こんにちは。三連休初日の昨日(2018/11/23)は快晴でしたね。私は、実家に帰省中の奥様を迎えに車でドライブ。都内の街路樹のイチョウはきれいに色付いていましたねぇ。
さて、こちらはだいぶ前ですが、ハワイから帰ってきた直ぐ後に行った展覧会です。これから寒くなりますが、上野界隈に来られたら、寄ってみられるのも良いかもしれません。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会名称
「京都大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」展
※ 大報恩寺は京都上京区のお寺です。鎌倉時代1227年に義空上人によって開創された真言宗智山派のお寺です。「千本釈迦堂」として知られています。千本釈迦堂の名前の由来は千本通沿いの釈迦堂という説明でしたが、所説あるようです。徒然草でも取り上げられているお寺さんです。
応仁の乱など、度重なる京都の戦火をまぬがれた本堂は洛中最古の木造建築として国宝に指定されています。また「おかめ」発祥の地でもあるそうです。
大報恩寺に関するリンクはこちらです。
今回の展覧会はこちらのお寺に伝わる快慶をはじめとした鎌倉時代の仏像彫刻の代表選手「慶派」の仏師たちの仏像が展示されています。
※ 今回もパンフレット、出品目録等を参照して記述しています。
(2) 場所
東京国立博物館(トーハク)
※トーハクの入り口を入り、右手奥にある「平成館」の2F。エスカレータを上がって右側の展示会場が大報恩寺展です。なお、左側はマルセル・デュシャン展を同じ期間で開催中です。
(3) 会期
2018/10/2(火)~12/9(日) ※月曜日休館
(4) 開館時間
9:30〜17:00
※ 金曜・土曜はナイトミュージアムで21:00まで開館しています。私は土曜の夕方に訪問しましたが、ナイトミュージアムがあるので、閉館時間を気にせず、ゆっくり見られて良かったです。
(5) 訪問時間
11/10(土) 16:05頃 鑑賞時間は50分程度です。
(6) 料金
大人1,400円、大学生1,000円、高校生800円、中学生以下無料
※ 私は、同時開催中のマルセル・デュシャン展とのセットの前売を買っていたので900円(併せて1,800円)でした。今もセット券で買うと2つの展覧会併せて2,000円(一つ1,000円)というお得なチケットもあります。
(7) 混雑状況
人は多いですが、混んではいませんでした。ゆっくり、見られました。でも、会期末に向けては混むかもしれません。
(8) 写真撮影
開場出口付近に展示されている六観音のうち聖観音菩薩立像のみ撮影OKです。それ以外はNG。
(9) ミュージアムショップ
ミュージアムショップは、平成館2階にも博物館全体の入り口にもあります。たぶんクレジットカード利用もOKでは。(今回は、買い物をしなかったので、確認していませんが)
(10) 美術館メモ
先程も書きました通り、「マルセル・デュシャンと日本美術」展が同時開催されています。トーハクの平成館で現代アートを扱う展覧会の開催は珍しい感じです。仏像と現代アートと日本美術。トーハクだからこその組み合わせかもしれません。ちなみに、この展覧会に続けてデュシャン展も見てきました。(デュシャン展はほぼ写真撮影可能です)
(11) 行くきっかけ
こちらは、チラシミュージアムに掲載されているのを見て、見に行くことにしました。仏像の展覧会は比較的見に行くことが多いです。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
トーハクの平成館2階は中央のエスカレータを挟んで左右に展示会場があります。一つの展覧会で左右の展示会場を使うこともありますが、今回は片方のみの展示ですので、その分、コンパクトにまとまった内容で、鑑賞時間も長くはかかりません。ただ、門外不出の秘仏「釈迦如来坐像」に釈迦の10人の弟子「十大弟子立像」そして「六観音」が一堂に揃い、そのほかの展示物も多くが重要文化財という、見ごたえのある内容だと思います。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
・大報恩寺の歴史と寺宝 - 大報恩寺と北野経王堂
このエリアでは、大報恩寺の歴史にかかわる展示内容となっています。大報恩寺に近い北野天満宮の門前にあった北野経王堂が描かれた洛中洛外図や大報恩寺所蔵の北野経王堂のお経などが展示されています。
・聖地の創出 - 釈迦信仰の隆盛
このエリアは秘仏「釈迦如来坐像」と「十大弟子立像」が展示されています。
「釈迦如来坐像」は快慶の弟子の行快作。「十大弟子立像」は快慶の最晩年に制作に携わった作品で、いずれも鎌倉時代・13世紀の作品です。
ちなみに、釈迦の十大弟子は、出品目録の説明をそのまま抜粋すると・・・
富楼那(ふるな):説法第一。どのような人でも説得して見せましょう
須菩提(すぼだい):解脱第一。何事にも執着しないことこそ、真理です
大迦葉(だいかしょう):頭陀第一。清貧をつらぬいて日々修行に励みました
目犍連(もくけんれん):神通第一。いざという時は、超能力が使えるのです
舎利弗(しゃりほつ):智恵第一。頭脳明晰、聡明さでは誰にも負けません
阿難陀(あなんだ):多聞第一。お釈迦様の話を一番たくさん聞きました
羅睺羅(らごら):密行第一。綿密に、隅々まで怠らずに精進しました
優婆離(うばり):持律第一。基本に忠実、戒律を守ることが重要です
阿那律(あなりつ):天眼第一。目は見えませんが、心の眼で見通せます
加旃延(かせんえん):論議第一。教団きっての理論家で、問答が得意です
中でも、目犍連立像は快慶自身の作と言われています。
鎌倉時代以前の優美な体形の仏像に対し、鎌倉時代らしい力強く、リアルな作風の像が並びます。釈迦如来坐像はきりっとした目に厚みのある唇。堂々とした風格ある姿です。十大弟子は、より人間の姿に近く、写実的で、本当に人がそこに立っているような存在感です。骨ばった体や浮き出る血管など、生身の人間に迫る表現が、釈迦に仕えた弟子たちの存在をよりリアルなものとして、私たちに伝えています。
また、釈迦如来坐像の周りに釈迦の十大弟子立像を配置していますが、大報恩寺では釈迦如来坐像と十大弟子立像は別々に安置されているとのこと。本来、並びえない仏像たちが、同じ空間に配置され、新しい空間を作り出す。これも、博物館の展示ならではの醍醐味だと思います。
・六観音菩薩像と肥後定慶
最後のエリアでは運慶の弟子、肥後定慶の「六観音菩薩像」(鎌倉時代・貞応3年(1224))が並びます。こちらは、比較的大きい像で、六躯の観音菩薩像が並ぶのは圧巻です。
六観音菩薩は「六道」に堕ちた人々を救うとされています。あらゆる生命(衆生)はそれぞれの行い(業=ごう)の結果、この六道のいずれかに産み落とされ、それを繰り返す。これが六道輪廻の世界です。
如意輪(にょいりん)観音菩薩坐像:サントリーの醍醐寺展でも展示されていましたが、座りながら思惟する像で六臂(六本の腕。八面六臂の「六臂」)の姿が通常です。天道(天上界)担当です。天人の世界ですが、まだ煩悩が残っていて、いずれ苦しみが来ます。(天人でも煩悩が残って、やがて苦しむとは、なかなか一筋縄ではいかないですね)
准胝(じゅんてい)観音菩薩立像:私たち人間道担当です。天台系では不空羂索(ふくうけんじゃく)観音がこの役目を担います。
十一面観音菩薩立像:修羅道担当です。修羅は争い、憎しみが絶えない世界です。
馬頭観音菩薩立像:畜生道担当です。動物の世界ですが、こき使われたり、肉にされてしまう牛馬の世界とのこと。(かわいそう)この観音様だけ忿怒の形相です。
聖(しょう)観音菩薩立像:餓鬼道担当です。飢えの世界から救ってくれます。
定慶(じょうけい)という名は、何人かが名乗っていたようで、区別するためには「肥後」の定慶と表記されています。このほかの定慶には興福寺の国宝「維摩居士(ゆいまこじ)」像の作者等がいますが別人です。
肥後定慶は比較的ふくよかな顔にふんわりと結われた髪の表現等、この時代の中では穏やかな作風であったと感じました。如意輪観音の六臂等、現実にはあり得ない姿も違和感なく表現されています。
10/30以降、現在は通常配置されている光背(仏像の背後を飾る後光を形どったもの)が外されてた展示になってます。なので、本来だったら見ることのできないお背中も間近で見ることができます。これも、このトーハクならではの試みの一つだと思います。
(3) 最後に
トーハクは昨年の運慶展、今年初めの仁和寺の御仏展等、本来の配置とは違う配置により、時代考証をしたり、通常非公開な空間の再現をしたりと、かなりアグレッシブな取り組みをされていると思います。これを見るのも楽しみの一つです。
お寺の参拝で拝見する仏像。お堂と中での安置された厳かな姿も、もちろん良いのですが、普段は見ることのできない配置、普段では近づくことのできない距離感、仏像そのものを観て味わう、これが仏像展の魅力であり、醍醐味ではないでしょうか。仏像を味わうには、質量ともに適した展覧会ではないかと思います。期間も少なくなりましたので、是非、機会があれば、ご訪問ください。
なお、今年初めの仁和寺展での写真撮影可能なエリアはこんな感じでした。
(この頃から、ブログをしようと思っていたのですが、なかなか始められず、この展覧会に触れることはできませんでした。ちょっと強引な感じですが、ご紹介まで。2018/3/4撮影です)
あと、2018/11/25(日)(この記事を書いている時点からみて明日)までですが、都内ではこんな仏像展も開催しています。もし、よろしければ、いかがでしょうか。
今年は仏像展も魅力的なものが多かったです。ちなみに来年2019/3/26からは同じくトーハクで「東寺 空海と仏像曼荼羅」展があるようです。これも見に行こっと。
ということで以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
ではでは。(今日も、これから、何か見に行こうかな・・・)