よろこんで!**してみました。

アラフィフ男子が、何気ない日常生活で楽しいと思うことを、つれづれに書く雑記ブログ。美術・落語・スポーツ観戦・グルメ・お酒に旅行等々。たまには、なにか語ることもあるかも・・・

【展覧会】「アンドリュー・ワイエス展」@美術愛住館(2019/4/29):都心・新宿の小さな美術館

こんばんは。

 

  今回もGW中に行った展覧会・美術館からのご報告です。

 

美術愛住館一周年記念

「アンドリュー・ワイエス展」

 

アンドリュー・ワイエスと言えば、アメリカの国民的画家。写実的で繊細な絵が多くのファンを魅了しています。個人的には、絵画を見るきっかけになった画家のひとりです。本展ではワイエスの習作など40点が展示されています。

 

今回も、まとまりのない内容ですが、早速、ご紹介してみたいと思います。しばし、お付き合いを。それでは、さっそく、展覧会に!

 

※ 以下の記述は美術愛住館のパンフレット、作品説明、そのほかWeb上の解説等を参考に記述しています。また作品の写真はパンフレット・絵ハガキを撮りました。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1)展覧会:美術愛住館一周年記念「アンドリュー・ワイエス展」

aizumikan.com

アンドリュー・ワイエスは1917年7月12日アメリカの東海岸ペンシルバニア州チャッズ・フォードという街に生まれます。父は成功したイラストレータ、N.C.ワイエス。なので、裕福な家庭で育ちます。

幼少期は虚弱体質・神経衰弱で小学校はほとんど通わずに退学。16歳まで家庭教師に就いて読み書きを学び、絵はイラストレータであるお父さんから学んでいました。9歳で水彩画を始め、12歳ではもう出版社からイラストの注文を受けます。20歳のときにNY・マクベスギャラリーで開いた初の個展で、出品作品が完売という快挙を成し遂げています。若いころから才能を発揮した画家だったと言えるでしょう。

1939年22歳のとき、メイン州クッシングで翌年結婚するベッツィと出会いますが、ここでその後30年間描き続けることになるオルソン姉弟(姉・クリスティーナ、弟・アルヴァロ)をベッツィから紹介されます。1948年31歳のときにオルソン姉弟の姉・クリスティーナを描いたクリスティーナの世界」はワイエスの出世作であり、代表作であり、アメリカでもっとも有名な絵の一枚となりました。発表後、直ちにニューヨーク近代美術館に1800ドルで買い取られ、永久収蔵品となっています。

ワイエスは生まれたチャッズ・フォードと別荘のあるメイン州クッシング以外にはあまり出かけず、その町にいる人たちを題材に絵画を描き続けます。そして、2009年1月に生まれ故郷・チャッズ・フォードでその生涯の幕を閉じます。91歳でした。今回の展覧会もオルソン姉弟の住んでいたクッシングの家、オルソン・ハウスの関連作品を中心に展示されています。 

 

  ちなみに今回の作品は埼玉県朝霞市の「丸沼芸術の森」さんのコレクションです。こちらは若いアーティストの支援を目的に1980年代に設立。常設展示はないですが、ワイエスの素描・水彩など238点所蔵とのこと。年一回展覧会もあるようです(初めて知りました^^;)

 

(2) 会場:美術愛住館(新宿・四谷三丁目)

aizumikan.com

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※ 美術愛住館(びじゅつあいずみかん、Aizumi Art Museum)は、つい先日(2019/2/8)亡くなられた経済評論家・堺屋太一氏と妻で洋画家の池口史子(ちかこ)氏の住居であり仕事場であった建物の1階、2階を改装して展示スペースとしています。3階は期間限定で公開される特別展示室とのこと。四谷の「愛住町」にあるので「あいずみ」館です。美術館の壁の絵は池口氏の作品。初めて見たけど、結構好きです。ちなみに建物の設計は安藤忠雄氏だそうです。建物にはフレンチレストラン・ラトラスフィスが併設されています。(神楽坂のラトラスというお店にいたシェフがやられているとか。有名みたい^^;)

最寄り駅の「四谷三丁目」(東京メトロ・丸の内線)の駅から消防博物館のところを出て、歩いて2・3分くらいです。四谷三丁目と言えば、個性派な飲み屋街「荒木町」があるので、今度は帰りに荒木町で飲みたいです。(荒木町には久しく行ってないなぁ)

美術館のパンフには「昨今流行りのポップ系、サブカルチャー系アートとは一線を画した、現代油彩画の神髄を伝える美術館にしたいと考えております。」と。このコンセプト、嫌いではありません。油彩ではないけど、一周年記念にワイエス、うなずける気がします。

 

(3) 会期・開館時間・展示替等

2019/3/16(土)~2019/5/19(日) ※ 今週末終了です(5/15記述)

・休みは基本的に月曜、火曜です。(祝日は振替あり)

・開館時間は11:00~18:00。入館は30分前まで。

 

(4) 料金

・一般・大学生500円、高校生以下300円

 

(5) 訪問時間と混雑状況

・4/29(月) 祝日の16:10頃に訪問。鑑賞時間は40分くらいでした。

・小さな美術館で人もいますが、混雑はしていません。ゆっくり見られます。


(6) 美術館メモ

・入り口の受付のところで絵ハガキなどが売られています。

・今回は 絵ハガキを購入しました。一枚80円でした。

・2階の展示会場に映写室があり、ワイエスに関するドキュメント映像が流れていました。(26分40秒)

・併設のレストランにも、いつかは行きたい。(美味しそう!)

・今週末5/18(土) 14:00~学芸員の方の作品解説会があります。(当日整理券配布。入館料は必要です)

 

(7) 行くきっかけ(情報源等)

今回は、「東京の展覧会通信」でも紹介している、こちらのサイトを見て知りました。

artscape.jp「ワイエス」という名前に思いっきり惹かれて行ってきました。

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

アンドリュー・ワイエスの絵は徹底した写実主義で、詩情漂う作品です。ただ、単純に写実的、詩情漂うというだけではない「何か」を感じます。同じ対象を何度も描いた画家です。徹底した観察から生み出される徹底した写実主義の作品は、ある種、科学的な客観性を持ち、どこか冷徹な眼差しがあるようにも思えます。一方、描く対象への愛着、慈愛、敬意があるからこそ描き続けたとも言えるでしょう。徹底した「写実」といろいろな「感情」が相まって生まれる「詩情」が作品の中に静かに流れている、そんな感じでしょうか。あくまで、個人的な所感です。

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それでは、早速、会場に入ってみましょう。

  

(2) 展覧会の構成と気になる作品

1階展示室

1階の展示室で気になった絵です。

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「納屋のツバメ」(「さらされた場所」の習作) 1965年

二階の割れた窓に突っ込まれたのは毛布だそうです。オルソン姉弟の弟・アルヴァロが突っ込んだようです。アルヴァロ自身は神経質なところがあり、モデルをするのは嫌いだったそうです。割れた窓に毛布。誰も描かれていないのにオルソン家の生活そのものが、なんとなく滲み出ているように感じます。

 

  なお、「さらされた場所」についての解説からですが、ワイエスは「オルソン家の肖像画」と言っていたようです。そしてそれは「滅びゆくもの」とも言っています。「滅びゆく」は否定的な意味というよりは、「オルソン姉弟がいなくなったら、この家もなくなってしまう」という意味で、この気持ちがこの絵を包む寂寥感を醸し出しているところでしょうか。

 

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「オルソン家の朝食」 1967年

家の外から、朝食の準備する人影。弟のアルヴァロです。食べるところを描かずして、姉弟二人の朝食シーンを描いています。姉・クリスティーナは幼少より下半身がマヒしていて歩くことができませんでした。この頃は、クリスティーナの体調が思わしくなかったようです。なお、翌1968年にクリスティーナは他界しています。


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「青い計量器」 1959年

青い計量器がボロ布(袋)の上に置かれています。計量器の内側は色が剥げ、使い込まれているところが、この持ち主の日々の暮らしや、気持ちまでを想像させる気がします。

 
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 「穀物袋」1961年

精緻に描きこまれた穀物袋。その傍にいる人物の顔ははっきりとせず、どこを向いているかも定かではありません。それが、穀物袋の存在感を一層際立たせているようです。

 

2階展示室
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「クリスティーナの世界」習作 1948年

 2階展示室は「クリスティーナの世界」の習作が数点あります。

 なお、「クリスティーナの世界」はこちらで確認できます。(MoMAのサイトです)

www.moma.org

この絵は、歩けないクリスティーナが草原の向こうに立っているオルソン・ハウスに這って戻ろうとしているところです。最初の習作から構図があまり変わっていないので、描き始めた時点でワイエスの中にはこの絵が存在していたのだと思われます。

ワイエスはクリスティーナについて、体が不自由で見た目にもあまり魅力を感じないが、素晴らしい心を持ち合わせていて、この絵を描く時も体が不自由であるとは意識しなかった、と言っています。なお、このとき、クリスティーナは既に50代半ば。実際のモデルは妻・ベッツィで髪は伯母の髪を描いているとのこと。

 

(3) さいごに

  私が「クリスティーナの世界」を最初に見たのは小学生高学年。新聞の日曜版に一面に掲載されたのをたまたま目にしました。最初、「写真?絵?どっち」と思いました。それくらい写実の描写に驚かされ、絵画に強い興味を抱いたのを覚えています。

当時は、この人は家の前の草原で休んでいると思っていました。一方、少し不自然なポーズだなぁ、という感覚もありました。彼女は体が不自由であったと言われると、このポーズも少し納得が行きます。ただ、「体が不自由であるとは意識しなかった」というワイエスの意識が、彼の妻と伯母を「コラージュ」した人物をつくりだし、だれにも彼女の体が不自由であることを感じさせない表現になったのだと思います。

ワイエスの絵は写実的で分かりやすいと言われます。でも、そこには絵の中には存在しないもの、見えないものまで描き込まれています。描かずして描いているからこそ、見ている人の想像力に訴えかけ、見る人それぞれの「詩情」が流れるのでしょう。

 

それでは、最後にリンクです。

marunuma-artpark.co.jp作品のある丸沼芸術の森さんのサイトです。

 

www.yorocon46.co

 

ちなみにワイエスが「滅びゆく」と言ったオルソン・ハウス。今は国定歴史建造物となり、近くにワイエスのお墓もあるとのこと。ワイエスが与えた"永遠"なのでしょう。いつか、行ってみたくなりました。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

ではでは。