こんばんは。今回も展覧会の鑑賞報告です。
おそらく、今年一番の注目の展覧会「フェルメール展」
開催からおよそ2か月。残すところもおよそ2か月。ちょうど、会期の折り返し地点ですが、相変わらずの人気ですよね。テレビでもフェルメールの作品が取り上げられる等、これから、ますます見に行く人も増えていくことかと思います。
実際に見に行ってきた一人として、会場の様子なども含め、報告します。
※ 以下の記述はフェルメール展の作品説明、図録、Eテレ日曜美術館、Web上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真などは図録を撮りました。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会:フェルメール展(東京開催)
ヨハネス・フェルメールは1632年10月31日にオランダ・デルフトに生まれます。(1675年没)
オランダのレンブラント等とともにオランダ絵画の黄金時代を代表する画家のひとりです。スペインから独立後まもない、貿易国として繁栄の過程にあったオランダで、台頭してきた市民の生活の何気ない一コマを芸術作品として昇華させた画家です。
画家の組合である聖ルカ組合の理事に2回選出されるなど、生前から評価は高かったのですが、英蘭戦争等の影響によりオランダ経済が冷え込んだ生涯最後の数年は不遇の状態にあり、死後、妻はフェルメールの絵画を売り、自己破産してしまいます。
「フェルメール・ブルー」「光の魔術師」とも呼ばれ、35作品しか残されていない寡作の画家としても有名です。波乱万丈な人生、謎多き画家。そして、あのシュールレアリスムの巨匠・天才ダリをして「フェルメールが絵を描く場面を10分間見られたら、右腕を切り落としてもいい」とまで言わせた画家です。
今回の展覧会は東京開催・大阪開催と2都市で開催されます。
フェルメール35作品のうち東京に9作品(同時展示は8作品)、大阪6作品と、史上最大規模のフェルメール展となっています。また、フェルメール以外にも同時代の画家の作品が40点程展示され、全48点のオランダ絵画の黄金時代を飾る作品たちに出会えます。
(2) 会場:上野の森美術館(上野)
JR上野駅 公園口から東京文化会館を左の方に入って3分くらいのところにあります。名前のとおり、森に囲まれています。これまでも、デトロイト美術館展、「怖い絵」展など、話題の展覧会を開催しています。(デトロイト美術館展は見に行きました)
(3) 会期・開館時間・展示替等
2018/10/5(金)~2019/2/3(日)
・不定休です。開館時間も日によって違いますので、こちらをご覧ください。
だいたい9:00-20:30です。
・時間指定入場制で、チケット購入時に入場予定の日時を指定します。
入場時間は次のとおりです。
(1)9:30~10:30、(2)11:00~12:30、(3)13:00~14:30、(4)15:00~16:30、(5)17:00~18:30、(6)19:00~20:00です。
(詳細は上記リンクをご確認ください)
入る時間は指定されていますが、一度入れば、出る時間は自由です。入替制ではありません。なので、他の方のブログなどでは、入場時間の終わりの方に行くと並ばずに入れるという記載も目にします。(恐らく、そうであろうと思いますが、私のお薦めは「訪問時間」の項で)
・フェルメールの「赤い帽子の娘」(1665-1666頃)は2018/12/20までの展示、代わって2019/1/9から会期末まで「取り持ち女」が展示されます。
(4) 料金
事前購入であれば大人2,500円、大高生1,800円、小・中学生1,000円
・当日会場での購入だと+200円(大人2,700円)です。入る人数に余裕があれば、当日券も販売されます。(期末になると当日では入れなくなる可能性もありますので注意です)
・音声ガイドは料金に含まれています。また、作品の説明が書かれた小冊子も会場で渡されます。
・図録(3,000円)とのセットで5,000円のチケットがあります。このセット券は12/6の夜の時点で12/9(日)の19:00~入場の回からしか販売されておらず、そのほかの日も19:00~の回しかないようです。
私は、このセット券をネットのぴあで買いました。
(入場時に渡される作品の説明。手でこすれて、青色が少し落ちていますが・・・)
(音声ガイドについてです。どうでも良いですが、私、石原さとみさん、ファンです)
(5) 訪問時間と混雑状況
12/1(土) 19:05頃 鑑賞時間は約80分でした。
・18:50過ぎに着きましたが、この時は会場の外で並んでいました。
・寒かったので案内の人が時間より少し早めに入れてくれました。
・入場開始から中に入るまでは10分くらいでした。
・ロッカーは外に設置されていますので、入場前に入れとく必要があります。係の人が説明してくれます。100円ですが、開錠時戻ってきます。(なので無料)
(チケット売り場で奥はロッカーです)
・部屋の中は混雑していますが、入場時間指定のおかげか、ギュウギュウのすし詰めということはありません。会場はあまり広くはありませんが、十分見られると思います。
【私のお薦め】
19:00~の入場指定で入ることのが、今回のお薦めです。
入場までもあまり待ちません。また、48作品なので20:30までであれば、十分に見ることができます。そして、ここがお薦めポイントですが、20:00以降、人が入らないので、20:00以降、最初から二度周りすると、とても空いた状態でゆったり見られます。
私は普段から展覧会は最初一通り回った後、スタートに戻って気に入った作品、気になった作品を二度見してまわります。(ある美術雑誌のライターの方のお薦めの見方で実践しています)
今回は作品数も多くはないので、20:00くらいまでに一通り回って、その後、最初から二度見しても十分に各作品を堪能できます。
いわゆる「フェルメール部屋」と言われているフェルメールの作品だけを集めた部屋がありますが、20:00以降であれば、かなり空いた状態でゆっくり見られます。時間に余裕のある方は、ぜひお試しください。なお、ゆっくりし過ぎてミュージアムショップを廻る時間がなくならないように、ご注意あれ。
(6) 美術館メモ
・写真撮影はNGです。
・ミュージアムショップはあります。絵ハガキ120円、図録3,000円。このほか、トートバッグ等もあります。詳細はこちらを↓
今回は、図録のセット券を購入していたので、他のグッズは買いませんでした。図録は写真もきれいで「買い」だと思います。
(7) 行くきっかけ(情報源等)
2018年の「日経おとなのOFF」1月号の表紙が既に「牛乳を注ぐ女」でしたので、この時点で決めていましたが、どんな展覧会か情報を収集して、満を持して行くことにしました。(はてなブログのいろいろな方の記事も情報源として、とても参考になりました。ありがとうございました)
ちなみに2019年の「日経おとなのOFF」1月号も絶対に見逃せない2019美術展特集です。買わなければ。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
フェルメールは、2008年東京都立美術館で7作品が展示される展覧会が開催され、2012年にはやはり都立美術館でマウリッツハイス美術館展で「真珠の耳飾りの少女」が来たときにも見に行きました。これまでも好きで、よく見に行っています。
今回は、まずは「牛乳を注ぐ女」のフェルメール・ブルーのスカートと青を見るのを楽しみに行きました。フェルメールは青が注目されますが、黄色や赤も印象的で、特に青の反対色である黄色はむしろ青以上に使われているようにも思います。「真珠の首飾りの女」「リュートを調弦する女」の女性の上着は黄色でフェルメールもお気に入りのものだったようです。(遺産目録に載っていたとか)
また、手紙はラブレターで女性の揺れる心を、ワイングラスは女性への悪い誘惑を想起させるもので、何気ない日常シーンの中に、いろいろな意味を含ませた絵が多いことにも気づかされます。静謐な光の中に繰り広げられる市民の生活シーンをちょっと覗き見る、そんなところもフェルメール作品の面白さだと思います。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
まず、入場すると2階に通されます。2階はフェルメールと同時期のオランダ絵画が展示されています。
1 オランダ人との出会い:肖像画
これまで王や貴族が残してきた肖像画が市民へと広がっていった時代の肖像画です。
ヤン・デ・ブライ「ハールレム聖ルカ組合の理事たち」1675年
聖ルカ組合は画家の組合で、画家も左から2番目に描かれています。なかなか個性が強うそうな面々で。
2 遠い昔の物語:神話画と宗教画
日常を題材とした画題が多いオランダの画家でも歴史画・宗教画は重要なテーマの一つとして描かれています。
ヤン・ファン・ベイレルト「マタイの召命」(1625~1630年頃)
右側のイエスが指さしている先に税収所に座るマタイ(左端)に「わたしに従いなさい」と言っている「マタイによる福音書」9章9節にちなんだ作品とのこと。光あふれる画面ですが、マタイのちょっと面食らった感じが十分に表現されています。
3 戸外の画家たち:風景画
多くの画家たちがスケッチブックを片手に戸外に出ていきます。この時代は戸外で作品を完成させるのではなく、スケッチしたものを総合してアトリエの中で一つの作品に仕上げていく手法で描かれているようです。
シモン・デ・フリーヘル「海上のニシン船」(1649~1650年頃)
海の上に靄がかかった様子が描かれています。少し、ターナーを思わせる感じです。
4 命なきものの美:静物画
17世紀の美術評論家は歴史画・宗教画は評価するけど、命なきものの静物画は評価の対象とならなかったようです。しかしながら、市民には人気があったようで、緻密に描きこまれた静物画は質感が伝わってくるかのようです。
ヤン・ウェーニクス「野ウサギと狩りの獲物」(1697年)
狩りの獲物を描かれた絵は多いですね。見ていると捕まって可哀そうですが、毛並みの表現など、柔らかさが伝わってきます。
5 日々の生活:風俗画
私はこの頃の風俗画が好きです。オランダ改革派教会からは過度の飲酒は慎むように指導されていたようで、さらに飲んでいるところを描いた絵は、飲み過ぎないための教訓として作成されたようですが、実際、陽気に飲んでいる人たちからは楽しい雰囲気が伝わってきます。
ユーディト・レイステル「陽気な酒飲み」(1629年)
モデルは喜劇役者とのこと。作者は女性画家です。陽気な感じが伝わってきます。
ハブリエル・メツー「手紙を読む女」(1664~1667年頃)
ハブリエル・メツーはフェルメールから影響を受けた画家とのことですが、構図等、よく似ています。むむっ、この黄色の上着、どこかで見たような・・・
2階は、ここまで。
2階から1階に階段で降りると、白を基調とした少し休める部屋があります。ここではデルフトなどのオランダの風景などの映像がゆっくりと流れています。
そして、白いトンネルのような通路を抜けると現れるのは・・・
光と影:フェルメール
フェルメールの8作品のみが、この部屋に展示されています。フェルメール・ブルーを基調とした部屋の中に並ぶフェルメールの作品たち。一つ一つは小さいのですが、そこに描かれた光は、フェルメールが生きていた時代の生活シーンへの小さな窓が開けられているかのようです。(是非20:00以降に行ってみてください)
作品と鑑賞者の間に少しスペースが広めにとられているので、若干距離感を感じるところがありますので、美術鑑賞用の小さな単眼鏡や双眼鏡など持たれている方は、持っていた方が良いと思います。
ここでは、フェルメール作品を3点程ご紹介。
「手紙を書く婦人と召使い」(1670~1671年)
写真では撮れていませんが、画面右下に赤い斑点があります。これは昔の便せんを停めるための蝋だそうです。このようなものが床に落ちているのに手紙を一心不乱に書く婦人。きっと恋文なのでしょう。それを腕を組んで冷ややかに外を見る召使い。この二人の熱の違い、距離感が面白い作品です。フェルメールは静かな光の中で微妙な心の動きを見事に描き出していると思います。
「真珠の首飾りの女」(1662~1665年)
今まさに首飾りを着けようとしている女性。どこかに出かけるのでしょうか。この黄色衣服。どこかで見ませんでしたか。ハブリエル・メツーの絵にも現れます。影響受けまくってますね。ちなみにこの服がフェルメールの遺産目録に入っていたようです。
「牛乳を注ぐ女」(1658~1660年)
テーブルのパン、女性の太い腕、鮮やかな青と黄色の服、画面右下のストーブ。オランダの生活が見事に切り取られ芸術作品として成立しています。注がれる牛乳が、時間の流れ、この絵が動いているかのような錯覚さえ感じさせます。
(3) 最後に
今回の展覧会は大阪でも開催されますが、「恋文」という作品は大阪会場だけの展示です。また、展示替えの「取り持ち女」も大阪会場では展示されます。大阪の展覧会も見に行きたくたりました。
オランダでフェルメールの少し先輩(30近く)の巨匠・レンブラントも光の使い方が鮮烈で光の画家と言われます。でも、この二人の光はまったく違います。劇場型の煌々とした光、内面を映し出す光を描いたレンブラントに対し、フェルメールは自然な光、オランダの空気も感じさせるような光、静かながら凛とした光を描く画家だと思います。ある意味、画家の主張が廃された自然な光が、日本的な光に近く、私たちの心を離さないのだと思います。
ということで、フェルメール展の報告は以上ですが、フェルメール展に行く前に入った上野の美術館の常設展示では、これもフェルメールではないか?と言われている作品を展示しています。もし、これもフェルメールだとしたら、今の上野には36(35+この作品)作品中、9作品が見られるということになります。
本展は通常の展覧会よりチケット料は少し高めですが、音声ガイドも作品解説もついていますし、是非、この機会を逃さないよう、展覧会を訪れてもらえればと思います。フェルメールの光に包まれてきてください。
ちなみに、私事ですが、100記事をアップしたので本ブログを「PRO」にしてみました。100記事書いたら、もう、辞めないでしょうし、ただただ、みたかったので。この記事は、PRO化1つ目(101目)の記事です。アラフィフ男子の雑感をつれづれ書くブログで、細々と続けていますが、気ままに、そして一つでも何らかの情報提供ができればと考えています。
新たなURLはこちら↓
これからも、よろしくお願いします。
ここまで、お読みいただき、ありがとうございました!
ではでは。