こんばんは。
私は旅行が好きです。旅は人生を上質なものへと昇華してくれます。
そして、ギュスターヴ・モローも影響されました・・・
ということで、今回も2017年11月上旬に行ったフランス・パリから、クリュニー美術館(国立中世美術館)。
こちらの美術館は「貴婦人と一角獣」のタピストリーが有名です。
(タピストリー:tapestry(英)/tappiserie(仏) 壁掛けなどに使われる室内装飾織物の一種)
現在、パナソニック汐留美術館で開催中のギュスターブ・モロー展(2019/4/6~6/23)。
そこで展示されている「一角獣」を主題とした作品群は、モローがこの「貴婦人と一角獣」のタピストリーにインスパイアされて生まれました。
モロー展を見たことにちなんで、モローともかかわりの深いこの美術館をご紹介。相変わらずとりとめのない記事ですが、しばし、お付き合いを。
※ 以下、クリュニー美術館に関するWebサイト、「2017-18 地球の歩き方 パリ & 近郊の町」(ダイヤモンド社)、ギュスターヴ・モロー展の図録等を参考に記述しています。
パリ、クリュニー美術館(国立中世美術館)
1~3世紀ごろ、セーヌの船主たちの同業組合によって建てられた公共浴場(Les Thermes)跡の敷地内にあります。
建物は、「14世紀にブルゴーニュで勢力を誇っていたクリュニー大修道院長に買い取られ、近くの学校に通う修道僧のための館が建てられた。フランス革命後は美術収集家の手に渡り、彼の死後、膨大な中世美術コレクションとともに、国家が所有することになった」(「2017-18 地球の歩き方 パリ & 近郊の町」から引用)とのこと。
休館は火曜日、1/1、5/1、12/25です。
開館時間は9:15~17:15(12/24、12/31は短縮)。
美術館がある場所は・・・
パリ5区。メトロ(地下鉄)では10号線のクリュニー・ラ・ソルボンヌ駅(Cluny La Sorbonne)が近いです。4号線サン・ミッシェル駅(St-Michel)、RER(イル=ド=フランス地域圏急行鉄道網)のサン・ミッシェル・ノートルダム駅(St-Michel Nortre-Dame)からも歩けます。(私はサン・ミッシェル駅を使いました)
この地域はカルチェ・ラタンと言われる古くからの学生街です。その名前はカルチェ(Quartier)=「地区」、ラタン(latin)=「ラテン語」ということで、昔、各地から集まった学生が共通語としてラテン語を話していたことが由来とか。美術館の近くにはパリ大学があります。
セーヌ川・シテ島からも近いので、サント・シャペルや残念な火事のあったノートルダム寺院からも回りやすいです。
駅を出て歩いていくと、美術館が見えてきます。
建物・塀・扉、中世の「館」という感じでしょうか。
外壁の工事の囲いにある案内板。肩車をして一生懸命、お知らせしている"人たち"に目が留まりました。こんな遊び心のあるところにフランスらしさを感じます。
中に入ると石畳の広場。そこから、建物を見上げると・・・
中世のパリにタイムスリップした感じです。
それでは美術館の中へ
パリの美術館の共通パス「ミュージアム・パス」対象ですので、ミュージアム・パスを見せて中に。(入館料は企画展開催時などで変わるので、事前にチェックしてください。美術館サイトへのリンクはのちほど。なお、パリの美術館をまとめて見るならミュージアム・パスのご利用をお勧めします)
ちなみに中は撮影可能です。パリのルーブルやオルセー等の主だった美術館はフラッシュはNGですが、概ね撮影可能です。
中に入っていくと、まさにそこは中世の世界。
ステンドグラス。大きくはないですが、色鮮やかです。
さらに進むと・・・
洞窟を思わせるような石造りの室内。ガラス・器・絵画等々、中世の品々が展示されています。
礼拝堂のような天井。窓の上には十字架のキリストも。
中世の剣・盾・鎧。騎士の世界です。
途中にも大きく色鮮やかなタピストリーの展示が。
そして、あの有名なタピストリー「貴婦人と一角獣」の部屋へ。
「貴婦人と一角獣」はパリで下絵が描かれ、15世紀末(1484年~1500年頃)フランドルで織られたものとみられています。1841年にフランス・クルーズ県ブーサック城で発見されたとき、かなり傷みが激しかったようですが、フランスの女流作家ジョルジュ・サンドが称賛したことで注目を集め、1882年にクリュニー美術館に収蔵されています。
日本では2013年に東京・乃木坂の国立新美術館の展覧会で展示されました。(私は行ってません^^;)
6枚の連作で、発見当初、タピストリーのテーマはわかっていなかったようですが、現在では5枚は「視覚」「聴覚」「臭覚」「味覚」「触覚」と人間の五感を表現し、残る1枚は「我が唯一の望みに」と題されています。(見に行ったとき、正直、こういう意味だったとは知りませんでした。知っていたら、もっと見方が違っていたかなぁ)
少し照明が落とされた部屋に6枚の大きなタピストリーが部屋を取り囲むように展示されています。暗い部屋に赤を基調としたタピストリーが鮮やかに浮かび上がります。部屋の中央に座るところもあるため、ゆっくりと華麗な中世の世界に浸ることができます。
「味覚」中央の貴婦人が侍女の差し出す器からキャンディを取っています。
(「味覚」のユニコーン。眼が優しそうです)
「視覚」ユニコーンが貴婦人の右手に持たれた鏡に映る姿を見つめています。
「触覚」貴婦人がユニコーンの角に触れています。
「臭覚」これは美術館で撮った写真が無かったので、買ってきた絵ハガキです。貴婦人が花輪を手にしています。
五感には、あと一つ「聴覚」があります。ポジティブオルガン(小型のパイプオルガン)を弾く貴婦人のわきに獅子とユニコーン、という図柄なのですが、この時は写真を撮っていませんでした。(残念)
そして、残された一枚・・・
「我が唯一の望みに」(A mon seul desir)
この絵の意味は分かってないようです。他の絵に比べても大きかったと思います。
五感を描いた絵の始まりなのか?終わりなのか?うしろのテントに入ることが「愛」「結婚」を意味している?五感を越えた「知性」や「六感」を意味している?さて、なんでしょうか。
(「我が唯一の望みに」の一部。猿も貴婦人を見上げています)
(「我が唯一の望みに」の一部。ウサギも周りで遊んでいます)
タピストリーを鑑賞して、この日は次のポンピドゥー美術館へと移りました。
クリュニー美術館は、中世がテーマなので他の美術館とは少し違ったパリの世界を味わうことができます。チョッとタイムスリップした感じでしょうか。展示品も多いですし、パリの美術館はいっぱいありますので、限られた時間では見切れない!というような方は、このタピストリー部屋を鑑賞することをメインとして、この美術館を訪れても良いかもしれません。この展示室にたどり着くまでの建物の雰囲気を味わうだけでも「中世」の世界に行った気になれます。
さて、このタピストリーにインスパイアされたモローの絵。
一角獣は、「純潔な乙女のみが捕獲できると伝えられる幻獣で、特にキリスト教では聖母マリアの処女性と関連づけられてきた」存在であり、モローは「女性の集う、女性だけが集う魔法にかけられた島。それはすべての造形モティーフに最も得難い機会を与えてくれる」とこの絵の注釈を残しているとか。(「」内はギュスターヴ・モロー展図録より)
「一角獣」(1885年頃) ※ ギュスターヴ・モロー展図録より
さらにもう一枚。
「一角獣と女性」(1885年頃) ※ ギュスターヴ・モロー展図録より
その美しく清らかな女性像と一角獣は、謎多きタピストリー「我が唯一の望みに」(A mon seul desir)に、モローが出した「答え」なのかもしれません・・・
ということで、いかがでしたでしょうか?
では、関連リンクです。
クリュニー美術館のサイトはこちら。(仏語、英語、スペイン語)
パリ・ミュージアム・パスで行けるところはこちらで確認できます。
Wikipediaですが、6枚のタピストリーを見られます。(「聴覚」はこちらで)
東京・パナソニック汐留美術館で開催中のギュスターヴ・モロー展。
パリに行くなら、近くにあります。
このタピストリーも、私には今週のお題「平成を振り返る」のワンシーンです。令和になっても、また見たいです。
ということで、今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
さて、もうすぐ、史上最大のGW!いよいよ計画を立てないと・・・
以上です。ではでは。