こんばんは。
展覧会の鑑賞報告です。
年の初めから江戸絵画の巨匠の展覧会が続きます。こちらも江戸末期〜明治に活躍した巨匠です。
「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」
「その手に描けぬものなし」展覧会タイトルの通り、技巧に長け、奇想的で、すべてのものを絵にしてしまう。まさに、もう一つのミラクルワールドなのです。お雇い外国人を通じて海外にもその美が知れ渡った絵師・暁斎の画業に迫る展覧会です。
見に行ってから、三週間になってしまいましたが、めげずに記事にしたいと思います。相変わらず、まとまりはないですが、しばし、お付き合いください。
それでは、御一緒に展覧会場へ・・・
※ 以下の記述は河鍋暁斎展の作品説明、図録、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真などは図録を撮りました。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会:河鍋暁斎 その手に描けぬものなし
河鍋暁斎(かわなべきょうさい)は1831年(天保2)5月18日、現在の茨城県古河市に生まれですが、2歳のときには江戸に移り、1889年(明治22)、59年の生涯を閉じるまで絵の道にその身を投じます。1837年(天保8)、7歳のときには浮世絵師・歌川国芳の画塾に入門。1839年(天保10)、9歳の時、増水した神田川で生首を拾い写生し、周囲を驚愕させるという伝説をつくります。1840年(天保11)、10歳のときには、今度は駿河台狩野派・前村洞和に入門。洞和は暁斎の画才を愛し「画鬼」と称したとのこと。浮世絵だけではなく江戸絵画の本流・狩野派を学び、その才能を開花させたことも暁斎の重要な一面だとこの展覧会は伝えます。さらに暁斎は、古典絵画からも多くを学び取る「努力の人」であったことが分かります。
1858年(安政5)、28歳の時、狂画(=滑稽な絵、ふざけて描いた絵)を書き始めたことから「狂斎(きょうさい)」を名乗りますが、1870年(明治3)の書画会で描いた絵が新政府役人を嘲弄したとして捕まります。翌年に放免されますが、このとき画号を「狂斎」から「暁斎(きょうさい)」に改めます。(なので、読みが「ぎょうさい」ではなく「きょうさい」のようです)
また、万国博覧会に出展、お雇い外国人で鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルが弟子入りするなど、国際的にも認められた画家という一面もあります。
天才、奇想、そして努力の人。捕まったことから「反骨の画家」と思われがちな暁斎ですが、それだけにとどまらない様々な側面に触れられる展覧会です。
(2) 会場:サントリー美術館(六本木)
※ 六本木駅からすぐの東京ミッドタウンのガレリア3階にあります。ミッドタウンは国立新美術館からも近いですし、六本木もすぐですし、展覧会ついでにミッドタウンの中を周るのも良し、周辺を散策するのも良し、結構好きな場所です。
(3) 会期・開館時間・展示替等
2019/2/6(水)~3/31(日)
・火曜休館ですが、これから(2019/3/16時点)だと3/19(火)のみ閉館です。
・開館時間は10:00~18:00。入館は30分前まで。金曜、土曜、春分の日前日の3/20(水)は20:00までのナイトミュージアムです。
・展示替えはちょこちょこありますが大きな展示替えは3/4(月)までと3/6(水)からの展示の変更でした。3/16(日)以降では展示替えはなさそうです。(サントリー美術館さんは広さの関係もあるのか、展示替えが結構多いと個人的には思います。展示作品はWebからご確認ください)
(4) 料金
・大人1,300円、大学・高校生1,000円
私は前売1,100円で購入。なお、今だとWebでのクーポンによる100円割引があります。
(5) 訪問時間と混雑状況
2/23(土) 16:30頃 鑑賞時間は約90分。
・この時は混雑はしていませんでした。
・混んでいる場合、サントリー美術館のツイッターで確認できるかも。
(6) 美術館メモ
・写真撮影はNGです。
・ミュージアムショップでは、図録2,500円。絵ハガキやクリアファイルもあります。
・カフェがあります。
(7) 行くきっかけ(情報源等)
こちらはチラシミュージアムが最初の情報源でした。暁斎は2017年にBunkamuraでも展覧会があり、以前から、よく見に行く画家でもありましたので、早々に見に行くことを決めました。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
暁斎というと、まず「上手い!」というのが第一印象です。均整がとれ、動きも滑らか、色も鮮やか、確かな技術、まさに天才という感じです。そして、「奇想!」。画題はかなり個性的、独特の世界観、ちょっとふざけていて、怪しくもある。さらに「妖艶!」。美しく、繊細、妖しくもある。今回の展覧会でも暁斎の絵の美しさ、面白さ、怪しさ、妖しさが溢れています。
なお、途中、生首や、死体の変化を描く九相図、処刑場で男女が処刑された姿を刺繍した羽織など、かなり過激な表現の作品もあります。ちょっと見るのをためらわれる方はご注意ください。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
会場の展示は、こんな感じです。
それでは、気になる作品へ。
第1章 暁斎、ここにあり
水墨画から鮮やかな色彩の絵まで、さまざまな技法を駆使して作品を残した暁斎。ここでは、暁斎の画業の代表作から、暁斎の傑出した画力を堪能します。
「枯木寒鴉図」1881年(明治14)
第二回内国勧業博覧会で絵画の最高賞を獲得した作品。暁斎の画力を世に知らしめた逸品です。
「観世音菩薩像」1879年(明治12)~1889年(明治22)
美しく繊細な観音様の衣装、透けた衣の表現。美しくも、どこか艶めかしく、また神々しくもある作品です。
第2章 狩野派絵師として
狩野派絵師としての力強い筆。狩野派としても才能を発揮した暁斎の作品が並ぶエリアです。
「鬼の碁打ち図」1764年(明和元) ※ 重要文化財
囲碁に興じる鬼を岩の上から狙う鍾馗。画題はかなりユニークですが、勢いのある筆で描かれた岩肌や力強い鍾馗の衣服など、狩野派らしさのある一枚です。
第3章 古画に学ぶ
ここでは暁斎が模写などを通じて古画に学び、さらに暁斎ならではの個性をつけたした作品が並びます。放屁合戦絵巻といった放屁を競う(?!)人々を描くような変わった絵もあります。九相図は屋外に打ち捨てられた死体が朽ちていく様を九段階に分けて描く仏教画を模した作品です。(けっこうグロい)
その中で・・・
「蛙の人力車と郵便夫」
鳥獣戯画の蛙を題材にし、明治期に生まれた人力車や郵便といった時代を取り入れた作品です。古典に学びつつも、独自の個性を発揮する暁斎らしい作品です。
第4章 戯れを描く、戯れに描く
世の戯れを描く遊宴図や遊び心満載の戯画。「暁斎と言えば」という一面が表れた作品たちです。戯画については最初の師匠の歌川国芳の影響と言われていたところ、近年では狩野派も戯画を描いており、狩野派の影響が強かったのではないかとも言われているようです。暁斎と狩野派の関係から見直してみるのも、おもしろそうです。
「鷹に追われる風神図」1886年(明治19)
勇ましい鷹に追われ、慌てふためき逃げる風神。スピード感万歳ながら、ユニークで風神の姿にフッと笑ってしまいそうな絵です。
「吉原遊宴図」1879年(明治12)~1889年(明治22年)
吉原で繰り広げられる華やかな浮世の世界が描かれています。暁斎の描く女性はみな美しいですが、その中でおどけているオジさんたちは滑稽で今も昔も変わらずでしょうか。ついたての達磨が見て見ぬふりをしながらも口を押えているような感じがします。
第5章 聖俗/美醜の境界線
聖俗、美醜をあわせもつ、私にとっての「暁斎ワールド」全開の作品群が並びます。(このエリアに先程の処刑場を描いた羽織もあります)
「地獄太夫と一休」
暁斎と言えば真っ先にこの絵が頭に浮かびます。この展覧会もこの絵を見るために来た、というところがあります。地獄太夫は室町時代にあの一休さんと深い関係にあった遊女です。妖艶な地獄太夫に、そのわきで踊る破戒僧・一休。そして地獄太夫からは骸骨に見えたと言われる一休の周りの芸妓たち。地獄太夫の着物は業火に見えて実は珊瑚というところも暁斎のこの絵へのこだわりが見えて、印象的な作品です。
「閻魔大王浄玻璃鏡図」1887年(明治20)
死者の生前の行いを映すという浄玻璃の鏡。そこに映し出される美女の姿。閻魔大王も獄卒も裁きを待つもう一人の死者も、誰もが一様に驚きの(呆れた?)表情を見せる。鏡に映る死者の今はどんな顔なんでしょう。そしてその人生は・・・
滑稽ながらも、いろいろな想像を駆り立たせるザ・暁斎ワールドといった作品です。
第6章 珠玉の名品
ここでは暁斎の小品が多数展示されています。作品は掲載しませんが、いずれも暁斎の美しくも一種独特な世界が展開しています。
第7章 暁斎をめぐるネットワーク
最後のエリアですが、暁斎はジョサイア・コンドルをはじめとして国内外に幅広いつながりを持った画家だったようです。このエリアでは、暁斎とかかわりの深い人・場所にちなんだ作品がならびます。
「河竹黙阿弥作『漂流奇譚西洋劇』パリス劇場表掛かりの場」1879年(明治12)
西洋化を目指す演劇の世界を描いた作品です。興行的にはこの芝居は大コケしたとか。
(3) 最後に
暁斎の絵というと個人的には「第5章 聖俗/美醜の境界線」の絵が、どうしても印象に残ります。ただ、古画に多くを学んでいたこと、狩野派の影響がかなり強いこと等はこの展覧会を通して、新たに知りました。これまでとは違った暁斎の絵の見方が増えたように思います。そして、暁斎は絵にその身を捧げた正に「画鬼」であったということをあらためて認識しました。グロテスクな作品もあるのは確かですが、それもまた暁斎の一面です。残す会期は短いですが、興味がありましたら、是非、見てみてください。
それでは最後に関連リンクです。
今、まだ見られる江戸絵画つながりです。
そして、明治時代の「最後の浮世絵師」の一人。
今日(3/16)から開催、江戸絵画まつり。
以上、今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
全然関係ないですが、この展覧会を見に行くまでは、ここに行ってました。
そして、今日(3/16)も第2戦 レッズ(オーストラリア)戦、見てきます!勝てばいいなぁ。
ということで、ではでは。