映画偏食家のよろコンです。「怖い」映画は苦手です(^^;)
映画ネタから久しく離れていましたが、今回は自称・映画偏食家が火曜日のテレワーク後、定時ダッシュ(死語^^;)で行ってきましたこちらの映画です。
「PLAN75」@吉祥寺・UPLINKさん
(映画のサイト)
(映画館のサイト)
この映画はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品ということもあり、公開前からテレビで紹介される等、注目されていました。
そして、この日、定時ダッシュした理由は、18:05からの回で映画の前に早川千絵監督と女優・河合優実さんのトークイベントがあるから。
河合優実さん。昨年の夏、青春映画「サマーフィルムにのって」で演じられたビート板にすっかり魅せられました。今回もその表情が心に迫るシーンがあります。
監督も、この映画から受ける印象とは違って、とても可愛らしい感じの方でした。
(河合優実さん)
phantom-film.com(いちばん奥で大声を出している眼鏡の子がビート板)
さて本題です。
今回はいろいろとネタバレ、個人的な意見も多々書いてます。
それを読むのはチョッと・・・という方は、ここまででm(_ _)m
・ストーリー(映画・映画館サイトを参考に)
- 少子高齢化が進んだ近未来の日本ではある制度が国会で可決・施行された。
- その制度とは<プラン75>、満75歳から生死の選択権を与えるもの。
- 夫と死別して一人で暮らす主人公の女性・角谷ミチ78歳
- 高齢を理由に仕事を突然解雇されたミチ、いろいろと思い通りに行かない現実の中、徐々に<プラン75>の申請を考え始める
・キャスト
- 主人公の角谷ミチ役は倍賞千恵子さん
倍賞千恵子さんと言えば寅さんの妹・さくら。神田伯山さんがラジオでこの映画に触れたとき、人情味あふれる昭和の寅さんの世界にいるさくらと令和の現実世界にいる<プラン75>のミチが、どこかオーバーラップして見える、ということを言われていました。確かに、頭の片隅で、自然と二つの役をオーバーラップして見てしまうところがあったように感じます。
- <プラン75>の受付窓口の市役所職員・岡部ヒロム役は磯村優斗さん
ある日、その窓口に意外な人が訪れ、そこからヒロムを取り巻く物語が展開していきます。
- <プラン75>を選択した人が「その日」を迎えるまでサポートするコールセンターのスタッフ・成宮揺子役はトークショーに来られた河合優実さん
ミチとの会話を通じて、徐々に彼女の気持ちにも変化が・・・
・映画は112分です。
・この映画見て、思ったことは・・・
- ありえないはずなのに、いかにもありそうな<プラン75>
- その制度をめぐる仕事も、それを仕事とする人々も、いかにもありそう設定、よくできています。
- 映画は<プラン75>のある世界がいかにも当たり前かのように静かに進んでいきます。
- そして、それぞれの登場人物たちが迎えるラスト、彼らを待ち受けるのは果たして未来への希望なのか、それとも不安なのか。
- 映画の世界から戻って来たとき、あの世界がもし現実だったら?と深く考えさせられる映画でした。
さて、この映画を見た後、ふと、ある話しを思い出しました。
それは、つい最近NHKのドラマにもなった星新一の「生活維持省」(1960年)
こちらの世界は「政府の方針」ですべての人々に土地が確保され、戦争も公害も犯罪も自殺も交通事故さえもない平和な近未来世界が舞台。でも、そんな理想的な世界を維持するために採用された「政府の方針」とは・・・
このショート・ショートが書かれたのは1960年。時は高度経済成長期。拡大・膨張を続ける社会には公害、交通戦争、ベトナム戦争といった新たな問題も溢れていました。このような問題を解決し、平穏無事な世界を維持するためには、ここまでの制度を作らなければならないのか、と学生時代に読んだ私には強烈なインパクトが残りました。ただ、このお話の制度は残酷なまでに誰しもが「平等」であること。ユートピアを求めた末のディストピアな世界。
一方<プラン75>の世界。「自己責任」という日本人好みの価値観を隠れ蓑にしながら、人々が生きることに対して社会が責任を放棄したかのような世界に思われます。<プラン75>を選択しなければならない人々は、決して希望していないのに、身の回りの現実から、選択せざるを得なくなった人々。
そして、これが行き過ぎると、やがて社会は「自己責任」という大義名分のもと<プラン75>の選択を積極的に迫ってくるようになるのではないか。自由意思による自己選択のように見えて、他者からの選択を受け入れざるを得なくなる世界。ディストピアな世界がさらなるディストピアへと加速していく。そんな、怖さを感じました。
こんな制度できるはずがない、とは言えない自分がいます。
こんな制度ができても私は決して選ばない、と思う自分もいます。
でも、本当に選ばないでいられるのだろうか?
もし、周りの人がこの制度を選ぼうとしたとき、自分はどのような行動がとれるのだろうか?
そして、これまで、私たちはこのような制度がひょっとしたら現実になってもおかしくないような世界を作ってきてしまったのでないだろうか。
だとすれば、このような制度が現実にならないようにするため、私たちはどのように行動していくべきなのか。
やはり、いつまでも考えさせられる映画でした。
ということで、いかがでしたでしょうか?
今回もここまでお読みいただいた方、ありがとうございました!
映画はやっぱり面白い。ですよね。
いや~映画って本当はいいものですよね。
それでは、さよなら、さよなら、さよなら