで実に細かく写実的に描かれています。ただ、麗子の表情が無表情のため少し「怖さ」も感じますが。

 

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 「麗子八歳洋装之図」1921年9月27日 油彩・麻布

こちらの麗子ちゃんは少し笑みを浮かべています。やっぱり微笑む顔はかわいいですよね。「麗子」を書き始めたころは顔に表情がないのですが、この頃の絵からは麗子ちゃんが微笑んでいてかわいらしさを感じます。麗子さんご本人の弁では、絵を描くと集中して長時間モデルをさせられるので大変だったとのこと。その結果の名作誕生ですね。

  

(3) さいごに

  この他にも肖像画や日本画等、いろいろな作品があります。かなり画風が変転しているのも分かります。油絵から日本画と振り幅も大きいです。そんな中、思ったのは、まず岸田は自画像、愛娘・麗子、最愛の妻・蓁と同じモチーフを何度も描いているということ。風景画も代々木の自宅周辺、静物画も林檎に冬瓜と同じモチーフを描きます。それが岸田の芸術へのこだわりであり、身近なのも、愛するものとのかかわり方だったのかもしれません。そして、写実的でありながら、どこかデフォルメされている作品たち。麗子像や肖像画等、少し顔や頭が大きく描かれているように思います。また、代々木の坂など、写実的な表現ですが、どこか誇張が含まれている。それが岸田の眼が捉えたものに、岸田の想いが込められて形作られた造形だったのかもしれません。

癇癪持ちで人付き合いも決して上手くはなかった岸田。絵を描き始めると周囲のことも忘れ、時間も忘れて没頭する岸田。自らの愛すべきものを自ら愛する絵画に託して表現し続けた岸田劉生の芸術と人生を回顧する展覧会だったと思います。

 

なお、本展は11/2~12/22、岸田の最期の地・山口の山口県立美術館に巡回します。

 

  それでは、最後にリンクです。

東京ステーションギャラリーさんの過去の展覧会。

www.yorocon46.com

www.yorocon46.com

こちらは10月の展覧会です。

www.yorocon46.com

  チョッと寒さも感じるようになってきましたが、今日はいよいよ日本が初めて挑むラグビーワールドカップ準々決勝。こちらも盛り上がってきます。

 

ということで、以上です。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

ではでは。

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【展覧会】2019年10月 東京の展覧会通信(2019/10/5)

こんばんは。久々のブログです。

(最近、仕事とラグビー観戦?!が忙しかったので、間が空いちゃいました^^;)

 

  ラグビーワールドカップ。盛り上がっていますねぇ。今回も日本代表はジャイアントキリングの大金星をあげました。

  スポーツの秋、ラグビーについては、また別の記事に書きたいと思いますが、芸術の秋、展覧会の方も10月は華やかです。ラグビー同様、こちらも見逃せません。個人的には印象派の展覧会が特に注目です。

 

  ということで、今月も自分のための展覧会備忘録をまとめていきたいと思います。とにかく、一貫性はありません。「今、気になるものを、ただ載せる」というコンセプトで書いてます。長い目で、お付き合いのいただけますと幸いです。

なお、今月も初出の展覧会は「☆彡」印を、見て来た展覧会は「(見た!)」を付けてます。(ただし今月は「(見た!)」はありません)

もし、気になる展覧会がございましたら、お早めに(^^)

 

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(今月も、"あの"美術館から一枚)

 

【目次】

 

1. 情報源

今回も次の情報を中心に書いていきます。ご参考まで。

・「日経 おとなのOFF」2019年1月号(+付録「2019 美術展100ハンドブック」)

・チラシミュージアム(iPhoneソフト):チケットのe-plusのスマホアプリ

チラシミュージアム~美術館・博物館の情報&クーポン|イープラス

・アートスケープ:大日本印刷さんのアート情報サイト。各地域の展覧会情報も検索できます。

展覧会スケジュール|美術館・アート情報 artscape

 

それでは、いよいよ本題です。

 

2. 西洋美術

まずは、印象派展。

「コートールド美術館展」上野・東京都美術館 開催中~12/15(日) 

courtauld.jp※ さっそく人気ですよね。紹介されている方のブログなどを読まさせていただいて、早く行きたい展覧会です。会期末になるとかなり混みそうなので要注意。展示数は60点程と多くなさそうですが、どれも傑作ぞろいのよう。楽しみです。

 

「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」横浜・横浜美術館 開催中~2020/1/13(月) 

artexhibition.jp※ こちらも早く見に行きたい。横浜はラグビーワールドカップでも、かなり盛り上がっていて、美術館の近くにファンゾーンもあります。

今回も当記事の写真は、パリで見に行ったときに撮影したものです。

 

☆彡「印象派からその先へ - 世界に誇る吉野石膏コレクション」東京(丸の内)・三菱一号館美術館 10/30(水)~20/20/1/20(日)  

mimt.jp※ こちらも印象派展です。吉野石膏さんが誇る印象派作品72点の展覧会。「やさしくなれます。」このフレーズ、好きです。絵から伝わってくるその雰囲気。ゆっくり楽しみたい展覧会です。(こちらも、年末に近づくとかなり混みそうですが)

 

☆彡「ゴッホ展」上野・上野の森美術館 10/30(水)~20/20/1/20(日)  

go-go-gogh.jp※ 印象派ゴッホの展覧会です。40点のゴッホ作品に加え、セザンヌ、モネなどの作品も30点展示されるようで、ゴッホを中心とした印象派展として楽しみです。

 

つづいて名家のコレクション展です。

☆彡「ハプスブルク展 - 600年にわたる帝国コレクションの歴史」上野・国立西洋美術館 10/19(土)~2020/1/26(日) 

habsburg2019.jp※ 日本・オーストリア友好150周年記念の展覧会です。今年前半はクリムト中心の展覧会でしたが、今度はオーストリア帝国のコレクションを紹介する展覧会の開催です。

 

☆彡「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアム 10/12(土)~12/23(月)  

www.bunkamura.co.jp※ 世界で唯一、侯爵家が国名となった国・リヒテンシュタイン。オーストリアとスイスに挟まれた小国ながら、世界屈指の豊かさを誇るリヒテンシュタインのコレクションを紹介する展覧会です。(こちらは、既にチケットを買っているので、見に行く予定です)

 

今回は東京からちょっと離れた展覧会も。

☆彡「ピカソ展 - ゲルニカ「タピスリ」をめぐって」群馬県館林・群馬県立館林美術館 10/5(土)~12/8(日)  

www.gmat.pref.gunma.jp※ パブロ・ピカソのあまりにも有名な絵画「ゲルニカ」。そのゲルニカの原寸大に近いタピスリ(綴織、織物)が作成されていた、とは知りませんでした。一作目はアメリのロックフェラーが購入とのこと。2作目、3作目はフランス、日本にあるようです。「ゲルニカ」タピスリを中心にピカソの作品が展示されます。とても、キレイな美術館で一度行ったことがありますが、オルセー美術館にある「シロクマ」の作者、フランソワ・ポンポンの作品も展示され、"かわいい"サイズのシロクマも展示されています。

 

☆彡「パリ世紀末 ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」神奈川県横須賀・横須賀美術館 開催中~11/4(月・休)  

www.yokosuka-moa.jp※ Bunkamuraのミュシャ展は終了しましたが、こちらではミュシャが世に出るきっかけとなりミュシャの創作に強い影響を与えたサラ・ベルナールの展覧会が開催です。ミュシャの作品はもちろん、ミュシャがデザイン、ルネ・ラリック作の舞台用冠「ユリ」の展示などがあります。

 

それから・・・

☆彡「ラウル・デュフィ展 - 絵画とテキスタイル・デザイン」汐留(新橋)・パナソニック汐留美術館 開催中~12/15(日)  

panasonic.co.jp※ ラウル・デュフィの絵画とテキスタイル(=織物・布地デザイン)を中心とした展覧会です。パナソニック汐留美術館さんのテーマにそった展示は興味深いものが多いので、今回もデュフィにどのようなスポットライトを当てて展示されるか、楽しみです。

 

☆彡「フランス絵画の精華 - 大様式の形成と変容」八王子・東京富士美術館 開催中~2020/1/19(日)  

www.fujibi.or.jp※ こちらの美術館さんはまだ訪問したことがないのですが、エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランの作品が好きなので、見に行きたいと思います。西洋絵画コレクションの常設展もあります。

 

3. 日本美術

 

・「没後90年記念 岸田劉生展」東京・東京ステーションギャラリー美術館 開催中~10/20(日) 

www.ejrcf.or.jp※ JR中央線で通勤をしていると社内のモニターに流れたり、中吊り広告で見かけたりとよく目にします^^;金曜日のナイトミュージアムで見に行こうかと思っています。

 

☆彡「おかえり「美しき明治」」府中・府中市美術館 開催中~12/1(日) 

www.city.fuchu.tokyo.jp※ ラグビーの街「府中」もワールドカップで盛り上がっていますが、こちらの展覧会もみてみたいところです。明治の来日した画家、その画家たちに触発された日本の若き画家達の作品です。10/20(日)までが前期、10/22(火)から12/1(日)までが後期で入れ替えがあります。

 

・「大観・春草・玉堂・龍子 - 日本画のパイオニア」広尾・山種美術館 開催中~10/20(日) 

www.yamatane-museum.jp※ 最近、山種美術館さんに見に行っていないので、行きたいですね。

 

ここからは、浮世絵を。

☆彡「東洋文庫の北斎展」駒込(千石)・東洋文庫ミュージアム 開催中~2020/1/13(月・祝) 

www.toyo-bunko.or.jp※ 本の博物館・東洋文庫ミュージアムの北斎展。東洋文庫が所有する北斎作品を網羅的に展示とのこと。いままでにない北斎に出会えるかも。

 

☆彡「歌川国芳 - 父の画業と娘たち」原宿・太田記念美術館 開催中~10/27(日) 

www.ukiyoe-ota-muse.jp※ 近年、大胆でスペクタクルな作品が人気の国芳。その国芳の娘たちも浮世絵師だった。浮世絵といえば太田記念美術館さん。秋の歌川派フェスタの第二弾。11月からは国芳の弟子、芳年です。

 

☆彡「美人画の時代 -春信から歌麿、そして清方へ-」町田・町田市立国際版画美術館 開催中~11/24(日) 

hanga-museum.jp※ 版画専門の美術館、町田市立国際版画美術館。江戸の美人画の浮世絵から、鏑木清方までたどっての展示は是非、見に行きたいです。あわせて西洋の美人画を集めたミニ企画展があるのも、おもしろそうです。

 

4. その他

☆彡「正倉院の世界 - 皇室がまもり伝えた美」上野・東京国立博物館・平成館 10/14(月・祝)~11/24(日) 

artexhibition.jp※ 正倉院展はいつも長蛇の列ができる印象ですが、やっぱり見に行きたい。実際は、見に行けてないのですが。前期が11/4(月・祝)まで、後期は11/6(水)からで展示替えがあります。

 

☆彡「文化財よ永遠に」溜池山王(六本木一丁目)・泉屋博古館(分館) 開催中~10/27(日) 

www.sen-oku.or.jp※ 修復された文化財を展示し、その最前線を伝える展覧会。東京国立博物館、九州国立博物館(福岡・太宰府)、泉屋博古館(京都)、そして泉屋博古館(分館)の4か所で同時開催中です。

 

 

5. さいごに

10月は本当に西洋・日本を問わず、いろいろな展覧会がスタートしていきます。印象派、正倉院等、かなり注目度の高い展覧会もあります。できるだけ早めに見に行きたいと思います。(会期末は長蛇の列になるので^^;)

どれだけ、見られるかなぁ。

 

www.yorocon46.com※ 年間通じての展覧会情報はこちら。

 

以上、ここまで、お読みいただき、ありがとうございます。

そして今日は、ラグビーワールドカップ日本vsサモア!(美術展と関係ないですが^^;)

これから、いつもの吉祥寺のHUBに応援しに行ってきます。さぁ、出かけないと。

 

ということで、また来月に。ではでは

 

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【展覧会】「ジュリアン・オピー」@初台・東京オペラシティ アートギャラリー(2019/8/11):究極に単純化された世界とは

こんばんは。

  

またまた、夏の展覧会の鑑賞報告ですが、またまた、9月の秋分の日で終わってしまう展覧会です。

 

「ジュリアン・オピー展」

 

東京オペラシティ アートギャラリー。初めて行きました。ジュリアン・オピー、初めて知りました。初物尽くしで興味津々、行ってきました。

イギリス現代アートの巨匠がくりだす究極に省略された世界。

 

今回も、まとまりのない内容ですが、どのような展覧会か、ご紹介してみたいと思います。しばし、お付き合いを。それでは、さっそく、展覧会へ!

 

※ 以下の記述はジュリアン・オピー展のパンフレット、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真は会場で撮影可能な作品を撮りました。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1) 展覧会:ジュリアン・オピー展

www.operacity.jp

ジュリアン・オピー(Julian Opie)

  1958年イギリス・ロンドン生まれでオックスフォード育ち。現在61歳みたいです。(誕生日は確認できず)

  作品は点と線、最小限に省略化された表現で人物、風景を描き出し、その個性を描き分けます。東京オリンピック時に開発されたピクトグラム(絵文字)を髣髴(ほうふつ)とさせる作品は、静止画もあり、立体もあり、動画もありと多岐にわたります。

  また、著名な日本の浮世絵のコレクターでもあります。そのためか、太い輪郭線は浮世絵からの影響も感じさせます。

  1980年代のイギリスをはじめとするヨーロッパのアートシーンで頭角を表し、その作品は世界の主要な美術館へと収蔵されていったジュリアン・オピー。日本では2008年水戸芸術館現代美術ギャラリー以来11年ぶりの大型個展です。

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(2) 会場:東京オペラシティー アートギャラリー(初台)

www.operacity.jp

※ 京王新線・初台駅から5分。初台駅と東京オペラシティは直結しています。なお、この日は、損保ジャパンビルの東郷青児記念美術館に「レオ・レオーニ展」を見に行っていましたので、ここから都庁の横を抜けて歩いて行きました。30分くらいですかね。とても暑かったので、美術館の涼しさがとても気持ち良かったです。帰りは初台から帰りました。
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ビルの中には、こんなオブジェもあります。ビルの中に一人ポツンと立っているようで、少し不気味でもありましたが・・・(^^;)

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アントニー・ゴームリー「トゥー・タイムズII(Two Times II)」(1995年)

 

(3) 会期・開館時間・展示替等

2019/7/10(水)~2019/9/23(月・祝)

・月曜休館です。(9/23は祝日なので開館です)

・開館時間は11:00~19:00。入館は30分前まで。

・収蔵品展(池田良二の仕事、末松由華利展)同時開催。

 

(4) 料金

・大人1,200円、大・高生800円、中学生以下無料

・同時開催中の展示も併せて見られます。

 

(5) 訪問時間と混雑状況

8/11(日) 17:30頃、鑑賞時間は約50分。

・比較的広い会場で、ゆっくり見られます。


(6) 美術館メモ

・ミュージアムショップがあります。

・図録もあります。(確か5,000円以上とけっこう高額でした)

 

(7) 行くきっかけ(情報源等)

「ジュリアン・オピー展」 | 青い日記帳

で紹介されているのを見て、初めて知りました。面白そうだと思って見に行きました。

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

ジュリアン・オピーの作品は、まさに点と線、そして平面で作られた省略の世界です。省略された世界は、記号化され、それそのものが強く意味を発しているかのようです。そして、その中に入り込むと、なんだか現実よりも現実的な世界に入り込んだかのような錯覚をおぼえます。それは、私たちが世界を省略化することで抽象化してとらえているからなのかもしれません。そんな認識に対する問いかけなのかもしれません。

本展は壁いっぱいの大型作品から等身大の作品といろいろなサイズの作品があります。それも、われわれが認識している世界を相対化して、とらえなおそうとする試みの一つなのでしょう。

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それでは、 省略化して再構築された世界に入ってみましょう。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

展覧会場に入ると大型作品、等身大の作品、映像作品と人を対象とした作品が並びます。会場内はこんな感じです

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点と線と平面で描かれた壁の人々。究極に省略化された中で、それぞれの人の「個性」が際立ちます。

 

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こちらは床から天井まである大型作品。590cm × 671cm

まるで、ガリバーの住む都市に来たかのようです。

 

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映像作品。それぞれの人の絵が走り去って流れていきます。さながら都会の朝の通勤ラッシュの勢いでしょうか。

 

続けて、次の部屋では・・・

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牧場にいるような動物たちも、水辺の風景も単純化されて存在します。

 

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人の背の高さぐらいのビルのオブジェ。ビルのガラスにモザイクのように映りこむビルが、よりリアリティを感じさせます。今度は私たちがガリバーになったかのようです。

 

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二人の女性。それぞれにその女性の個性が強く感じられます。あたかもそこに本当の人が立っているかのような存在感。

 

窓側の通路で展示されている魚が動く作品。錦鯉の池をのぞき込んでいるかのような気になります。

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そして、その動く姿が窓に映ると、もう外の空間を魚たちが自由に泳いでいるようです。(これを意図したかは、分かりませんが、そう感じました)
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(3) さいごに

作品数は、それほど多くはないのですが、普段感じることのできない、少し不思議な感覚をおぼえる展覧会です。現代美術の挑戦する新しい世界のとらえ方を感じてみるのはいかがでしょう。私たちの認識のスタート地点に立てるかもしれません。(個人的な感覚の話しですが・・・)

 

それでは、最後にリンクです。

 

9月の展覧会情報。

www.yorocon46.com

同じく9/23までの開催。

www.yorocon46.com

www.yorocon46.com

www.yorocon46.com

ということで、今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

ショートレポートのような内容ですが、今回の報告は以上です。

 

ではでは。

 

【展覧会】「モダン・ウーマン展」@上野・国立西洋美術館(2019/8/12):フィンランド女性芸術家たちの共演

こんばんは。

 

9月最初の三連休が終わります。

9月に終わる展覧会も多くあります。

こちらの展覧会は西洋美さんで「松方コレクション」と同時開催、秋分の日の3連休まで。松方コレクションまたは常設展のチケットで鑑賞可能です。

 

日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念

「モダン・ウーマン - フィンランド美術を彩った女性芸術家たち

 

日本ではあまり見ることのないフィンランド女性芸術家の作品。私も今回初めてこれだけの作品を鑑賞しました。

フィンランド近代芸術において、これだけの女性芸術家が活躍していたということは驚きでした。個性あふれる作品たちを是非ご堪能ください。

 

今回も、まとまりのない内容ですが、しばしお付き合いを。それでは美術展へ。

 

※ 以下の記述はモダン・ウーマン展の作品説明、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真などは撮影可能な展示を撮っています。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1)展覧会:日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念 モダン・ウーマン - フィンランド美術を彩った女性芸術家たち

www.nmwa.go.jp

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北欧の国・フィンランド

スカンジナビア半島の付け根にある人口約550万人、面積は意外なことに日本より少し小さい国です。首都はヘルシンキ。

西にスウェーデン、東にロシアという地理的な事情から長らくスウェーデン、そしてロシアの支配を受けてきました。19世紀後半から20世紀初頭、ロシアからの独立運動がおこり、1917年ロシア十月革命を受けて独立を宣言します。

(この頃は音楽で言うと「フィンランディア」(1899年)が有名なシベリウスも活躍したころです)

国の独立の動きと歩調を併せ女性の社会的立場・役割にも変革がおき、19世紀半ばに誕生したフィンランド初の美術学校は当時では珍しい男女共学だったとのこと。このような時代背景の中、活躍した女性芸術家の作品が集う展覧会です。

 

(2) 会場:国立西洋美術館(上野)

www.nmwa.go.jp

 JR上野駅 公園口から東京文化会館の右を抜けて直ぐ。2・3分くらいのところです。

本展は新館エリアに展示されています。

 

(3) 会期・開館時間・展示替等

2019/6/18(火)~9/23(月・祝)

・月曜休館です。ただし9月23日の祝日は開館です。

・開館時間は9:30~17:30です。金・土曜日はナイトミュージアムで9:30~21:00です。

 

(4) 料金

大人500円、大学生250円、高校生以下、65歳以上は無料

・常設展示(本展も含まれます)は

   毎月第2、第4土曜日+ナイトミュージアム(17:00以降)は無料。

   加えて、5/18(国際博物館の日)、11/3(文化の日)も無料。

   今回、初めて知りました。これから、もっと気楽に見に行けそうです。(もともと、かなりのコスパですが)

 

(5) 訪問時間と混雑状況

8/12(月・祝) 12:30頃 鑑賞時間は約30分でした。

・松方コレクションの鑑賞時に続けて行きました。

・次の予定があったので、本当にさっと見てしまいましたが、他の常設展とあわせてゆっくり見たい展示です。

・人はいますが、混んではいません。ゆっくり見られます。


(6) 美術館メモ

・本展含め常設展示は写真撮影はOKです。(フェルメール帰属?作品など一部NGあり)

・カタログの通販があります。

https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/pdf/2019modernwoman_catalog.pdf


(7) 行くきっかけ(情報源等)

artscapeさんのページで情報は得ていました。

artscape.jp松方コレクションを見に行きましたので、そのまま続けて鑑賞する予定でいました。

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

19世紀後半から20世紀前半にかけて、これだけの女性芸術家がフィンランドで活躍していたことに驚いたとともに、フィンランドの先進性を感じました。作品は明るく印象派を思わせるような作品から人の内面を深く描き出したと感じさせる作品、人物画・風景画・彫刻と様々な分野にわたっています。

フィンランドで有名な作家といえば「ムーミン」の作者トーベ・ヤンソンがいます。1914年生まれの彼女も、このような女性芸術家が活躍できる環境の中、影響を受けつつ創作をしていったのかもしれませんね。

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(パンフレット表面)
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 (パンフレット裏面)

 

それでは、いよいよ会場内へ。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

会場は西洋美・新館エリアです。

常設展|国立西洋美術館

からも確認できます。

 

本展では7人の芸術家の作品が紹介されており、それぞれの芸術家別に作品展示がなされています。

以下、気になる作品をご紹介。

 

・マリア・ヴィーク(1853-1928)

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ヘルシンキ生まれ。1875年パリに留学し、1880年からサロンにも出品。自然主義の影響を受け、戸外での制作も早くから実践。1890年代までは肖像画家としても人気に。パリ万博では銅メダル受賞。その後、内面重視の象徴主義的画風に移行。


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「芸術家の姉ヒルダ・ヴィークの肖像」(1880年)


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「教会にて」1884年

この頃、ヴィークは後述のシャルフベックと当時の北欧芸術家に人気の高かったブルターニュ地方を訪問。そこで描いた一枚。

二枚の肖像画ともに、かなり好きな作品です。


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「ボートをこぐ女性、スケッチ」(1892年)

パリ留学後、フィンランドに拠点を移しての戸外作成。女性は姉ヒルダか。

明るく、すばやいタッチ。こちらに微笑みかける女性は生き生きした印象です。

ボートにのる女性つながりでは少しモネの絵を思い浮かべました。

 

・ヘレン・シャルフベック(1862-1946)

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フィンランドを代表するもっとも有名な画家のひとり。1873年からフィンランド芸術協会の美術学校で学び、1879年に同協会の展覧会でデビュー。1880年パリ留学。1890年代初頭にかけてはヨーロッパを旅し、レアリズム(写実主義)、自然主義、象徴主義等、フランス同時代美術から学び、パリ万博で銅メダル受賞。

1902年、健康問題からヘルシンキから北に60キロ、ヒュヴィンカーという町に移り住み、芸術も大きく展開。1925年には海辺の町タンミサーリに移住し、その生涯で1000点以上を残す。

 

 

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「少女の頭部」1886年


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「母と子」1886年

やさしく我が子を慈しむ母親の顔と子どもの何気ない顔の向き、手の動きが印象的な作品です。

 

なお、パンフレット表面の絵はシャルフベック1926年の作品「占い師(黄色いドレスの女性)」

こちらは、かなり画風が異なっています。単純化された線や構図の中で何か力強さも感じさせる。近代化・民主化が進んだ中で登場する「新しい女性」像でシャルフベックを魅了したテーマの一つとのことです。

 

・上:シーグリッド・アフ・フォルセルス(1860-1935)/下:ヒルダ・フルディーン(1877-1958)

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フィンランドを代表する彫刻家。二人ともパリでオーギュスト・ロダンに師事。男性が支配的な彫刻の世界で女性が活躍する場を切り拓いた先駆者。


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シーグリッド・アフ・フォルセルス「青春」1880年代

(ケースに光が反射して、よくみえませんね^^;)

 

・シーグリッド・ショーマン(1877-1979)

 

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当時ロシアのウクライナ生まれ。1899年にフィンランド芸術協会の美術学校でシャルフベックらに師事。1901年デビュー。フィンランド国内では批評家としても活躍。

 

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上:「ヘルシンキ市立庭園」1943年

下:「トーロ地区」(制作年不明)

 

・エレン・テスレフ(1869-1954)

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20世紀初頭のフィンランドに色彩の革新をもたらした画家。ヘルシンキ生まれ。

1885年からフィンランド芸術協会の美術学校で学び、1891年デビュー。パリの象徴主義に傾倒し、灰色・褐色等の淡い色調で私的な風景画、内省的人物画を制作。1894年のイタリア旅行後は頻繁にイタリアを訪問。特にフィレンツェに長期滞在し制作。1904-06年にカンディンスキーの作品に出会ってからは画風も大胆な筆致に変化。新たな画風に注目が集まることに。特定の運動・グループに属さない自由な活動と自らの芸術の刷新で高い評価を獲得。

 

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「自画像」1916年


f:id:YoroCon:20190916154607j:image「装飾的風景」1910年

 

暗い色調の人物に緑と黄緑のコントラストで明るく表現された樹木。

表現しようとするものから選び取られる色彩の大きな違い。人物の内面性、自然の力強い生命力、それぞれを巧みに表現していると感じます。

 

・エルガ・セーセマン(1922-2007) 

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ロシア国境近くの都市ヴィープリ(現ロシア・ヴィーボルク)生まれ。ドイツ系中産階級の家庭に生まれ1940年代初頭にフィンランド美術アカデミー(かつてのフィンランド芸術協会の美術学校)と自由芸術学校に学ぶ。1943年デビュー。シュールレアリスム、形而上絵画、ドイツ表現主義、ムンク等の影響を受ける。戦後世代の感情を大胆・率直に描いた作品は近年、注目を集めている。


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 「自画像」1946年

 

  目の描き方、筆致など、どことなくムンクの影響を感じます。

  

  奥には版画素描展示室があり、これまで紹介された芸術家の作品が展示されています。

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エレン・テスマン「フィンランドの春」1942年


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ヘレン・シャルフベック「シルクの靴」1938年

 

  展覧会は以上です。フィンランド女性芸術家の作品、いかがでしたでしょうか?

いろいろな個性が花開いたフィンランドの芸術に惹かれる展覧会でした。

 

(3) 最後に

展示された作品は以下の美術館から来ています。

「フィンランド国立アテネウム美術館」

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白亜の建物が優美ですよね。

まだ、北欧は行ったことがないです。フィンランド、是非とも一度行ってみたい。この美術館も絶対行ってみたいです。

それぞれの国にそれぞれの芸術。老後はまだ行ったことのない国の美術館を廻る。そんな旅をしたいものです。

(【今週のお題】どんな老後を過ごしたい?

  にかけて書いてみましたが、そんなのまだまだ先の話ですねぇ。

  というか老後というよりは、むしろ今から行きたいですね)

 

  本展は85点。ほかにも秀逸な作品がまだまだありますので、是非、ご鑑賞ください。

 

  それでは、最後にリンクです。

 

西洋美で同時開催。松方コレクション展

www.yorocon46.com

こちらも9/23まで。汐留のマイセン。

www.yorocon46.com

後期展示開催中・藝大美術館の円山応挙。9月29日まで。

www.yorocon46.com

同じく9月29日まで。Bunkamura、ミュシャ展です。

www.yorocon46.com

以上、ここまで、お読みいただき、ありがとうございました!

 

今週末からはいよいよラグビーワールドカップ。こちらも熱く応援していきます。

(展覧会とは全然関係ないですが・・・

きっとこれからラグビーネタがちょこちょこ入ります。ご辛抱を^^;)

 

ではでは。
 

【展覧会】「マイセン 動物園展」@パナソニック汐留美術館(2019/9/3):マイセンの美しくもユニークな動物園

こんばんは。

  

  さて、展覧会の鑑賞報告です。今回はおよそ一週間前の火曜日(9/3)、会社を早上がりして都内をぶらぶらしながら見に行った展覧会です。

 

「マイセン 動物園展」

 

パナソニック汐留美術館で、秋分の日の3連休まで開催中の展覧会です。

ヨーロッパ随一の名窯・マイセンが生み出す動物たち。美しくも不思議なアニマル・ワールドに行ってみましょう。

 

今回も、まとまりのない内容ですが、どのような展覧会か、ご紹介してみたいと思います。しばし、お付き合いを。それでは、さっそく、展覧会へ!

 

※ 以下の記述はマイセン動物園展のパンフレット、作品説明、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真はパンフレット・撮影可能な作品を撮りました。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1) 展覧会:マイセン動物園展

panasonic.co.jp

 

マイセン

ドイツ・マイセン地方で作られる陶磁器。

17世紀に東インド株式会社による交易が景徳鎮や伊万里といった東洋の磁器をヨーロッパにもたらします。当時のヨーロッパでは純白で薄く硬質な磁器は作ることができず、これらの東洋磁器は「白い金」と呼ばれ、憧れの品として大変もてはやされます。

中でもドイツのアウグスト強王(1670-1733)は東洋磁器の屈指の蒐集者でした。強王は錬金術師のヨハン・フリードリッヒ・ベドガーを監禁し、白磁を作るように命じます。ベドガーは1709年に白磁の製法を解明、そして1710年、ヨーロッパ初の硬質磁器製作所「王立ザクセン製作所」が設立され、「マイセン」が誕生するのです。

また、動物のモチーフは何かを象徴するため、何かの装飾のため、動物そのものの愛らしさを表現するためと様々に扱われてきました。特にアール・ヌーヴォーはマイセンにも強く影響を与え、様々な作品が製作されています。

本展は、マイセンの中でも特に「動物」にテーマを絞ったユニークな展覧会です。

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(2) 会場:パナソニック汐留美術館(汐留・新橋)

panasonic.co.jp 

※私はいつも新橋駅の汐留口から美術館のあるパナソニック東京汐留ビルまで歩く(10分くらい)なのですが、今回は会社から散策のつもりで歩いて行きました。寄り道しながらですが、一時間弱というところでしょうか。たまには歩くのも良いですね(^^)

 

(3) 会期・開館時間・展示替等

2019/7/6(土)~2019/9/23(月・祝)

・終了まで、3連休が2回ありますので、お時間がありましたら、いかがでしょう。

・水曜休館です。

・開館時間は10:00~18:00。入館は30分前まで。

・展示替えはありません。

 

(4) 料金

・大人1,000円、65歳以上900円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料

美術館ホームページに100円引きのクーポンのページがあります。(プリントアウトするか、スマホの画面に表示してチケット購入時に受付の方に見せればOKです。今回も利用しました)

panasonic.co.jp 

(5) 訪問時間と混雑状況

9/3(火) 16:20過ぎ、鑑賞時間は約50分。

・人はいますが、混雑はしていません。ゆっくり見られます。


(6) 美術館メモ

・展示の多くは写真撮影OKです。ねこ以外の動物がモデルの作品は多くが撮影NGでした。(展覧会の構成の箇所でも説明します)

・展示会場の出口付近にルオーギャラリーがあり、現在は「ルオーとジャコメ~複製されるイメージ~」という展示です。ジャコメはルオーが複製画を依頼した刷師です。

・ミュージアムショップがあり、図録や絵ハガキなどのグッズもあります。

・入館料・ミュージアムショップともにカード利用可能です。

 

(7) 行くきっかけ(情報源等)

パナソニック汐留美術館で開催されたギュスターヴ・モロー展のときの次回予告を見て、行けたら行きたいなぁと思っていました。今回は近くでほぼ日のイベントもあったので、イベント前に寄ってきました。

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

ヨーロッパの磁器にまつわる展覧会は

2016年に三井記念美術館で開催された「アール・ヌーヴォーの装飾磁器展」

http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/past/160706.html

2017年から2018年にかけてサントリー美術館で開催された「フランス宮廷の磁器 セーヴル 創造の300年展」

https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_6/index.html

などを見に行ったり、そのほかの展覧会でも作品が出展されていると気にして見たりと、自分でも結構、好きなんだなぁと思うことがあります。そして今回はマイセン。

磁器のもつ豊かな表現力は彫刻などと同じ立体芸術の一分野をなしていると思います。絵画とも彫刻とも違う色鮮やかて艶やかな美しい世界、磁器。テーマ動物ということもあり、その美しさを楽しく味わうことのできる展覧会です。

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それでは、いよいよ"動物園"の中へ入ってみましょう。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

会場は4つの章に分かれています。

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会場入り口は、いきなりこんな感じ。タイトルの映像がゆっくり流れてます。

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第1章 神話と寓話の中の動物

ここでは、いろいろな寓意に満ちた作品が展示されています。

 

例えば、女性像「四大陸の寓意」(1820~1920年頃)

それぞれの大陸の雰囲気を醸し出す作品群です。
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<アジア>


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<アフリカ>


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<アメリカ>


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<ヨーロッパ>

こんなイメージですかね。

 

  次は「山羊に乗る仕立屋」(1820~1920年頃)

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ヤギの毛の質感や仕立て屋の服、ヤギのしっぽの方につけられた裁縫道具(針立て)など、細かい表現が駆使された作品なのですが、その意味するところが結構、意地悪。

眼の悪い仕立て屋が目の悪いヤギに乗って目的の晩餐会にたどり着けない様子。貴族が身分の低い人をヤジるという作品。悪趣味ですねぇ(^^;)

眼鏡や服装が最初"ロック"に思えましたが、

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上から見たこの表情はチョッと、とぼけた感じですね・・・

 

お次は「猿の楽団」(1820~1920年頃)

人間風刺のこの作品は今でもマイセンの人気シリーズとのこと。

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この章さいごは本展でも最もゴージャスな一品。「花鳥飾プット像鏡・シャンデリア」(19世紀中頃もしくは後半)

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細かい造形に花、鳥、そして楽器を奏でる人などが集まっています。金銀宝石とは違う匠の技が作り出す「豪華さ」です。

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さて、お次は・・・

 

第2章 器に表された動物

器に施された動物彫刻。マイセンでは、「スノーボール」という小花彫刻を貼り付け磁胎(陶磁器を作る素地土)を装飾した作品が代表シリーズとなり、これに小鳥などが装飾としてもちいられました。

ここでは、スノーボールを中心とした作品です。

 

「スノーボール貼花装飾カナリア付二人用ティーサービス」(1820~1920年頃)

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キレイです。でも、カップの口当たりはいかがなんでしょう?!(^^;)

 

「スノーボール貼花装飾蓋付昆虫鳥付透かし壺」(1820~1920年頃)

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かなり大きな作品です。鳥がいかにも止まっているかのようです。壺の下部の透かしの中には・・・


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さらに小鳥がいます。(見えにくいですが)

かなり凝った作りの作品です。これだけの大きなスノーボール。マイセンの高い技術力、製作能力を見せつけています。

  

第3章 アール・ヌーヴォーの動物

いよいよ動物がメインの作品です。ただし、ここまで1章、2章の作品はほぼ撮影OKだったのですが、ここはねこは撮影OKですが、それ以外は多くの作品が撮影NGですので気を付けてください。(撮影NGのマークがありますので、撮影するときはよく注意してください)

 

それでは、ここではやっぱりねこが好き!ということで。

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ねこ勢ぞろいです。

この他にも犬、シロクマ、キリン、ヒョウ、ライオン、ツバメにフクロウ等、いろいろな動物がいますので、是非、会場で確かめてみてください。

 

第4章 マックス・エッサーの動物

最後は1920~30年代のマイセンで成型師として活躍した彫刻家マックス・エッサーの作品です。こちらも、撮影NG作品がありますので、撮影時はご注意を。

 

「カワウソ」(1927年) 今にも動き出さんばかりにこちらの様子をうかがっています。

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「ライネケのキツネ」(1924~34年頃)

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文豪ゲーテの1793年刊行の叙事詩「ライネケ狐」を元にした作品。

動物界で様々な悪事をはたらく狐のライネケ。ほかの動物たちから訴えられたライネケは死刑になりそうになりますが、王様のライオンを上手く説き伏せ死刑を免れます。そしてライネケはやがて・・・

最後、勧善懲悪ではない身もふたもない話のようで封建社会を風刺した文学作品とのこと。だからか、このキツネの顔はだいぶいけ好かない感じですかね。
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本展はここまで。さいごはルオーの作品を見て会場を出ました。

 

(3) さいごに

日本でも動物をモチーフにした陶芸の作品として宮川香山(みやがわこうざん)が明治の超絶技巧展などで紹介されています。陶磁器は、本当にいろいろな表現の可能性があると感じます。今回の展覧会は豪華で美しい作品から、ちょっとシニカルな作品、大きい作品からかわいらしい作品と、マイセン、はたまた陶磁器によるいろいろな作品を気軽に楽しめると思います。是非、本物をみて、"きれい"、"すごい"、"かわいい"、"かっこいい"等と実感していただければと思います。

 

それでは、最後にリンクです。

 

この日、ぶらぶらしたときの様子はこちら。

www.yorocon46.com

 

マイセンの日本公式サイト

www.meissen-jp.com

陶芸の町・茨城は笠間にある茨城県陶芸美術館ではこんな展覧会も。

www.tougei.museum.ibk.ed.jp

こちら陶磁器の可能性を求めています。フィンランドはルート・ブリュック

www.yorocon46.com

こちらは陶磁器ではなくガラス。ルネ・ラリックです。

www.yorocon46.com

ということで、マイセン動物園展の紹介はいかがでしたでしょうか。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

昨晩(9/8)夜からの台風の影響はひどく、今日は朝から電車が動かなかったので、会社に行けず結局年休取得になりました。被害にあわれた方には心よりお見舞い申し上げます。

 

以上です。ではでは。

 

【展覧会】「太田喜二郎と藤井厚二展」@目黒・目黒区美術館(2019/9/1):京都の洋画家と建築家の心の交流

おはようございます。

 

涼しくなったかと思えば、残暑が厳しかったりと、なかなか気候が安定しませんね。

9月の最初、まだ蒸し暑さも残る中、見に行った展覧会です。

 

「太田喜二郎と藤井厚二 日本の光を追い求めた画家と建築家

 

です。

 

初めて行く目黒区美術館で「大人のための美術カフェ」なるトークイベントにも参加してきましたので、その様子を含め、ご紹介です。

今回も、まとまりのない内容ですが、しばしお付き合いを。それでは美術展へ。

 

※ 以下の記述は太田喜二郎と藤井厚二展の作品説明、その他Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真などはパンフレット、撮影可能な展示を撮っています。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1) 展覧会:太田喜二郎と藤井厚二 日本の光を追い求めた画家と建築家

mmat.jp

 

洋画家・太田喜二郎(1883年12月1日~1951年10月27日)

京都府京都市上京区生まれ。師・黒田清輝の勧めでベルギーに留学します。ベルギーではエミール・クラウスのもとで点描を学び、日本に伝えますが・・・。

目黒区美術館イベント「大人のための美術カフェ」、太田喜二郎のベルギー留学時代についてのトークショーに参加してきましたので、この辺は、また後程。

建築家・藤井厚二(1888年12月8日~1938年7月17日)

広島県福山市の酒造家の家に生まれます。東京帝国大学建築学科を卒業後、竹中工務店に就職。藤井は「其の国の建築を代表するものは住宅建築である」という考えのもと住宅建築の第一人者となり、京都府は大山崎の地に建てた自邸「聴竹居」(ちょうちくきょ)は自邸で初の国の重要文化財に指定されます。藤井は建築のみならず、茶道や陶芸にも造詣が深い人物でした。

太田が藤井に自宅の建築を依頼したことから二人の交流が始まります。太田邸は1924年(大正13)竣工、1929年(昭和4)増築、1931年(昭和6)増改築と繰り返されます。太田と藤井は家の依頼者、施工者という関係を越え、「西洋に学び、日本の伝統を生かし、新しい日本文化を作る」者として交流を深めていきます。

洋画家・建築家、異なるジャンルの二人の芸術家が一軒の家を通じて強くしていった"つながり"に着目し、それぞれの芸術を紹介していくユニークな展覧会です。

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(2) 会場:目黒区美術館

mmat.jp

JR目黒駅(その他各線あり)の西口から飲食店の続く坂を下り目黒川は「目黒新橋」へ。橋を渡って川沿いを行くと、入り口の目印が見えてきます。駅からは10分ちょっとでしょうか。帰りは坂を上るので、少し大変かも。夕方だったら、どこかのお店に寄りたくなっちゃう道ですね。(次は一人飲みかも)

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(3) 会期・開館時間・展示替等

2019/7/13(土)~9/8(日) ※ 本日最終日(9/8UP)

・本日9/8も14:00~「大人のための美術カフェ」開催。

テーマは「太田喜二郎邸の謎」

ナビゲーターは河村容治先生(元東京都市大学教授、太田喜二郎邸CG復元映像制作者)

 

(4) 料金

大人1,000円、大・高生・65歳以上800円、中学生以下無料

 

(5) 訪問時間と混雑状況

9/1(日) 13:50頃 トークショー60分、鑑賞時間は約50分でした。

・展覧会場は混んでいません。ゆっくり見られます。


(6) 美術館メモ

・写真撮影は1Fの「雪の朝」のみOKで、そのほかはNGです。

・図録は2,700円。このほか、絵ハガキはありましたが2種類だけでした。もっと絵ハガキにして欲しかった良い絵があったのですが・・・


(7) 行くきっかけ(情報源等)

DNPさんのWebサイト・artscapeを見ていて見つけ、2・3名の方のブログでも紹介されていたのを見て、実際に行ってみようと思いました。

artscape.jp 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

目黒は、駅反対側の東京都庭園美術館さんに年に1・2回来ていますが、こちらの美術館さんは初めてです。ウィーンデザイン展とか、行ってみたいと思った展覧会はいくつかあるので、ようやくの訪問です。

絵ハガキが少なかったので、ご紹介できる絵は少ないのですが、太田喜二郎のベルギー時代の作品は明るく、光輝くという印象でした。また、サン・ピエール寺院の連作は同じモチーフを何回も描き続けたモネを思わせるものでした。日本に帰ってきてから画風は大きく変わりますが、画家の苦悩と、それでも光を探求し続ける気持ちが伝わるかのようです。

藤井厚二は京都の建築物の写真等が中心の展示ですが、特に緑に包まれた中に佇む聴竹居は、一度、訪れてみたいと思いました。今度、京都を訪れたときは、藤井厚二という名前を少し意識して散策してみたいと思います。

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それでは、いよいよ会場なのですが、今回は「大人のための美術カフェ」の様子もふくめて紹介します。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

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展示スペースは主に2Fです。

 

・展覧会の構成

1Fの階段の下に撮影可能な作品が展示されています。

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太田喜二郎「雪の朝」1910-11年

ベルギーの太田喜二郎の宿舎から見えたサン・ピエール寺院です。

 

展覧会は以下の構成です。

 

・第1章 太田喜二郎

              留学前-東京に学ぶ

              ベルギー留学

              サン・ピエール寺の連作

              帰国後-点描で描く日本の光

              新たな日本の光を追い求めて

・第2章 太田喜二郎と藤井厚二の交流

              太田喜二郎邸-藤井厚二設計

              茶事を通して

              書簡のやりとり

・第3章 藤井厚二

              聴竹居-藤井厚二自邸

              石﨑庚作(こうさく)邸-京都市内に遺る藤井厚二作品1

              喜田源逸邸-京都市内に遺る藤井厚二作品2

              小川邸-京都市内に遺る藤井厚二作品3

              竹中工務店時代

              海外視察

              執筆活動

 

  上記の中から、いくつか紹介します。

太田喜二郎についてですが、今回の展覧会での目玉は

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太田喜二郎「赤い日傘」1912年 新潟大学蔵

光輝く緑の中の赤い日傘の女性。赤と緑、反対色のコントラストが印象的です。また、逆光の世界を描くことで、より光の存在を際立たせるよう描かれているとのこと。点描により、きらきらとした光に包まれた鮮やかな世界が明るく素敵な絵でした。

 

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太田喜二郎「樹影」1911年

こちらも光と影の中の少年を描くことで、より強い光を表現した作品です。

 

太田喜二郎は日本に帰国後も点描を描きましたが、賛否両論。当時の日本では点描という表現は進み過ぎていて受け入れられにくかったとあります。日本の農村風景を点描で描いた作品がありますが、ベルギー時代のそれとは異なり、なんとなくしっくりしない印象を受けました。日本の気候に点描という表現方法はあまり適していないのではないかとも思います。ヨーロッパの乾いた空気の中のきらきらした光と、日本の湿気を含んだ空気の中の溶け合うような光では、違うのかなぁ、なんて勝手に思っています。

帰国後の太田は点描をやめて新たな表現を求めます。

 

太田喜二郎の作品は以下のリンクでも紹介されています。

 

「美術手帖」

近代京都を代表する洋画家と建築家。太田喜二郎と藤井厚二の交流にフォーカスする展覧会が目黒区美術館で開催|MAGAZINE|美術手帖

掲載されている「夏の昼」(1919年)は、まさに点描から新しい画風に変わった後の絵です。

「京都市文化博物館」過去の展覧会に太田の作品が紹介されています。

太田喜二郎と藤井厚二—日本の光を追い求めた画家と建築家— | 京都府京都文化博物館

(この展覧会が京都で開かれていた時のページです。最初のチケット画像(?!)の右側の「窓辺読書」(1910年)は黒田の読書する女性の絵にも通じるような感じで、とても好きな作品でした)

京都の画家と考古学 – 太田喜二郎と濱田耕作 – | 京都府京都文化博物館

(このページの「木陰の少女」(1909年)も好きな作品です)

星野画廊:図録90

(こちらは星野画廊さんのページですが図録の表紙としても紹介されている「夏の朝(花摘図)」(1911-12年)も素敵な作品です。なお、モデルは「赤い日傘」と同じです)

 

藤井厚二については、主に写真が中心ですが、藤井の作成した茶碗なども紹介されています。藤井については、とにもかくにも「聴竹居」です。

聴竹居|藤井厚二

聴竹居(ちょうちくきょ) | 山崎観光案内所

上記リンクを是非、ご確認いただければと思います。

 

・大人のための美術カフェ「太田喜二郎とベルギー」

当日は14:00から目黒区美術館の学芸員・山田真規子さんによるトークショーがありました。「美術カフェ」と銘打っただけあって、お茶とお菓子も配られました。こういう気遣いとこだわり、とても良いなぁと思います。堅苦しくなく、美術の話を楽しめます。

さて、学芸員の山田さんはこれまで姫路市立美術館におられたとのこと。姫路市立美術館はベルギー美術を取り扱っていて、こちらでベルギー美術の研究に携わる中、太田喜二郎も研究されているそうです。私も四半世紀くらい前(古いですが)、姫路に半年いたことがあり、姫路市立美術館も何度か訪れました。姫路城の近くにある立派な美術館だったことを覚えています。

 

「太田喜二郎とベルギー」のお話しは以下のような感じです。

1. 太田喜二郎の留学先、ベルギーとはどのような国か

  太田喜二郎は絵の研鑽のためベルギーに留学しています。そこで、まず、ベルギーの紹介です。ベルギーはヨーロッパでも中心に位置し、現在ではEUの本部があります。昔はフランドルと言われました。独立は1830年。北部はオランダ語圏ゲルマン系、南部はフランス語圏ラテン系。このことから「ベルギー人はいない」といったアイデンティティにまつわる問題も抱えているとのことでした。

 

2. ベルギー美術の伝統

  ベルギーは「フランドル美術」として有名な地。ヒエロニム・ボスやブリューゲルのような写実的で、幻想的な美術が盛んです。その後、17世紀はフランダースの犬でも有名なルーベンスが活躍します。建国後の19世紀はフランスからの影響を受け、特にアングルなどの新古典主義や、「麗しのロジーヌ」のアントワーヌ・ヴィールツのようにロマン主義から受ける影響が強かったとのことです。

 

3. 近代の美術

  ベルギーの近代の美術はクールベのような社会問題に目を向けたレアリスム、印象派、象徴主義、表現主義等々、いろいろな影響を受け、「複雑で豊か」であったと評されています。

この頃が太田喜二郎が留学した時期と重なります。当時の印象派は世代交代をしていたころでモネやルノワールから新印象派のスーラなどに代が変わりつつあったとのこと。スーラの作品がベルギーで紹介されると点描が大流行したそうです。太田喜二郎が後に学ぶことになるエミール・クラウスも点描を描いた一人です。

 

4. 太田喜二郎

  ここで太田喜二郎の略年譜の紹介です。太田は最初、東京外国語大学英語科に入り、その後、フランス語科を経て東京美術学校に進んでいます。この経歴を見ても、もともと留学する気満々だったようです。東京美術学校では藤島武二に師事します。

 

5. 太田の留学に至るまで

  太田がベルギー留学に至るまでですが、そもそも太田は英語、フランス語を本格的に学んでいます。なぜベルギー?そこには、もう一人の太田の師匠・黒田清輝が関係します。黒田曰く、太田は「素直で温厚だが大人しい。フランス人は厳しすぎる。ベルギーの方が向いている」とのこと。太田はこのアドバイスを"素直"に受け入れベルギーに留学します。(黒田はフランスはつらかった時のイメージが強く、ベルギーに良いイメージがあったことも関係しているとか)

そして、エミール・クラウスに弟子入りします。

 

6. 太田の留学の第1期(1908年~1909年)

  太田は1908年に神戸からベルギーにわたり、1913年まで滞在します。最後の年は周遊につかったので、実質は1912年まで絵を学んだそうです。

師匠・クラウスからは大変、厳しい指導を受けたようです。先生と同じように描けないのは自分の眼がおかしいからではないかと思うほど悩んだようです。特に光の捉え方を厳しく指導されます。そんな指導の中、徐々に成長を重ね、1910年にはクラウスからも認められるまでになります。

 

7. 太田留学の第2期(1910年~1911年夏)

  クラウスに認められるようになった太田は留学期の中でも円熟期を迎えます、木漏れ日や逆光の中でモデルを捉え、より鮮やかな光を描く、そんな作品が多くなります。サン・ピエール寺院の連作を描くのはこの頃で、何枚ものサン・ピエール寺院の絵を並べ同時に筆を入れ、時間や季節によって変わる光を反映させながら作品を完成させています。モネを思わせるような描き方です。サン・ピエール寺院は当時の宿舎の窓から見えたので描いていますが、引っ越してしまうと、この寺院は描かなくなってしまいます。

 

8. 太田留学の第3期(1911年秋~1912年)

  この頃は、転居した時期になります。ここで新しいモデル・マデレン(当時17歳)と出会います。マデレンをモデルとした人物画に力を入れ、「赤い日傘」「花摘図」等はマデレンがモデルだったと言われます。「赤い日傘」は帰国後、東京大正展覧会で2等を受賞しますが、展覧会への出品も想定していた自信作だったと言えるでしょう。太田喜二郎の芸術のある意味、頂点を迎えた時期だったのではないでしょうか。

 

最期に

  太田帰国後のベルギーは1914年の第一次世界大戦に巻き込まれていきます。太田が留学していた時期のベルギー近代美術は"複雑で豊か"なもっとも恵まれた時代であり、太田にとっても恵まれた時期だったといえます。帰国後の太田は、1917年には点描をやめてしまいます。ベルギーとは風土も画壇も違う日本の環境で思い悩む時期を過ごしたようです。

 

  と、若干、私の解釈も含んだ表現になっちゃっていますが(^^;)、概ねこんなお話しでした。(と思います。理解不足の点はご容赦ください)

いかがでしたでしょうか?ちょっと、太田喜二郎にご興味を持っていただけたなら幸いです。

 

(3) 最後に

  太田喜二郎と藤井厚二。今回の展覧会で初めて知りました。作品は多くないですが、なかなかに発見のある展覧会で、私は好きです。もっと早くに行ければよかったのですが、知ったのも遅く、トークショーに行きたかったということもあり、この日の鑑賞になりました。

キスリング展でトークショーを聞いて以来、最近、結構はまって聞いています。なかなかスケジュールが合わないことも多いのですが、これからもトークショーには参加したいなと思いますし、ここでもご紹介できればと思います。

 

それでは、最後にリンクです。

www.yorocon46.com

全然関係ないですが、この展覧会の前に行きました。

www.yorocon46.com

 

  ここまで、お読みいただき、ありがとうございました!

今回は少し文字ばかりになりましたね。作品はリンク先で補足したつもりなので、是非、ご参照ください。

台風15号の行方が気になります。ひどいことならなければよいのですが・・・

以上です。

 

ではでは。

 

(目黒新橋のたもとのサルスベリと目黒川。桜の頃はきれいです)
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【グルメ】東京ぶらぶらの後の男の一人飲み

こんばんは。

 

今日は、フレックスで会社を3時に上がって、都内をぶらぶら。

 

こんなところをぶらぶらと。。。

 

東銀座・歌舞伎座。今度は芝居を見てみたい。

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それから、汐留の美術館でマイセン。

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今日のメインは、築地・朝日新聞社のホールで、ほぼ日の特別授業。

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生きているって不思議!

 

  そして、小金井に戻って一人飲み。

「鶏っきー」

美味しい焼き鳥で一杯!

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チョッと優雅な午後でした。だいぶ歩きましたが^_^;

早く帰らせてくれた会社のメンバーに感謝。

 

また、明日は仕事です。

飲みすぎないように(合掌)

 

  それぞれの詳細はまたいずれ。

 

  ではでは。

 

【展覧会】2019年9月 東京の展覧会通信(2019/9/2)

こんばんは。 

 

   8月はお盆休みもあった(実際はお盆"前"休みでしたが^^;)ので、それなりに美術館には行けたかなぁ。まだ、当ブログにアップしていない展覧会も多いのですが・・・

 

   さて、9月は夏の展覧会と秋の展覧会のいわば入替戦。夏の大型展も終わりを向かえ、いよいよ"あの"展覧会が開催されます!

 

ということで、今月も自分のための展覧会備忘録、まとめていきたいと思います。とにかく、一貫性はありません。「今、気になるものを、ただ載せる」というコンセプトで書いてます。長い目でみて、お付き合いのいただけますと幸いです。

なお、今月も初出の展覧会は「☆彡」印を、見て来た展覧会は「(見た!)」付けてます。もし気になる展覧会がございましたら、お早めに(^^)

 

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(確か、この絵も"あの"展覧会に)

 

【目次】

 

1. 情報源

今回も次の情報を中心に書いていきます。ご参考まで。

・「日経 おとなのOFF」2019年1月号(+付録「2019 美術展100ハンドブック」)

・チラシミュージアム(iPhoneソフト):チケットのe-plusのスマホアプリ

チラシミュージアム~美術館・博物館の情報&クーポン|イープラス

・アートスケープ:大日本印刷さんのアート情報サイト。各地域の展覧会情報も検索できます。

展覧会スケジュール|美術館・アート情報 artscape

 

それでは、いよいよ本題です。

 

2. 西洋美術

「松方コレクション展」上野・国立西洋美術館 開催中~9/23(月・祝) (見た!)

artexhibition.jp※ 世界でも類を見ないコレクションを形成した松方幸次郎。幾多の苦難を乗り越えて上野に集まった作品達。その足跡をたどる展覧会です。是非とも、実際の作品に会ってきてください。思った以上の物語を秘めています。

 

「日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念 モダン・ウーマン-フィンランドを彩った女性芸術家たち」上野・国立西洋美術館 開催中~9/23(月・祝) (見た!) 

※ 西洋美の常設展エリアでの開催です。松方コレクションのチケットで同時に見られます。普段、あまり見ることはないかもしれませんが、フィンランド女性芸術家の生き生きとした作品を見られ、けっこうおススメです。是非、松方コレクションとご一緒に。撮影可能です。

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ヘレン・シャルフベック「少女の頭部」1886年

 

・「ジュリアン・オピー」初台・東京オペラシティ アートギャラリー 開催中~9/23(月・祝) (見た!)

www.operacity.jp※ ピクトグラムのような人物像。巨大な作品に圧倒され、電光で動く作品に目を惹かれ、単純化された造形で再構築された街や自然の中で、世界との関係を再確認する。オピーの世界観に包まれた展覧会。撮影可能です。

なお、こちらの情報もご覧ください。

「ジュリアン・オピー」展 | 青い日記帳

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「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ -線の魔術」渋谷Bunkamura ザ・ミュージアム 開催中~9/29(日) (見た!)

https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_mucha/

※ やっぱりミュシャは良いですよね。そのミュシャの魅力が連綿と現代アーティストたちへと繋がっている。ミュシャを起点としたアートの流れが感じれられる展覧会です。

ミュシャの主要作品は撮影可能です。

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☆彡「コートールド美術館展」上野・東京都美術館 9/10(火)~12/15(日) 

courtauld.jp※ 今月の目玉であり、今年の目玉の美術展の一つです。印象派・ポスト印象派の作品が集まります。マネ最晩年の傑作と言われる「フォリー=ベルジェールのバー」は是非見たいところ。まだ、前売券も間に合います。(9/9(月)まで)

 

☆彡「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」横浜・横浜美術館 9/21(土)~2020/1/13(月) 

※ 今年いちばん見に行きたい展覧会です。横浜美術館開館30周年記念展。ルノワールの「ピアノを弾く少女たち」(前掲)等が横浜に来るのであれば、この時期、パリに行かなくて良かったかも。(行く予定の方、ごめんなさい)

9/20(金)まで前売券販売中です。

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(パリのオランジュリー美術館。2017年11月)

 

3. 日本美術

・「円山応挙から近代京都画壇へ」上野東京藝術大学大学美術館  開催中~9/29(日)  (見た!)

okyokindai2019.exhibit.jp※ 9/1(日)までで前期は終了。9/3(火)からは大幅入れ替えの後期が開始します。円山応挙の作品だけではなく、円山・四条派を主流とした京都画壇の多くの画家を取り上げています。通期で展示されている大乗寺襖絵の再現は是非とも見ておきたい。前期の展示は見ましたので、今月は後期の展示を見に行きます。

 

☆彡「太田喜二郎と藤井厚二 - 日本の光を追い求めた画家と建築家」目黒・東京ステーションギャラリー美術館 開催中~9/8(日) 

mmat.jp※ あと一週間なのですが、敢えて、掲載します。もっと早くに知っていれば良かった。9/1(日)に行ってきました。日本からベルギーに留学し、印象派、特に点描を学び光をとらえ続けた太田喜二郎。竹中工務店に勤務し、2017年に自邸で初めて国の重文に指定された京都・山崎「聴竹庵」(ちょうちくあん)の生みの親・藤井厚二。二人は太田の自宅を藤井が手掛けたことから親交を深めていきます。展示数は少ないですが太田のベルギー時代の点描は秀逸。藤井の「聴竹庵」は一度は行ってみたいと思わせます。残り期間は少ないですが、もし機会があれば。今週末(9/7、9/8)14:00~の「大人のための美術カフェ」に行くと「太田喜二郎邸の謎」と題したトークショウを。お茶とお菓子がもらえるかも。(きっと、もらえます)

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(太田喜二郎「雪の朝」1910-11年 ベルギーのサン・ピエール寺です)

 

☆彡「没後90年記念 岸田劉生展」東京・東京ステーションギャラリー美術館 開催中~10/20(日) 

www.ejrcf.or.jp※ 「麗子」像で有名な岸田劉生。鬼才・天才の作品が東京駅に。

 

☆彡「大観・春草・玉堂・龍子 - 日本画のパイオニア」広尾・山種美術館 開催中~10/20(日) 

www.yamatane-museum.jp※ 近代日本画を代表する4人の展覧会。コラボするミュージアムカフェの和菓子も気になるところ。

 

4. その他

 「みんなのレオ・レオーニ展」新宿・東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館 開催中~9/29(日) (見た!)

www.asahi.com※ 「スイミー」のレオ・レオーニ展。一階に特設ミュージアムショップがあります。夏休みに行ったので、お子様連れの方も多く、結構、混んでいました。

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(ショップのキャラクター。展覧会場には立体物はありません^^;)

 

・「マイセン動物園展」汐留(新橋)・パナソニック汐留美術館 開催中~9/23(月・祝) 

panasonic.co.jp※ 磁気で有名なドイツのマイセン。こちらも今月下旬まで。写真撮影可のようです。時間があれば、今週、見に行けるかも・・・

 

☆彡「チェコ・デザイン 100年の旅」用賀・世田谷美術館 9/14(土)~11/10(日) 

www.setagayaartmuseum.or.jp※ ミュシャを生んだ国チェコ。私は以前、チェコ・アニメーション映画を阿佐ヶ谷に見にいきました。もぐらのクルテクは、日本でもおなじみのキャラクターでは?(見ればわかると思います)少し変わっていて、それでいて親しみのあるチェコ・デザインを見にいってみたいと思います。

 

5. さいごに

9月は西洋・日本といろいろな展覧会がありますが、これから10月はさらに加速していきます。印象派関係の展覧会が多そうですね。楽しみです。

 

それでは、関連する過去の記事のリンクを少しご紹介します。

www.yorocon46.com

www.yorocon46.com

www.yorocon46.com 

www.yorocon46.com※ 年間通じての展覧会情報はこちら。

 

以上、ここまで、お読みいただき、ありがとうございます。いつもに増して雑多な内容になってしまったと思いますが、一つでも気になるものがあれば幸いです。

そして今月は、ついにラグビーワールドカップ開幕!(ご興味ないかもしれませんが^^;)こちらが始まると忙しくなるので、その前に、いろいろ行かないと。

ということで、それでは、また来月に。ではでは

 

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(さすがに、これは来ませんね^^;)

 

【展覧会】「松方コレクション展」@上野・国立西洋美術館(2019/8/12):数奇な運命を経て、今ここに

おはようございます。

今年も早いものでもう9月。夏も終わり、いよいよ芸術の秋ですね。

(まだ、残暑も厳しいようですが・・・)

 

今回は、まだ夏真っ盛りの中、見に行った展覧会です。久々の西洋美さん。

 

国立西洋美術館開館60周年記念

「松方コレクション展」

 

です。

 

西洋美コレクションの原点となった松方コレクション。そのコレクションが、実は数奇な運命にみまわれ流転を繰り返していた・・・

作品はもちろん、それにまつわるエピソードも興味深い展覧会です。

今回も、まとまりのない内容ですが、しばしお付き合いを。それでは美術展へ。

 

※ 以下の記述は松方コレクション展の作品説明、図録、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真などは図録・撮影可能な常設展の展示を撮っています。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1)展覧会:国立西洋美術館開館60周年 松方コレクション展

artexhibition.jp

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今回の主役・松方幸次郎は1866年1月17日、薩摩藩(鹿児島県)の下級藩士・松方正義の三男として生まれます。父・松方正義はのちの第4・6代の内閣総理大臣です。

幸次郎自身も7年におよぶアメリカ留学の後、神戸・川崎造船所(現・川崎重工業)の初代社長として迎え入れられ、日本の産業界をけん引した人物です。

第一次世界大戦下の船舶需要に乗り、業績を拡大する中で、1916年(大正5)、訪問先のロンドンで画家・ブラングィンと知り合い、美術品の蒐集を始めます。これが松方コレクションの始まりです。最初はイギリス美術中心でしたが、1917年(大正7)、パリ・ロダン美術館のベネディットと知り合い、ロダン作品を発注。ここから、フランス絵画・彫刻の蒐集が本格化します。日本のため買い戻した浮世絵8,000点を加えると、1万点におよぶ大コレクションとなります。

松方幸次郎はこれらのコレクションを展示するため、日本初の本格的な美術館「共楽美術館」の設立を夢見ます。盟友のブラングィンがその構想図を手掛けています。

しかしながら、この美術館が実現されることはありませんでした。

第一次大戦後の不況、関東大震災を受けて起こった1927年(昭和2)の昭和金融恐慌。川崎造船所はこのあおりを受け経営危機に。幸次郎は責任をとって翌1928年(昭和3)に社長を辞任。会社整理の中、美術品も売り立てられます。そして第二次世界大戦が勃発した1939年(昭和14)にはロンドンの倉庫火災でコレクションの約950点、特にブラングィンの重要作品の多くが焼失してしまいます。翌1940年(昭和15)、パリ・ロダン美術館に保管されていた作品が疎開を開始。この年の6月にはナチス・ドイツがパリを占領しています。戦火を逃れる中、コレクションの管理を一任された日置紅三郎は、経費捻出のため一部作品を売却します。1944年(昭和19)、疎開先から作品がパリに戻ると今度は「敵国人財産」としてフランス政府に接収されてしまいます。こうして、コレクションは次々と散逸していきました。

戦後、1950年(昭和25)6月24日に松方幸次郎は隠遁先の鎌倉で84年の生涯を閉じます。

その後、1952年(昭和27)、松方コレクションは正式にフランス政府所有となります。日本は返還活動を行い、1955年(昭和30)に日本への寄贈返還が本格化します。

1959年(昭和34)、ついに松方コレクション375点が日本に引き渡され、展示するための美術館として同年6月10日、国立西洋美術館が開館します。

 

前置きが長くなりましたが、これでも書き足りないくらいの物語です。

開館から60年。流転を繰り返した作品達が辿り着いた安住の地での記念展です。

 

(2) 会場:国立西洋美術館(上野)

www.nmwa.go.jp

 JR上野駅 公園口から東京文化会館の右を抜けて直ぐ。2・3分くらいのところです。

 

(3) 会期・開館時間・展示替等

2019/6/11(火)~9/23(月・祝)

・月曜休館です。ただし9月16日、23日の祝日は開館です。

・開館時間は9:30~17:30です。金・土曜日はナイトミュージアムで9:30~21:00です。

・展示替え・巡回展はありません。

 

(4) 料金

大人1,600円、大学生1,200円、高校生800円、中学生以下無料

・前売り(1,400円)購入で行きました。

 

(5) 訪問時間と混雑状況

8/12(月・祝) 12:30頃 鑑賞時間は約80分でした。

チケット売り場は20分待ちでした。事前にネットで購入することをおススメします。

・展覧会場も混んでいます。(ただ、入場待ちはありませんでした)


(6) 美術館メモ

・写真撮影はNGです。

・音声ガイドは橋本さとしさんです。(私は利用していませんがご参考まで)

・図録は2,700円。このほか、絵ハガキ・クリアファイル・ノート等もあります。

「松方コレクション展」図録 | 図録専門販売サイト MARUYODO

・9/7 14:00からは「松方コレクション 百年の流転」という講演会があります。(西洋美主任研究員・陳岡めぐみさん。聴講無料ですが聴講券、観覧券(半券)が必要です)


(7) 行くきっかけ(情報源等)

2018年の「日経おとなのOFF」1月号で見たときから、行くことは決定でした。

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

西洋美さんの常設展示で何回も見ている作品も多いのですが、このような物語が背景にあることは、あまり深く知りませんでした。いかに「ぼーっ」と見ていたか、少し反省です。(チコちゃんに怒られそうです)

いずれにしましても日本が世界に誇れる西洋美術コレクション。今回は西洋美さん所蔵ではない作品も含め展示されています。あらためて壮大なコレクションを堪能できる展覧会です。

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それでは、いよいよ会場内へ。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

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美術館入口には今回の展覧会の目玉の一つ「睡蓮、柳の反映」のデジタル推定復元図が展示されています。(ちょっと光っていて写真では見にくいですが・・・)

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プロローグ

プロローグにはモネとブラングィンの作品です。

 

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クロード・モネ「睡蓮」1916年(以前、常設展で撮影)

幸次郎は1921年にジベルニーにあるモネのアトリエを初めて訪れ、親交を深め、作品を購入しています。松方コレクションを代表する一枚。

 

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フランク・ブラングィン「松方幸次郎の肖像」(1916年)

幸次郎とブラングィンが出会った頃の作品。作品の裏には「1時間で描く」とあるように、素早いタッチでモデルの特徴を捉えた作品。二人の気の置けない間柄がそのポーズから伝わるようです。

   

I ロンドン 1916-1918

この展示室は壁面一杯に作品を並べていて、あたかもロンドンの画廊やアトリエに入ったかのような感じがします。歴史画や宗教画も多く並びますが、私が好きなのは、やはり「ラファエル前派」です。

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ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「愛の杯」1867年

  

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ジョン・エヴァリット・ミレイ「あひるの子」1889年(以前、常設展で撮影)

 

ラファエル前派に偏った紹介になってしまい申し訳ありません。本当にいろいろなの作品が展示されています。

 

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ジョヴァンニ・セガンティーニ「羊の毛刈り」1883-84年

近代イタリアを代表する画家・セガンティーニの作品です。写実的な画風、少しバルビゾン派を思わせるような牧歌的世界が印象的です。

 

II 第一次世界大戦と松方コレクション

ここでは、戦時下のイギリスの作品を中心に展示されています。兵士の様子を描いたリトグラフなどが多数あります。


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テオフィル・アレクサンドル・スタンラン「帰還」1918年

アール・ヌーヴォーの黒猫のポスターで有名なスタンラン。ポスターとはうって変わって、戦場の兵士や人々の生活を伝える作品を残しています。このような作品が含まれているこのコレクションの幅の広さ、奥行きの深さを感じます。

 

III 海と船

松方幸次郎は造船会社の社長です。またコレクションの形成に影響を与えたブラングィンも元船乗でした。このことが、コレクター松方に影響を与えないわけがありません。このエリアでは海と船にまつわる作品が展示されています。

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シャルル=フランソワ・ドービニー「ヴィレールヴィルの海岸、日没」1870年

水辺の画家・ドービニーの穏やかな風景画です。

  

IV ベネディットとロダン

美術館建築が明確な目標となった幸次郎はロダン作品の蒐集を始めます。ロダン美術館を率いるベネデイットとロダン作品に関する大型契約を取り交わし、世界有数のロダン・コレクションを手にします。そして、ベネディットはパリにおける作品購入の代理人となり、ロダン美術館旧礼拝堂がフランスでの松方コレクションの保管場所となります。幸次郎にとっても、ベネディットにとっても、それぞれの美術館を作り上げる上でお互いが重要な人物となっていくのです。

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オーギュスト・ロダン「地獄の門」1880-90年

西洋美前庭の大きな彫刻です。ダンテの「神曲」を主題としたロダンの代表作は幸次郎の発注を得て、実現に向かいます。

この展覧会。既に美術館の敷地に足を踏み入れた時から始まっていたのです。

 

V パリ 1921-1922

私にとっては、ここが松方コレクションのメインです。印象派をはじめとして多くのフランス作品が並びます。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール「帽子の女」1891年(以前、常設展で撮影)

私にとって、松方コレクションで真っ先に思い出す絵です。なんとなくリラックスした感じが伝わります。

 

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シャルル・エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン「母と子(フェドー夫人と子供たち)」1897年

縦190.5cm×横127.8cmとかなり大きな作品です。お母さんに抱き着く子どもの様子がなんとも可愛らしいです。お姉さんの方は少しおすましでしょうか。

この作品、横に額だけの展示があります。本来だったら、その額に入れられるはずだったのですが、サイズが合わず、入れるのを断念したそうです。そんな作品にまつわるエピソードも面白いですね。

 

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ギュスターヴ・クールベ「波」1870年頃

フランス写実主義の画家、クールベ。自然の厳しさを写実で伝える美しい一枚です。

 

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ギュスターヴ・モロー「牢獄のサロメ」1873-76年

モローも松方コレクションに収められています。

 

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フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」1889年

こちらは、松方コレクションの一枚ながら、日本に来ることがなかった作品です。フランス政府が重要作品として返還を拒否した作品で、現在はオルセー美術館にあります。ベッドと壁の位置など、完全に現実的な世界から「はみ出して」いますが、それが画面の持つ「力」になっているように感じます。

 

VI ハンセン・コレクションの獲得

1922年、コペンハーゲンの実業家ウィルヘルム・ハンセンの珠玉のフランス絵画コレクションの一部を手に入れています。マネ、モネ、ドガなどの作品が含まれています。コレクション散逸期に多くが売却されるも日本の美術館に代表的な作品は残っているとのことです。

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エドガード・ドガ「マネとマネ婦人像」1868-69年

こちらの絵、画面右が切り取られている。マネが気に入らず、ピアノを弾く奥様の顔を切り取ってしまったことでも有名です。マネの顔も格好もいかにも不機嫌そう。いったい何があったのでしょう。

 

VII 北方への旅

1921年の渡欧時、幸次郎は海軍から最新鋭潜水艦の設計図を入手するように命じられ、遂行しています。派手に蒐集された松方コレクションはこのスパイ活動のカモフラージュだったのではないかと言われますが、定かではありません。この頃、幸次郎は北欧を訪れ、コレクションの蒐集を行っています。

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エドヴァルド・ムンク「雪の中の労働者たち」1910年

ムンク作品はこのほかにも有名なモチーフ「吸血鬼II」等、数点展示されています。

 

VIII 第二次世界大戦と松方コレクション

この時期は松方コレクション散逸の時期です。1万点におよぶ松方コレクションは昭和金融恐慌のあおりを受け、川崎造船所の経営破綻とともに散逸が始まります。そしてれロンドンの倉庫火災、ナチス・ドイツから逃れるための疎開、フランス政府による接収。数奇な運命をたどり、1959年にようやく今の国立西洋美術館にたどり着くのです。

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ピエール=オーギュスト・ルノワール「アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」1872年

 

フランス政府が返還を拒んだほどの重要作品、ルノワール初期の代表作です。パリの一室を描きながらエキゾチックな雰囲気漂います。

 

エピローグ

最期はモネの大作「睡蓮、柳の反映」1916年です。

最初のデジタル推定復元図の原画です。かなりの部分が痛んで消失していますが、モネの睡蓮に注がれた思いが伝わります。完全な形で日本に来ていたら、そんなことを思うと少し残念な気持ちにもなりますね。

 

(3) 最後に

松方コレクション展。いかがでしたでしょうか。展示作品150点以上。

多岐にわたる作品で、全然紹介しきれませんで。見ようによっては無作為に蒐集をしているとも取れますが、その時代に価値ある作品を集めた松方コレクションは切り口によっていろいろな表情を見せてくれます。また、松方幸次郎の日本に本格的美術館を作るという夢がその規模を膨らませていったのだと言えるでしょう。残念ながら、松方幸次郎自身はその美術館を目にすることはできませんでしたが、今、こうして私たちの前に厳然とコレクションの価値は計り知れないものだと思います。

 

ちなみに松方コレクション返還時にフランス政府からついた注文が

「変換した作品は専門の美術館に展示すること」

そして、できたのが国立西洋美術館。ル・コルビジェの設計で、いまや世界遺産。本当にこのコレクションの持つ力はすさまじい。

(絶対、映画になりますよね。このストーリー)

 

それでは、最後にリンクです。

上野でやっている展覧会です。

www.yorocon46.com

こちらも、まだまだ開催中です。

www.yorocon46.com

ここまで、お読みいただき、ありがとうございました!

暑かったり、涼しくなったりと体にはこたえますが、お風邪などひかれませんように。

 

ではでは。

 

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エドゥアール・マネ「嵐の海」1873年(ベルン美術館蔵。特別出品です)

 

【展覧会】円山応挙から近代京都画壇へ 展 @ 東京藝術大学大学美術館(上野) Short Report(2019/8/12)

こんばんは。

 

今日は、上野・東京藝術大学大学美術館で開催中の

「円山応挙から近代京都画壇

の「Short Report」です。展示替えがあり、現在展示中の前期が9/1(日)まで。大展示替えの後期が9/3(水)から。ということで、前期終了まで間もないので、少し紹介させていただきます。

 

【目次】

 

1. 概要

・江戸の京都に彗星のごとく現れた円山応挙。写生による新しい画風。その後を追う呉春らの四条派。その流れは竹内栖鳳や上村松園へと・・・

そんな、円山応挙から連なる京都画壇の画家たちの作品が一堂に会した展覧会です。

 

開催期間:開催中~2019/9/29(日)(展示替えあり。前期~9/1(日)、後期9/3(火)~)

・開館時間:10:00~17:00(入館は30分前)、ナイトミュージアムはありません。

・休館日:月曜日。ただし祝日・振替休日の場合、翌火曜日に振り替え

・チケット:大人1,500、大学・高校1,000、中学生以下無料

・訪問時の混雑状況:8/12(月) 14:30頃到着。会場は人はいますが、目立った混雑はありません。ゆっくり見られます。

・Tip:図録は2,450円(税別)でした。ミュージアムカフェはホテル オークラです。

・URL:

(展覧会専用)

okyokindai2019.exhibit.jp

(大学美術館トップ)

東京藝術大学大学美術館 The University Art Museum, Tokyo University of the Arts

 

(パンフレット)

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2. 構成

展覧会の構成は・・・

・すべては応挙にはじまる。

・孔雀、虎、犬。命を描く。

・山、川、滝。自然を写す。

・美人、仙人。物語を紡ぐ。

 

会場マップはこんな感じです。

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まずは、3階の展示室に入ると「応挙寺」こと兵庫県・大乗寺の襖絵が再現されています。いきなりクライマックスの作品に出会えます。パンフレットの絵はこの襖絵。応挙の「松に孔雀図」(一部)です。本展は大幅展示替えがありますが、この襖絵は通期展示です。

そして、実際の風景や動物や植物を「写生」することを本分とした応挙とその弟子、また、応挙の後を追い続けた画家たちの作品が並びます。華麗な孔雀、迫力の虎、愛くるしい子犬。いろいろな命と出会えます。

後半は風景や人物を取り上げたエリアです。応挙のやさしい美人画も展示され、この流れが上村松園へと続きます。

  

3. Short Report

まずは、応挙の襖絵に注目ですが、本展覧会では応挙のみならず、与謝蕪村、呉春、長澤芦雪、岸竹堂、竹内栖鳳、上村松園と多数の画家の作品で構成されています。

 

その中で、いくつか紹介しますと・・・

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円山応挙「写生図巻(乙巻)」から一部 1770-72年(明和7~安政元)

円山応挙が描いた写生の「お手本」といえる作品。

 

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長沢芦雪「牡丹孔雀図」江戸時代中期

「奇想の系譜」芦雪の描く、鮮やかな孔雀。牡丹も美しく、いろいろな鳥たちが画面を彩る華やかな作品です。

 

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円山応挙「江口君図」 1794年(寛政6)

 

ということで、簡単ながらご報告まで。

 

今回、大幅展示替えということでペアチケットを購入し、後期も見に行く予定です。

前期は事前調整がうまくいかず、後ろの予定が詰まっていたため、かなり駆け足で見てしまいました。(50分弱くらいでしょうか)

ちょっと、もったいないことをしてしまいましたので、後期はゆっくり見てきたいと思います。また、後期を見ましたら、もう少し詳細な情報をお伝えできればと思います。

 

 

なお、本展覧会は以下のとおり巡回します。

【巡回情報】

 2019/11/2(土)から12/15(日) 京都国立近代美術館

 

以上です。本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、また。