こんばんは。
先日、飲みながらチョッと触れた展覧会はこちら。
2019年の一発目に行った美術展の鑑賞報告です。
「フィリップス・コレクション展」
昨年から、行こう行こうと思いつつ、上野界隈の展覧会に行くのが忙しく、なかなか行けなかったのですが、今年に入ってようやく行ってきました。上野は巨匠たちの個展的性格が強いですが、こちら東京丸の内は、世界有数のコレクターが作り上げたコレクション展です。
それでは早速、内容をご紹介。相変わらず、まとまりはないですが、しばし、お付き合いください。
※ 以下の記述はフィリップス・コレクション展の作品説明、図録、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真などは図録を撮りました。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会:フィリップス・コレクション展
今回の展覧会のある意味"アーティスト"は、コレクターのダンカン・フィリップスです。
ダンカン・フィリップスは1886年アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグに生まれます。(~1966年)
母方の祖父はアメリカ・ペンシルベニア州の鉄鋼王で、裕福な家庭に育ちます。1910年には両親、兄、いとこと初めての海外旅行で日本にも来ています。
1917年に父、1918年に兄を亡くし、母とともに二人を記念してワシントンの家の敷地内にフィリップス・メモリアル・アート・ギャラリーの創設を決意し、1921年に開館。これが、アメリカ初の近代美術館となります。フィリップスはコレクション形成の過程で画家である妻マージョリーの助言を得ていたそうです。なお、本人は、MoMA設立時の理事に選ばれ、ワシントン・ナショナル・ギャラリー・オブ・アート開館時の理事にも選ばれています・
美術館のコレクションはフィリップスの死後も拡大し、現在では4,000点を超えるコレクションに成長。今回の展覧会では、この中から珠玉の75点が来日です。
(2) 会場:三菱一号館美術館(東京・丸の内)
JR東京駅丸の内側に出てから5分くらいでしょうか。KITTE(郵便局)を抜けても行けますし、京葉線の東京駅の出口からも近いです。1894年のコンドル設計「三菱一号館」を復元して美術館にしており、内装も当時の建築物の雰囲気をそのまま残していて、部屋の中で美術品が飾られているような感じで作品を鑑賞できます。企画展も、なかなか力が入っていて、好きな美術館の一つです。
(3) 会期・開館時間・展示替等
2018/10/17(水)~2019/2/11(月・祝)
・月曜休館ですが、これを書いている1/25(金)以降は無休のようです。(チラシミュージアム調べ)
・開館時間は10:00~18:00。入館は30分前まで。
これからですと今日1/25(金)、2/1(金)、そして最終週2/4(月)~2/8(金)は21:00までのナイトミュージアムです。これは、見逃せません。
・展示替えはありません。
(4) 料金
・大人1,700円、大学・高校生1,300円、小・中学生500円
・東京駅で「東京駅美術館MAP」を探して持っていくと100円引きです。(今回は、私は持ってなくて使わなかった・・・残念)
(5) 訪問時間と混雑状況
1/6(日) 15:00過ぎ、鑑賞時間は約70分。
・チケット購入では並びませんでした。
・人は多かったです。三菱一号館美術館は最初の部屋が、普通の住居スペースのようになっているため、比較的狭いので、特に混んでる感じがします。だんだん、スペースが広くなるので、途中は、そこまで混んでる感じはなく、ゆっくり見られました。
・これから、会期末に向かって、かなり混むことが予想されます。特に、この前の日曜日(1/20)にEテレ日曜美術館の「アートシーン」(展覧会を紹介するコーナー)で紹介されていましたので、この先は、かなり混みそう。混雑状況を確認して行かれた方が良いかと思います。(ナイトミュージアムの方がゆっくり見られるかも。あくまで予想ですが)
(6) 美術館メモ
・写真撮影はNGです。
・展覧会会場で作品のカードが配られていました。(8作品がカードになっていて、解説付きです)
・ミュージアムショップでは、図録2,500円。絵ハガキは、展示された作品のほとんどを網羅したセットが販売されています。もし、展覧会を気に入れば、そちらを購入した方が良いかもしれません。私は、図録と、絵ハガキを3枚購入。
(7) 行くきっかけ(情報源等)
本展はチラシミュージアムを見て、行くことにしました。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
本展は、コレクター・フィリップスのコレクションを構築する過程を追った展示がなされています。フィリップスの言葉もふんだんに紹介されていて、フィリップスの作品評やフィリップスが作品を購入するまでの考え等が紹介されています。ある作品を手に入れるため、ある作品を手放すなど、その時々で作品を取捨選択しながらコレクションを構成しているのが、チョッと驚きでした。私なら、一度、手に入れたものは手放せないかも・・・そういう点では、このフィリップス・コレクションは「新陳代謝」を経て、今なお成長し続ける、生きたコレクションだと言えると思います。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
会場の展示は、こんな感じです。三菱一号館美術館は1Fでチケットを買うとエレベータで3階まで上がり、3階から2階へと続く展示を見て回ります。
それでは、気になった作品をご紹介。
1 展示順
展示順は次のとおりです。
[3階展示室]
1. 1910年代後半から1920年代
2. 1928年の蒐集
3. 1930年代
4. 1940年前後の蒐集
[2階展示室]
5. 第二次世界大戦後①②
6. ドライヤー・コレクションの受け入れと晩年の蒐集
7. ダンカン・フィリップスの遺志
2 気になった絵
フィリップスにとって、芸術とは・・・
「芸術の大きな恵みは、二つの感情を促してくれることだ。それは肯定する気持ちと、逃避する気持ち。どちらの感情も私たちを自己の限界から解き放してくれる・・・。
私が極めて苦しい状況に陥ったときふと、私は再びめぐり来る人生の喜びを忘れずにいることと、私には芸術家の夢の世界へ逃避したい気持ちがあることとを、表現できるような何かを生み出そうと思いついた。私は絵画のコレクションを作ろうと思った。芸術家がモニュメントや装飾を作るときと同じように、全体像をイメージしながらひとつひとつのブロックを正しい位置に積んでいくようにして。」(図録より)
コレクション=彼の作品なのです。特にフィリップスは表現的で色彩豊かな絵画を好んだとのこと。
その中で、私が気になったのは・・・
(全部紹介と言いたいですが、できないので、いくつかをピックアップ。ちなみに今回は展示順とも違い、思いつくまま載せています)
① ギュスターヴ・クールベ「地中海」(1857年)
最初に強い色彩を感じた作品。写真ではわかりにくいですが、海の強烈な青が塊として迫ってくるような、色彩の迫力を生の絵からは感じました。
② エドゥアール・マネ「スペイン舞踏」(1862年)
なんとなく、おもちゃのお人形さんが踊っているような印象で、かわいらしく感じました。表情に感情があるのか、ないのか、チョッと不思議な感じもします。マネは1850年代から60年代にかけてスペインの芸術文化に魅了されていて、この絵もその影響がある絵とのことです。
③アルフレド・シスレー「ルーヴシエンヌの雪」(1874年)
印象派の中ではシスレー、私は大好きです。フィリップスは「冬の抒情詩」と言っていますが、まさに、そんな感じです。
④ベルト・モリゾ「二人の少女」(1894年)
モリゾは印象派の女性画家で、印象派の画家集団創立時の唯一の女性だったそうです。フィリップスはとりわけ色彩の画家として評価していたようです。淡く優しいふんわりとした色彩の絵が好きです。
⑤ピエール・ボナール「犬を抱く女」(1922年)
モデルは、26歳で出会ってから58歳で結婚するまで本名も歳も知らなかったというパートナー、"あの"マルトです。フィリップスはボナールを高く評価し、この絵はアメリカで初めて美術館に収蔵された作品であり、1930年にアメリカで初めてのボナール展を開催しています。この絵の赤と青の対比。まさに色彩の魔術師。女性の微妙な表情も何とも言えません。本展ではボナール作品は4点展示されています。どの絵も秀逸!
⑥オスカー・ココシュカ「ロッテ・フランツォスの肖像」(1909年)
モデルのロッテ・フランツォスは有名な法律家で、画家ココシュカに、この絵の依頼をしますが、ココシュカは彼女に強い憧れがあり、好きだったよう。細く、若干神経質にも見える線やポーズ、彼女を取り巻く色彩の空気が彼女とココシュカのいろいろな心の綾を表しているような、見ていて印象に残る絵でした。
ココシュカはあの作曲家・マーラーの妻とも恋仲になり、後に分かれるなど、いろいろな逸話がある画家のようです。(Wikipedia調べ)
⑦ジョルジュ・ブラック「鳥」(1956年)
本展では、ジョルジュ・ブラックも多数取り上げられています。本作は、ジョルジュ・ブラックが手掛けたアクセサリーのデザインにも取り入れられていると思います。フィリップスはブラックが好きだったようです。
このほか、モネ、ドガ、ゴッホ、セザンヌ、ピカソ、ユトリロ、ルソー、ドーミエ、ゴヤ、アングル、ドラクロワ・・・絵もあれば彫刻もと、もう、挙げたらきりがないので、この辺で止めておきます。(紹介した絵はちょっと偏りがあるかもしれませんが、その点はお許しを)
なお、作品紹介は本展のサイトでかなり詳細な情報が載っています。
最初にリンクを掲載しましたが、もう一度、こちらに↓
これ見ているだけでも、かなりの絵を見られますが、やはり生で見るのがお薦めです。
でも、展覧会に行くのが難しい方は是非こちらのサイトを。かなりお薦めです。
(3) 最後に
フィリップスは、ただ過去の画家の絵画を集めるだけではなく、同時代の画家の絵も集め、広めています。その意味でも、美術に対する造詣が深く、確かな審美眼を持った稀代のコレクターと言えると思います。(偉そうに書いて、すみません^^;)
集めている作品は、「この画家に、この作品かぁ」等と、勝手に感心しながら見ていました。(パンフのポール・ゴーガンの「ハム」(1889年)など、ゴーガンでこれを選ぶかぁ、という感じで見てました。まぁ、フィリップスはゴーガンのタヒチの絵等への評価は保留していたみたいですが)
最後に、フィリップスの言葉(図録より)
「絵画は私たちが日常生活に戻ったり他の芸術に触れたりしたときに、周囲のあらゆるものに美を見出すことができるような力を与えてくれる。このようにして知覚を敏感にするように鍛えることは決して無駄ではない。私はこの生涯を通じて、人々がものを美しく見ることができるようになるために、画家たちの言葉を人々に通訳し、私なりにできる奉仕を少しずつしてきたのだ・・・」
アメリカのフィリップスの美術館、いつか行ってみたい。
本展でも取り上げられているボナール作品の展覧会についてはこちら。
ジョルジュ・ブラックのアクセサリーのデザイン展に行ったときのことはこちら。
そして、帰り。東京駅は駅前も整備され、きれいでした。
以上です。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今週もあと一日。仕事を終えたら、フィリップス・コレクション!となればうれしいです。(私はお酒の誘惑に負けそう)
ということで、ではでは。
(注:これは写真撮影エリアのレプリカです)