こんにちは。(昼に記事をアップするのは久しぶりです)
展覧会の鑑賞報告です。
もう、見に行ってから一か月近く経ってしまいましたが、2019年4月下旬まで開催中のこちらの展覧会です。
「ラリック・エレガンス」
= 宝飾とガラスのモダニティ -ユニマットコレクションー
ラリックというとアルフォンス・ミュシャのデザイン、ラリック作、フランスの女優サラ・ベルナールが舞台で冠したユリの冠を真っ先に思い出します。ラリックもミュシャも、まだ無名の頃にサラ・ベルナールにその才能を見出されたとか。さすが大女優。見る眼が違います。今回の展覧会はサラ・ベルナールはあまり関係ありませんが・・・
と、相変わらず、まとまりのない内容ですが、どのような展覧会か、ご紹介してみたいと思います。しばし、お付き合いを。
それでは、早速、展覧会に行ってみましょう!
※ 以下の記述はラリック・エレガンス展のパンフレット、作品説明、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真はパンフレットを撮りました。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会:ラリック・エレガンス=宝飾とガラスのモダニティ -ユニマットコレクション-
ルネ・ラリックは1860年(~1945年)、フランス・シャンパーニュ地方アイ村に生まれます。16歳で宝飾の道に進み、その才能を開花させます。最初の頃はジュエリー作家として活躍。1900年のパリ万博で大注目を浴びたアール・ヌーヴォーの作品を残します。パリ万博以降、今度は香水瓶などの製作に乗り出し、ガラス工芸家となります。現在も続くラリック社創設もこの頃とのこと。1912年以降はまったくジュエリーを作らなくなったそうです。ガラス工芸家として注目を浴びたのはアール・デコのデザイン。1925年の現代装飾美術産業美術国際博覧会(通称「アール・デコ博覧会」)では自社のパビリオンを出展。まさにアール・デコを牽引します。
アール・ヌーヴォーとアール・デコ。二つの様式で、個性を放ち、輝き続けたラリックの作品。ユニマットさんのコレクションから200を超える作品から構成された展覧会です。
(2) 会場:練馬区立美術館(中村橋)
※西武池袋線・中村橋駅から徒歩1・2分。美術館の前には公園があり、図書館と併設の建物なので、美術館以外にも楽しめます。このブログでは今回2回目の登場です。最寄り駅の話をしましたが、私は今回も車で行きました。近辺の駐車場は1時間300円です。
(3) 会期・開館時間・展示替等
2019/2/24(日)~2019/4/21(日)
・月曜休館です。
・開館時間は10:00~18:00。入館は30分前まで。ナイトミュージアムはありません。
・展示替えはありません。
(4) 料金
・大人800円、大学・高校生および65~74歳600円、小・中学生および75歳以上無料
(結構、手ごろに見られる料金設定です)
(5) 訪問時間と混雑状況
3/9(土) 17:00過ぎ、鑑賞時間は約60分。
・時間があまりないところで行ったので、ゆっくりは見られなかったですね。
・作品も多いので、1時間以上は時間を確保した方がよいです。
・混雑はしていません。ゆっくり見られます。
(6) 美術館メモ
・展示会場の写真撮影はNGです。
・会場内(展示室3)で17:45まで特設物販コーナーがあります。(期間限定のミュージアムショップです)
・図録などは受付でも買えます。
・図録は確か3,200円だったと思います。(今回は迷ったけど購入しませんでした)
(7) 行くきっかけ(情報源等)
本展は、チラシミュージアムで見つけました。結構、この頃のガラス工芸は好きで、エーミル・ガレとルネ・ラリックの展覧会は開催されれば行くようにしています。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
ラリックと言えば、最初に書いたようにサラ・ベルナールの「ゆりの冠」のように「アール・ヌーボー」「宝石」というのが真っ先に頭に浮かぶのですが、途中からガラスしか作らなかったんだぁ、という感じです。本展でも最初は宝石のデザインもありますが、ガラス工芸作品が多数、展示されています。
ちなみに・・・
〇アール・ヌーヴォー:Art(芸術)+Nouveau(時代)、19世紀末~20世紀初頭
植物や昆虫などをモチーフとしたデザインが多く、曲線的で優雅なデザインが主流。
産業革命の反動で大量生産の粗悪品から、自然の中にある美しいものを求めるアーツ・アンド・クラフツ運動が根底にあるとのこと。出発はラファエル前派あたりです。
〇アール・デコ:Art(芸術)+Deco(装飾)、1910年~1940年頃
工業化が進む中、アール・ヌーヴォーの曲線的デザインは大量生産に向かないことから大量生産を前提とした直線的、幾何学的、実用的でシンプルなデザインが主流となったとのこと。アール・デコは第一次・第二次のふたつの大戦の狭間で流行したデザインでもあります。日本では東京都庭園美術館(旧・朝香宮邸)がアール・デコ様式の建物として有名ですよね。ここにルネ・ラリックの作品もあります。同じデザインのガラス板を向きを変えることで複雑なデザインに見せるガラス扉等、「再生産」することを意識したアール・デコのデザインの特徴が良く出た作品があります。
個人的には、アール・デコが好きかなぁ・・・(もちろん、アール・ヌーヴォーも好きですが)
奥様は断然アール・ヌーヴォー派で。みなさま、どちら派?
(2) 展覧会の構成と気になる作品
受付でチケットを購入し、青い「LALIQUE」と書かれたゲートに向かい、展覧会場へ。それでは、気になった作品紹介ですが、今回はパンフ掲載の作品をご紹介。(写真が粗くてすみません。雰囲気だけでも伝われば・・・。なお、いくつかの作品は展覧会のWebページで参照できます)
I アール・ヌーヴォーの宝飾
「I-I ジュエリー」
「I-II ドローイング」
「I-III ジュエリー、テストピース」
で構成されています。
その中から、
ペンダント/ブローチ「ケシの女」1890-1900年頃
解説にもありました。ラリックの宝石のデザインは宝石にスポットが当たっているのではなく「デザイン」にスポットが当たっている。「宝石のためのデザイン」または「宝石のデザイン」ではなく、「デザインに組み込まれた宝石」というところでしょうか。
この、主従逆転と言いますか、デザインありきの作品が、ラリックを好きな大きな理由の一つです。宝石の作品の中に物語があるように感じます。昨年、見に行ったジョルジュ・ブラックのアクセサリーを中心にした展覧会も、デザインが主で宝石が従という作品で、とても惹かれました。
扇と櫛「落ち葉」1899-1900年頃
ラリックも日本のジャポニズムの影響を受けています。日本に来ることはなかったようですが、日本美術が好きだったことが伺えます。
II アール・デコのガラス
「II-I 初期」
「II-II オパルセント」
「II-III アール・デコ博覧会」
「II-IV ラリックが生み出したデコのガラス」
「II-V 化粧道具、香水瓶、アクセサリー」
「II-VI 照明、置物、置時計」
「II-VII 文具」
「II-VIII テーブルウェア」
「II-IX カーマスコット」
「II-X 晩年」
ここでは、ラリックのガラスの作品が展示されています。
「II-II オパルセント」とは、オパールのような輝きを求めた乳白色のガラス」です。(ご存知の方が多いと思いますが、私はよく知らなかったので、ご参考まで)ラリックが好んで使っていたガラス素材とのこと。
それでは作品に。
常夜灯「日本のリンゴの木」1920年
ここでも日本をモチーフとしたデザインが採用されています。
香水瓶など、ガラスの装飾が彩り、全体が芸術作品となるようなデザインが多く残されています。
テーブルセンターピース「火の鳥」1922年
ガラス面いっぱいに広げられた羽、女性の体を持つ火の鳥。こういうの部屋に飾れるようになると良いのですが・・・
花瓶「オレンジ」1926年
瓶そのもので形はアール・デコ的でシンプルですが、オレンジというモチーフや、葉のうねるような感じはアール・ヌーヴォー的要素も残されていると感じます。
(3) さいごに
大量生産を嫌い自然に美しさを求めたアール・ヌーボー。再生産できるデザインの中に新しい美しさを模索したアール・デコ。
産業革命という時代の転換が、人々の生活に大きな影響を与え、その生活の中に根差す装飾に大きな影響を与え、芸術に大きな影響を与える。その転換期の中で、「大量生産と芸術」という一見、矛盾するような概念を、美しく融合し、具現化したのがラリックの作品ではないでしょうか。時代が生み出した芸術家のようにも思います。
丸の内では、アール・ヌーヴォー~アール・デコの源流となった「ラファエル前派の軌跡展」も開催されています。すこし、足をのばして、この展覧会で、19世紀後半から20世紀にかけての「デザイン革命」を感じてみるというのは、いかがでしょうか?
それでは、最後にリンクです。
箱根のルネ・ラリックの美術館です。
そこで開催されているサラ・ベルナール展
リンクの先のパンフの左上の冠が最初に書いた「ゆりの冠」です。
アール・ヌーヴォーの源流、ラファエル前派展についてです。
アート・アンド・クラフツ運動の先駆けウィリアム・モリスの壁紙展です。
2019/4/20~横浜総合美術館で。
以上です。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今日(2019/4/6(Sat))の小金井のお天気は晴れ。これからお出かけしてきます。
ということで、ではでは。
旧朝香宮邸のラリックの作品。「勝利の女神」