よろこんで!**してみました。

アラフィフ男子が、何気ない日常生活で楽しいと思うことを、つれづれに書く雑記ブログ。美術・落語・スポーツ観戦・グルメ・お酒に旅行等々。たまには、なにか語ることもあるかも・・・

美術展:「生誕110年 東山魁夷」@国立新美術館に行ってきました。(2018/11/16)

こんばんは。久しぶりな感じの美術展ネタです。

11/16(金)の夜、また、会社帰りにナイトミュージアム国立新美術館に行ってきましたので、ご報告です。ピエール・ボナールではない方の注目の展覧会です。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1)展覧会名称

「生誕110年 東山魁夷」展

生誕110年 東山魁夷展|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

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東山魁夷(1908(明治41)年-1999(平成11)年)は、いわずと知れた「国民的風景画家」「国民的画家」です。横浜生まれ、少年時代は神戸で過ごします。東京美術学校卒、1933(昭和8)年にドイツ留学をしています。日本・ヨーロッパ・中国と数限りない写生の旅を繰り返し、静謐な画風で数々の風景画の名作を生み出しています。今回の展覧会では、東山の日本の風景画だけにとどまらず、海外(北欧、ドイツ等)を描いた作品も展示されています。さらに古き良き京都を残すための数々のスケッチ、そして、今回の目玉である唐招提寺御影堂障壁画の完全再現と、是非とも東山魁夷ファンならずとも一見の価値あり!というか、一度、生で体験していただきたい展覧会だと思います。

(今回も、説明は美術館での解説・パンフ・図録・テレビ東京美の巨人たち」で見た情報等を基に記述します)

 

(2) 場所

国立新美術館

国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

 

※ 千代田線・乃木坂駅から直結していますし、六本木駅からも歩いて5・6分です。今回は会社帰りで閉館まで時間がなかったので、美術館に直結の乃木坂駅から急いで行きました。乃木坂駅6番出口(明治神宮前駅進行方向の場合、先頭車両が近いです)から、そのまま美術館に上がっていけます。

 

(3) 会期

2018/10/24(水)~12/3(月) ※ 火曜日休館

気がつけば、会期末まであまり期間がなくなっていました。

 

(4) 開館時間

10:00〜18:00

※ 金曜、土曜は20:00までのナイトミュージアムです。入館は30分前まで。なお、3Fにレストランがありますが、こちらは22:00までやっているようです。(これは、初めて知りました)

 

(5) 訪問時間

11/16(金) 18:25頃 鑑賞時間は約90分でした。展示は障壁画含め約70点です。


(6) 料金

大人1,600円、大学生1,200円、高校生800円、中学生以下無料

※ 私は、国立新美術館で先日行きましたピエール・ボナール展との前売セット券を買っていたので1,100円(セットで2,200円)でした。


(7) 混雑状況

混んでました。ナイトミュージアムかつ国立新美術館は比較的ゆったりとしたスペースで展示されているのですが、それでも、大勢の人がいたという印象です。なお、チケット売り場は混雑していなかったです。入場待ちはありませんでした。

確実に会期末に向けて混みますし、もしかしたら、入場待ちも発生する(もう、休日の昼間などはしている?)かもしれませんので、早めに行かれることをお勧めします。なお、唐招提寺御影堂障壁画の展示は、広くスペースが取られているので、行ったときはまだゆっくり見られました。


(8) 写真撮影

NGです。


(9) ミュージアムショップ

今回、図録2,000円、絵ハガキ120円×3枚購入です。大判絵ハガキは一枚150円です。

クレジットカード利用OKです。(図録は安いと思います)

ナイトミュージアムで終了時間近くまでいたので、レジまではすごく並んでいました。(それでもレジは多いので、10分強くらいの時間で買えました)

 

(10) 美術館メモ

本展の展示会場は2階です。ちなみに1階ではピエール・ボナール展を開催中です。


(11) 行くきっかけ

「日経大人のOFF 2018年1月号」で紹介されていて、見に行くことは決めていました。テレビ東京美の巨人たち」で唐招提寺御影堂障壁画を取り上げたりしていたので、見に行くまでに期待が、ますます高まりました。

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

 私の勝手な印象ですが、横山大観東山魁夷は、日本人がとても好きな画家だと思います。横山大観は壮大な風景画にデフォルメ・デザイン化された風景画に人物画に水墨画といろいろな絵がありますが、東山魁夷の絵画はとにかく風景に焦点が当てられています。風景のある一点を中心に据えてスポットライトを当てる構図等、装飾性を帯びつつも、ありのままの自然を感じさせ、見る人を引き付ける、そんな絵画だと思います。また、東山魁夷独特の繊細な色づかいで、静かながら勇壮な自然の厳しさ、やさしさを描き切る、それが私たちの心に響くというのが魅力だと思います。

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 パンフレットです。代表作の「道」(昭和25(1950)年)です。

(2) 展覧会の構成と気になる作品

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1. 国民的風景画家

東京美術学校卒業、ドイツ留学と画家への道を歩み始めた東山ですが、太平洋戦争で本人は招集、終戦前後で父母、弟と家族を亡くし、空襲で家は焼け、身寄りは妻・すみ一人、画家の人生ではどん底の時代を過ごします。このとき、「平凡な風景」が生命に満ち美しいことを感じ、活力を得ます。東山魁夷は「描くことは祈ること」と言っていますが、この時代を経験したことが、その後の画家の創作活動に多大な影響を与えたと感じました。

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「残照」(1947(昭和22)年)

 

2. 北欧を描く

第3回日展に出品した「残照」(前掲)が特選・政府買上となり、その後、人気画家への道を歩む、東山ですが、そこにとどまることなく、新たな絵画を求め北欧へと向かいます。北欧の風景を目の前にして、制作を続ける中で、東山独特の「東山ブルー」も確立されていきます。

 

3. 古都を描く・京都

川端康成から急速に失われつつある京都のかつての姿を描き止めるように勧めらます。東山も少年時代を神戸で過ごしており、京都はたびたび訪れた町であること、また、北欧からの帰国後、皇室から依頼を受けた新宮殿の大壁画制作のため、日本的なものの表現のためには京都を避けて通ることができないと考え、京都を描くことになります。ここでは大画面の絵とともに「京都四季習作」(1964(昭和39)年-1965(昭和40)年)、「京洛四季スケッチ」(1964(昭和39)年-1966(昭和41)年)のような比較的小ぶりの作品も多数展示されています。

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「花明り」(1968(昭和43)年)

 

4. 古都を描く・ドイツ、オーストリア

京都を描き好評を得た画家は、今度はヨーロッパの古都を描きます。東山は先述のとおりドイツに留学をしており、ここで描かれた風景も東山にとっては京都と同様に懐かしい町の風景です。私は東山というと、すぐに日本の風景画が頭に浮かぶのですが、先程の北欧、そしてドイツ・オーストリアとヨーロッパを訪問し、多くの絵を制作しており、それを今回鑑賞できたのは貴重だったと思います。

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「晩鐘」(1971(昭和46)年)

 

5. 唐招提寺御影堂障壁画 間奏 白い馬の見える風景画

いよいよ唐招提寺障壁画に向かいますが、その前に、これも東山の絵として有名な白馬の絵が続きます。

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「緑響く」(1982(昭和52)年) なお、この絵はパリの展覧会時に紛失し、画家が再制作したものとこと。

 

「白い馬が出現したのは、心の平安を願う祈りであり、祈らねばならぬ心の状態であった」という言葉を残していますが、この白い馬のシリーズの後、唐招提寺御影堂障壁画という画家としての大事業に取り組むことになります。

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唐招提寺御影堂障壁画です。(実際のお堂内の写真)

 

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「濤波」(第一期制作。1975(昭和50)年。画家が鑑真和上が来日した日本海側を東北から山口まで歩いてスケッチを重ね作成したものです。


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黄山雨過」(第二期制作。1978(昭和53)年) 画家70歳の作品。初めての水墨画。制作にあたり三度の中国訪問を経て、中国の風景を描くには水墨画であると感じとり作成した作品。唐招提寺の鑑真像を取り囲む側の障壁画は水墨の中国の風景で、その外側は「濤声」のように日本の風景になっています。東山が鑑真に中国の風景を見せるために描いたものです。

 

6. 心を映す風景画

唐招提寺御影堂障壁画を完成させる中で、描くことは祈りであり、どれだけ心を籠められるか、上手い下手はどうでも良い、という境地に達します。東山は自分には才能がないというい思いがあったようですが、いよいよこの思いから解放され、自分が描くことの意味を見出します。そして、その生涯を終えるまで描き続けてゆきます。

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「行く秋」(1990(平成2)年 私が今年見た紅葉で一番美しい紅葉かも。

 

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「木枯らし舞う」(1997(平成9)年) このような動きのある風景画も描いています。描くことを続けることでますます自由になっているような感じがします。なお、「行く秋」とこの絵はドイツの光景を基に制作されているとのことです。

 

(3) 最後に

東山魁夷の絵は竹橋の国立近代美術館でも多数展示されており、また、私の好きなテレビ東京の「美の巨人たち」でも、比較的よく扱われている印象なので、個人的には結構見ている方だと思っていました。でも、他の個展同様、時代を追って、多くの作品に触れることで、少しは画家のことをこれまで理解できたのではないかと思います。

静謐な画風ながら画家の絵画への情熱に圧倒されます。そして画家の誠実な「祈り」を感じられる、展覧会です。是非会場に行ってみてください。

 

展覧会の帰り道、東京ミッドタウンでは、もうクリスマスのイルミネーションが始まっていました。だんだん今年も終わりが近くなりますねぇ。

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最後に、まだまだ開催しているもう一つの目玉展覧会をご紹介。

yorocon.hatenablog.com

長くなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

ではでは。