こんばんは。12月に入って、時の経つのが、いっそう早まった気になります。
年末はいつでも気忙しいですよね。そんな時だからこそ、北欧の魅惑的な暮らしを、チョッと覗いてみませんか?
ということで、またまた、観に行ってからだいぶ時間が経ちましたが、11月の三連休の土曜日に行った美術展のご紹介です。
[目次]
- I.展覧会概要
- II. 展覧会所感
- (1) 個人的な所感
- (2) 展覧会の構成と気になる作品
- 第I部 カール・ラーション(1853-1919)の画業 : Section I Carl Larsson's Artistic Journey
- 第1章 絵画・前期 / Chapter 1, Paintings : The Early Years
- 第1章 絵画・後期 / Chapter 1, Paintings : The Later Years
- 第2章 挿絵の仕事 / Chapter 2, Illustration
- 第3章 版画 ~ 家族の肖像 / Chapter 3, Printing : Family Portraits
- 第4章 ラーションとジャポニズム / Chapter 4, Larsson and Japonism
- 第II部 ラーション家の暮らしとリッラ・ヒュットネース / Section II The Life of the Larsson Family, and Lilla Hyttnas
- (3) 最後に
I.展覧会概要
(1)展覧会名称
「日本・スウェーデン外交関係樹立150周年記念 カール・ラーション」展
スウェーデンの生活を感じられる展覧会です。日常の暮らし、それもアートです。
※ カール・ラーションはスウェーデンの国民的人気画家です。1953年、スウェーデンの首都・ストックホルムの貧しい地区に生まれます。通っていた学校の教師に絵の才能を認められ、王立美術学校に進みます。その後、フランスに留学しますが、最初は静物などの素描に始まるサロンのアカデミックな教育になじめず、サロンからの評価も低く、落胆の日々を送ります。
1882年29才のときにフランスのグレー=シュル=ロワン村に移り住みます。美しい光に包まれたその村の景色に触れ、明るい色彩を身につけ、軽やかな水彩画を描くようになります。この水彩画により、サロンでも高評価を得ます。(このグレー=シュル=ロワン村には日本のあの黒田清輝も滞在していたとのことです)
この村で妻となるカーリンとも婚約します。この結婚から、ラーションにとっては家族が大事なテーマの一つとなっていきます。
やがて、スウェーデンの伝統が残るダーラナ地方に後々「リラ・ヒュットネース」(岬の小さな精錬小屋)と呼ばれる家を入手。妻のカーリンとともに理想の家に改装していきます。1919年65歳でその生涯を閉じるまで、妻・カーリン、家族、そして家と生活そのものをアート作品として発信し続けていきます。
※ 今回もパンフレット、作品目録、美術館内での説明、Webの情報等を参考に記述しています。
(2) 場所
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 @ 新宿西口
※ いつも通り、新宿西口のエルプラザビルを抜けた出口から、美術館に。相変わらず、出口の階段は少しきついですが、出口からすぐ美術館です。新宿駅のJR西口の改札から歩いて10分弱くらいでしょうか。ほぼ地下道を通っていくことができます。
(3) 会期
2018/9/22(土)~12/24(月・祝)
※ 月曜日休館ですが、12/24クリスマスイブは祝日なので開館です。
(4) 開館時間
10:00〜18:00
※ ナイトミュージアムはありません。入館は17:30まで。
(5) 訪問時間
2018/11/24(土) 15:30頃 鑑賞時間は80分程度でした。(ゆっくり見ましたが、60分くらいでも十分まわれます)
(6) 料金
大人1,300円、大高生900円、65歳以上1,100円、中学生以下無料
※ 今回は当日券を買いました。カードの利用も可能です。
(7) 混雑状況
それなりにお客さんがいたと思いますが、混んでいません。ゆっくり見ることができます。
(8) 写真撮影
展示会場はNGですが、出口直前であのイケアさんがカール・ラーションの家の居間をイメージしたコーナーがあり、ここだけは撮影可能です。
(9) ミュージアムショップ
今回は、絵ハガキを3枚購入です。1枚120円です。図録は2,160円でした。ともに税込みです。クレジットカード利用もOKでした。絵ハガキはちょっと種類が少なかったかなぁ・・・
(10) 美術館メモ
こちらは、損保ジャパン日本興亜本社ビルの42階ですので、あいかわらず窓からの眺望がよかったです。新宿御苑が紅葉できれいでした。
(11) 行くきっかけ
前回の「巨匠たちのクレパス画」展を見たとき、次回の展覧会情報として紹介されていたので、その時から行くことにしていました。絵の感じが優しくて好きな絵だったのと、スウェーデンの生活にスポットが当たっていることが面白そうだったからです。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
カール・ラーションは優しいタッチの明るい絵を描く画家というイメージです。家などを改装し、アンティークの家具などを集め、その生活スタイルをもアート作品として提供する当時にはないタイプの芸術家であると思います。
同じ芸術家であったカーリンと結婚しますが、結婚と同時にカーリンは筆を置きます。(ラーションが良い顔をしなかったよう・・・)
それでも、カーリン自身は普段着やテーブルクロス・クッションカバーなどのテキスタイル(織物)のデザイン等を通じてその芸術性を発揮し、二人で「暮らし」という芸術作品を構築していったのだと思います。
絵画などの作品だけでなく、家・家具・洋服からクッションカバーまで、北欧の生活を総合したものが「作品」として展示されている。そんな展覧会です。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
第I部 カール・ラーション(1853-1919)の画業 : Section I Carl Larsson's Artistic Journey
最初エリアでは、ラーションが使用していた絵筆や帽子、椅子などの展示とラーションの描いた挿絵と妻・カーリン作成のクッションや普段着が展示されています。
第1章 絵画・前期 / Chapter 1, Paintings : The Early Years
ここでは、初期のフランスのアカデミックな教育を受けていたころから、グレー=シュル=ロワン村時代以降の獲得した軽やかな水彩画が並びます。
カーリンとその家族を優しく描いた作品もあります。
「夕べの灯のまわりで」(1900年。水彩) ※ 購入した絵ハガキより
にぎやかなテーブルの上、明かりを取り巻く家族の様子が、ラーションの家族への愛情を感じさせます。奥の男の子のぼやけながらも優しく笑う顔、右の女の子の、ちょっとこちらを睨んでいるような顔等が、家族の日常的な一風景として伝わってきます。
第1章 絵画・後期 / Chapter 1, Paintings : The Later Years
先程のエリアに続き、ラーションが描いた家族の絵等が展示されています。
ラーションは先程の「夕べの灯のまわりで」の絵等でもうかがえるように、明確な輪郭線と平坦な彩色のスタイルの作品を制作します。これは、ラーションがフランス時代に出会ったアールヌーボーとジャポニズムの影響を受けているからとのことです。
ラーションは日本が大好きだったようで「日本は私の第二の故郷である」といっているそうです。(ちなみに、日本には来たことはないとのこと^^;)
第2章 挿絵の仕事 / Chapter 2, Illustration
ラーションは生計を立てるために挿絵の仕事に早くから取り組んでいます。
家族を描いた作品とは、違い、どことなく妖艶な雰囲気もある作品です。(ちょっとミュシャに近いところを感じます。アールヌーボーの影響ですかね)
「『シンゴッラ』小川のほとりのエーランドとシンゴアッラ」(1894年) ※ 購入した絵ハガキより
このほかに「『エジプトの土地から来た異邦人』踊り」(1894年)も、踊る女性の動きなど、しなやかで、できればこちらも絵ハガキが欲しかったです。(でも、なかったです)
ちなみに、ラーションは壁画の仕事も積極的に受けていたのですが、挿絵の仕事も同じように重要視していたようです。それは、ともに多くの人の眼に触れる「公共性」のあるものだからということらしく、多くの人に作品が見られるということを意識していた画家であることがうかがえます。
第3章 版画 ~ 家族の肖像 / Chapter 3, Printing : Family Portraits
ラーションは112点のエッチング、4点のリトグラフを残しているようです。
家族・友人・家政婦など身近な人が主題として描かれています。
このエリアには「作家の幽霊(拡大鏡の自画像)」「ゆがんだ顔」(ともに1896年)というい作品があります。これは、ともにラーションの心の影を描いたものとのことです。
ラーションは温か味のある画風ですが、幼少期は貧困、画学生時代はサロンからの低評価による挫折、そして18歳になった息子を盲腸で亡くす等、実は「陰」となる経験も結構ある画家です。この2作品だけは他の作品とは異質なラーションの心の奥を表しているように思いました。
第4章 ラーションとジャポニズム / Chapter 4, Larsson and Japonism
作品数は、少ないですが、ラーションとジャポニズムの関係を示す作品が展示されています。
今回、メインで取り上げられている作品ですが・・・
「アザレアの花」(1906年。水彩)
妻・カーリンがタペストリーを織り上げているところです。中央の花が大きく描かれているところなど、広重に通じる構図で、ジャポニズムの影響を受けているとのことでした。
第II部 ラーション家の暮らしとリッラ・ヒュットネース / Section II The Life of the Larsson Family, and Lilla Hyttnas
ここからは、ラーション夫妻が手掛けた家にまつわる展示です。
産業革命の影響による粗悪品の反動により自分で家づくりを重ねる「アーツ&クラフト運動」の影響を受けたデザイン、当時のイギリスのデザイナーであるウィリアム・モリスの影響を受けたデザイン、日本の違い棚の影響を受けたデザインの部屋や壁紙や家具などの写真や実物が並んでいます。また、カーリンがデザインしたテキスタイル等も展示されています。この点は実際の展示を見て、北欧の生活を感じていただければと思います。
(3) 最後に
イケアさんが再現した部屋です。リッラ・ヒュットネースを、キレイで現代っぽくした感じですが・・・
(こういう試みは嫌いじゃないです^^)
この日は、この後、渋谷に移動して、こんな感じで回りました。
クリスマスシーズンになりましたが、クリスマス気分を盛り上げに寄ってみるのも良いかもしれませんね。
※ 相変わらず長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。本記事で、このブログもなんとか100件目に到達しました。これからもよろしくお願いします!
以上です。ではでは。