こんばんは。
6月の最後の日の夕方、雨が降り始める中、上井草にある「ちひろ美術館」に行ってきました。
現在、開催中の展覧会は、こちら。
「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」
オーストラリアの絵本作家さんの展覧会です。いわさきちひろさんの作品の展示もあります。
今回も、簡単ですが、ご紹介を。しばし、お付き合いください。
それでは、美術館へ。
※ 以下の記述は展覧会のパンフレット、作品説明、そのほかWeb上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真はパンフレット・購入した絵ハガキを撮りました。
※ 以下の記事は展覧会で読んだ絵本の感想も述べていますが、その中に絵本の内容にも触れていますので、あらかじめご了承の上、お読みください。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会:「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」
ショーン・タン(Shoun Tan)。私は初めて知りました。
1974年オーストラリア生まれの絵本作家、イラストレーター。「アライバル(The Arrival)」という絵本で有名だそうです。映画のコンセプト・アーティストとしても活躍しており、2011年には自身の作品を9年かけてアニメ化した「ロスト・シング(The Lost Thing)」でアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞しています。
下の展覧会のポスターの絵は「アライバル」からの一枚。「アライバル」をはじめとして展覧会場にはショーン・タンさんの絵本が何冊かおかれていて、原画やその習作と絵本とを一緒に楽しむことができます。
(2) 会場:ちひろ美術館館(上井草駅)
西武新宿線・上井草駅から7分ほど。荻窪駅から西武池袋線・石神井駅行きのバス(荻14)
に乗って上井草駅入口で下車して5分ほどのようです。美術館に駐車場も3台ほどありますが、細い路地に入ったところで分かりにくく、台数も少ないので、おススメではありません。私は、車で行き、美術館近くの他の駐車場に停めました。
※ こちらの美術館は今回初めて行きました。
世界初の絵本美術館で、いわさきちひろさんが最後の22年間を過ごされた自宅兼アトリエの跡が美術館になっています。絵本美術館の中にはいわさきちひろさんの書斎(アトリエ)も残されています。展示室を見て廻ると、個人のお宅を訪問しているような気になります。住宅街の中、緑に包まれた落ち着いた雰囲気のとても素敵な美術館でした。
(3) 会期・開館時間・展示替等
2019/5/11(土)~2019/7/28(月)
・開館時間は10:00~17:00。入館は30分前まで。
・月曜休館、ただし祝日の場合、開館し、翌日が閉館。7/22は開館。
・ナイトミュージアムはありません。
(4) 料金
・一般800円、高校生以下無料
(5) 訪問時間と混雑状況
・6/30(日)の16:00前に訪問しました。混んでいませんが、人は多かったです。カフェは一杯でした。展示室自体はあまり広くないので、これから混むかもしれません。
・1時間弱で見られますが、作品が多く、絵本もあるのでゆっくり1.5時間くらい見ておいても良いですね。「アライバル」と「セミ」をざっと見ましたが、もう少し、他の絵本もゆっくり見たかったなぁと思います
・鑑賞時間は50分くらいでした。
(6) 美術館メモ
・写真撮影は禁止です。
・ミュージアムショップがあり、いわさきちひろさんの作品をモチーフとした絵ハガキやグッズ等が販売されています。また、企画展のショーン・タンさんの作品や絵ハガキ(190円税抜き)もあります。今回は、ショーン・タンさんの絵ハガキを購入しました。
・館内にはカフェもあり、お子様向けの図書室等、結構、楽しむ場所があります。今度はカフェでゆっくりしたいです。(カフェは16:30まで。訪問時は、一杯でした)
(7) 行くきっかけ(情報源等)
「ほぼ日刊イトイ新聞」(ほぼ日)の糸井重里さんの日々のエッセイ「今日のダーリン」で、このショーン・タンさんの展覧会について書かれていたのを読んで、見に行こうと思いました。いわさきちひろさんの展覧会は昨年東京ステーションギャラリーでも見ていたので、一度は来てみたいと思っていた美術館でもあり、今回の展覧会を見に行きました。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
ショーン・タンさんの代表作「アライバル」は、絵本にしては、それなりにページ数もあるのですが、とにかく一つも言葉がありません。すべて「絵」だけで物語を紡いでいます。そして、全編白黒というかセピア色というか。主人公の家族が不思議な生き物と共生する不思議な町に移り住み、いろいろな出来事があり、信じられないような過酷な状況が起こり、そして次の新たな世代へ希望がつながれていく。そんな感じでしょうか。(言葉がないので、正しい"要約"になっていないかもしれませんが)とにかく、一本のサイレント映画を見たかのような錯覚を覚える作品です。そしてこの絵本の中には、いろいろな人や生物の動き、様々な町の音、人の声、豊かな色彩が溢れていることを感じられます。
このほかの作品もいわゆる絵本とは異なる独特の世界観が繰り広げられています。これまでの絵本の概念を静かに壊し、新たに構築する。"ショーン・タンの世界"が構築されるまでの過程、そしてその世界の一端を垣間見る、そんな展覧会だと思います
(パンフレット・表面)
(パンフレット・裏面)
それでは、会場の中へ。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
展覧会の構成は、4部屋の展示室があるなかで2部屋はいわさきちひろさんの作品の展示、もう2部屋でショーン・タンさんの作品が展示されています。
今回はショーン・タンさんの作品で、絵ハガキを購入したものを紹介します。
さきほどの「アライバル」から、家族の食卓のシーンです。白黒で、なんだかノスタルジックな雰囲気があるなか、不思議な生物が周りにいて、不思議な食べ物が食卓を飾る。なんとも不思議な世界です。
「ムーンフィッシュ」
きらきら光る街にきらきら光る「ムーンフィッシュ」
とても幻想的で、光あふれる世界です。背後の電線やアンテナのようなものが、少し前の時代の雰囲気を感じさせます。
「ドッグ」
原っぱににポツンとあるブラウン管のテレビに犬がたたずむ。私はこの犬を見て向かの「ビクター犬」を少し思い出しました。電源もさされていないのに、「砂」の画像が映っているようです。犬もさみしそうに遠くを見ているように思います。郷愁・不安・孤独・寂寥・・・と一言では言えない何かが混ざり合った世界のように感じます。
なお、展覧会では、期間中にショーン・タンさん本人が描いた作品が送られてきて、書斎を模したスペースに追加展示されていきます。今、この時点でショーン・タンの世界がどんどん広がっています。
(3) さいごに
7月の展覧会紹介でも書きましたが、展覧会で見た、もう一つの絵本「セミ(CICADA)」が、サラリーマンの心を打つ衝撃の内容でした。
人間界でスーツを着て会社で働くセミは人からは嘲られ、軽んじられ、虐げられ、それでも仕事を静かに最後までやり遂げ、最後、何も残るものはなかった。そして、会社のビルの屋上に向かったセミは・・・
途中、人がセミに対して行った行為のシーンが暴力的とも取れますが、是非、わたしのようなサラリーマン(それも経験年数の長い方)には見てもらい、感想を聞きたいな、と思いました。
(最後のシーンにはいろいろな意見が分かれそうではありますが)
ちなみに、この展覧会は9/21~10/14で美術館「えき」KYOTOにも巡回します。
この日は、この展覧会に来る前に板橋区立美術館のボローニャの絵本展にも行ってきて、いろいろな絵本の世界を見てきました。ひとことに「絵本」といっても、無限の世界があって、これからもさらに拡張し続けるんだろうなぁ、そんなことを思う一日でした。また、板橋の展覧会はご報告したいと思います。
それでは、最後にリンクです。
ショーン・タンさんの作品です。
簡単な内容でしたが、以上です。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ではまた。