こんばんは。湘南第二弾です。私の中に湘南の風が吹いているうちに、記事はまとめて行きたいと思います。
会社の休みを取ってから「行こう!」と決めたところは、この美術展です。今回の休日の目玉です。そして、その後、しらす丼に続きます。(これだけ見たら、わけわかりませんね)
とにもかくにも、こんな美術展でした。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会名称
「開館20周年記念 原安三郎コレクション
小原古邨展 -花と鳥のエデンー」展
絵を見ると手で描いたようですが、実はこれ、すべて木版画です。
※ 小原古邨は「おはらこそん」と読みます。
日本ではあまり知られていない絵師で、あまり記録も残っていないようです。私も、もちろん初めて知りました。
古邨は1877年(明治10)に石川県金沢市に生まれます。(没年は1945年(昭和20))
本名は小原又雄。石川県工業学校で工芸と絵画を学ばれたようです。ここで東京から金沢に招聘された鈴木華邨(かそん)に師事します。「邨」は先生の華邨の一字をもらったものです。
華邨が東京に戻る1893年(明治23)頃、古邨も東京に出てきたようで、その後、1899年(明治32)古邨22歳のときから1902年(明治35)まで、絵画共進会展(岡倉天心・日本絵画協会など主催)に6回出品、ほとんどが花鳥画で5回褒状授与という実力を見せます。今回の展覧会もすべて花鳥画です。
そして古邨の花鳥画に目を付けたのが、そう、あのフェノロサ。古邨の絵画を西洋に輸出します。そして、海外で人気となり、もともとは肉筆画だったのを、手で描いていたのでは追いつかない!ということで版画で制作するようになったとのこと。海外では今でも人気が高く、最近でも画集が発売されるほど。(日曜美術館で言ってました)ところが日本では、あまり目にすることがなくなり、忘れられた存在に。今回の展覧会の作品も初出品のものばかり。この温度差。これもフェノロサの仕業かぁ・・・(フェノロサ、半端ない・・・って、別にフェノロサが悪いことをしているわけではないので、あしからず)
ということで、展覧会の詳細はのちほど。
※ いつもどおり本記事は、パンフや図録、あとEテレ「日曜美術館」等を参考に記述しています。
(2) 場所
茅ヶ崎市美術館
入口はこんな感じで、さらに緑を抜けていきます。
で、こんな建物です。けっこう、瀟洒な感じですよね
※ 今回、初めて訪問しました。隣が実業家・原安三郎(日本化薬会長)の別荘・松籟荘でもあり、あまり大きくはないですが、緑に囲まれた素敵な美術館でした。2階にはカフェもあります。(行ってないですが、今回の展覧会とのコラボした和菓子セットもあるようです)茅ヶ崎駅からも7・8分でしょうか。駅からは茅ヶ崎の飲み屋さん街を抜けた感じのところにあります。
で、私は車で行ったのですが、ここに落とし穴があります。【要注意!】です。
ナビで茅ヶ崎市美術館を指定すると、どうも裏口の方に案内されるようです。これが、もう住宅街の細い道で、行きつくと行き止まり(涙)。戻るのも結構苦労(また涙。運転下手なのに)です。私の前に一台同じ境遇の人がいて(浜松からきているのにかわいそう)、さらに後ろから2台、同じような車が来ました。美術館の前の道も細いのですが、もしナビの案内がホッそい路地に入りそうになったら、地図をもう一度確かめた方が良いです。「茅ヶ崎市立図書館」が隣なので、そっちをセットした方が良さそう。(私のスマホのNAVITIME ドライブサポーター調べ)
あと、美術館の駐車場(20台弱くらい)もありますが、今回の展覧会は人気があって、おそらくいっぱいです。周囲の駐車場の利用を検討しましょう。「NTTル・パルク」が30分100円で広くて近くて良さそうでした。駅の近くのアットパークは結構台数がありますが1時間300円です。(美術館までは5分くらい歩きます。私は、駐車場の人が台数が多いと言うので、こっちに停めました)
(3) 会期
2018/9/9(日)~11/4(日)
※ 月曜日休館。今は展示替えされ、後期展示期間です(10/10から後期)
週末も今週含めてあと3回!(2018/10/20(土)時点なので今週は日曜だけですが)
(4) 開館時間
10:00〜18:00(入館は17:30まで)
※ 金曜日ナイトミュージアムなし。
(5) 訪問時間
10/18(木) 12:30頃から鑑賞。鑑賞時間は60分程度です。展示室は1階と地下1階の2部屋で、そこまで広い会場ではないので、十分、見られると思います。
(6) 料金
大人700円、大高生500円、中学生以下無料 ※ カード利用不可
茅ヶ崎市の65歳以上の方は無料とのことでした。
(7) 混雑状況
久々混んでる展覧会で、並びました。(美術館の写真の通り)
まず、入るのに15分ほど待ちました。12:15くらいについて、そこから待ちました。5分毎に16・7人入場という感じです。
でも、この入場制限おかげで、展示会場は人は多いですが、ぎゅうぎゅうで見られないということはまったくありませんでした。人数がいる割に、また、作品がどれもA4くらい(370mm×190mm前後)で大きくないのに、十分見られました。
ちなみに、展覧会から出てきた13:30頃は、もう人は並んでいませんでした。木曜日の昼でこれだけの人なので、週末は人が多いことが予想されます。早めに行かれた方が良いかと思います。
(8) 写真撮影
OKです。フラッシュを焚かなければOKなので、大きなカメラを持ってきている人も2、3人いました 。(館内に「シャッター音が響くので、撮り過ぎ注意」なんて注意書きもありました)
私も写真ができれば、良かったなぁと思います。結構撮ったけど、ライトが反射して、あまり良い写真にはならなかったです。(残念)
こんな感じです。
(絵は良いけど、顔が映りそう)
(9) ミュージアムショップ
受付に絵ハガキ、図録などを販売しています。(ショップではないけど)
なお、私が訪問する前は図録は売り切れていたようですが、行ったときはありましたので迷わず購入。展覧会の図録は1,200円です。絵ハガキもあります。中には売り切れているのもあるので、要注意です。
こちらも、クレジットカードNGです。
(10) 美術館メモ
緑の道を抜け、ちょっと丘になっているところを上がると美術館があります。展示スペースは決して広くはありませんが、キレイで、一階にはちょっとした図書スペースもあります。また映像室もあました。二階のカフェは富士山も見られるとのことでしたので、ドライブに、ちょっとした散策に、寄られるのも良いかなぁと思います。茅ヶ崎なので江の島も車で15~20分もあれば行けますので。
(11) 行くきっかけ
こちら、最初に知ったのはチラシミュージアム。気になっていたんですよね。でも、茅ヶ崎市美術館は家からは遠いので、行こうとは思ってませんでした。でも、たまたまEテレ「日曜美術館」の日曜20:00からの再放送を見て、展覧会の内容を知って、この絵が木版画だったのだと知って「行こう!」と思いました。ミーハーですよね。でも、行ってビックリ。まさか平日の昼に都内から結構離れた美術館で、こんなに人がいるとは。テレビの影響力って凄いです。でも、それだけの作品だとみんなが思ったということかと納得してます。
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
小原古邨は日本では忘れられた画家です。でも、海外では今でも脚光を浴びている画家です。絵はどれも花鳥画です。日本人は自然に敏感という海外の日本人イメージと古邨の愛らし絵がマッチして、人気を博しているのではないか、そうオランダの研究家は述べていました。
今から飛び立とうとしている木莬(みみずく)の絵、跳ねる鯉と水しぶきの絵、一瞬を切り取っていますがそこには羽の音や水しぶきの音が聞こえ、飛び立っていく鳥や、跳ねた魚の動き、それから流れていく時間が感じられる、そんな絵があります。つがいの鳥たちや親子の猿、夫婦・愛情をテーマとしている作品も多いです。
それぞれの作品は、浮世絵の技巧が、いかんなく駆使されていて、
・正面摺:艶を出したい模様を掘り残した版木を紙の裏にあてて、表の絵の具面を陶器などでこすって艶を出す技法。烏の羽などに適用されています。
・きめ出し:雪や波などを凹凸のある版木でこすり輪郭線を際立たせる技法。雪や波で使われていて立体感を表現。
・板目摺:淡い色を用いて板目を際立たせる技法。背景などに活用。
・雲母(きら)摺:雲母の粉をニカワやノリで紙に定着させる技法。アブラゼミの羽に活用。
などなど。その技法が、さりげなく生かされている。
また、西洋からの近代的な顔料なども利用して鮮やかな色を出しているとのことです。
立体感のある絵、鮮やかな色、その濃淡、一つ一つが凝っていて、ここまでくると逆に肉筆画では表現しきれない、版画だからこそできた絵なのだと、納得します。古邨の表現も版画に移ってから更に幅を広げていったのではないかと、個人的には思っています。
こちらも「見ればわかる」そんな展覧会ではないでしょうか。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
展覧会の構成は1階から地下1階の展示室へと
春 - 夏(一階展示室) - 秋 - 冬 - 花鳥画:吉兆・寓意 - 滑稽堂板 - 古邨以前の花鳥画(地下一階展示室)
と流れていきます。基本的に「春夏秋冬」の絵の並びなので、一階が混んでいたら地下一階からと、どこから見ても楽しめる展覧会だと思います。
ということで、ここからは各パートの絵をいくつかご紹介。(図録から)
・春
(土筆に猿の親子)
(桜につがいの孔雀。私は、孔雀の絵が好きな傾向にあります)
(枝垂れ桜に尉鶲(じょうびたき)。板目摺が分かりやすいですね)
・夏
(跳ねる鯉。水しぶきはきめ出しになってます)
(柳に油蝉(あぶらぜみ)。蝉の羽が雲母摺です)
・秋
(有明月に木莬。この絵の版木が残っていて、テレビでは現代の摺師がこの絵を再現していました。そうするとみみずくに当たる光(背中が明るい)と月の位置から、この月は水面に写る月であろう、ということが分かったようです。プロフェッショナル同士、作品・制作過程を通じて理解しあえる。すごい世界だなぁ、と改めて奥深さを知りました)
・冬
(雪松に大鷹と温め鳥。温め鳥は冬の季語で、鷹などが冬の寒い時に小鳥を捉え足元に入れてホッカイロのように使う、この小鳥のことだそうです。初めて聞きました。朝に小鳥を逃がすとその日の鷹は小鳥が飛んで行った方には狩りに行かないそうです。事実かどうかは?ですが、こういう題材を絵にすることが、古邨の花鳥画の根底に流れるテーマにつながっているようで、ほっこりします)
・その他
(踊る狐)
(蛙の相撲。さっきの絵もあわせ、こんなユニークな絵も描いてます)
(3) 最後に
途中、「滑稽堂版」という展示がありますが、今回の展示のほとんどは大黒堂版です。大黒堂さんは小林清親の光線画なども手掛けていた版元ですが、その後の浮世絵衰退や関東大震災などの影響で昭和6年に廃業しているようです。
少し、話は変わりますが、浮世絵(木版画)は、版元がプロデューサー、絵師(この場合、古邨)が絵を描き、版画制作の指示をする脚本家兼監督的役割、そして彫師、摺師がいて完成する。一人だけでできる芸術ではなく、どちらかというと総合芸術のようです。(そういえば、ターナー展でも、ターナーは銅版画を作成する過程で彫師・摺師(に該当する人たち)にすごい注文を出して作成していたという説明がありました。そして、ターナーの版画はヨーロッパで人気を博したとのことでした)
小原古邨はこの版画の制作方法があっていたのかなぁ、と思いました。肉筆では表現できない技法を駆使し、一人だけでは完成しない色付けや線描を彫師・摺師と作り上げる、その過程を楽しむ、だから古邨の絵は、鮮やかで、さりげないけど良質で、そして優しく、温かさもある作品になっていったのではないか、そう思います。
今年は、古邨のように再発見の展覧会が目立ちますので、よろしければ、こちらも。(10/20時点で、いずれもまだ開催中です)
そして、この日のお昼のしらす丼は・・・(冒頭のしらす丼はこれのことです)
ということで、湘南編。あと、もう一つ・・・
(よく遊んでるねぇ。どこ行ったの)
・・・せっかくの年休ですから。また、のちほど。
ではでは。