もう、お盆になりましたね。今、私の住んでいるところは雨が降っていましたが、相変わらず蒸し暑いです。この展覧会に行ったときも、それはそれは暑かったです。少し前UPした山種美術館「水を描く」に続けて行ってきたので、報告です。こちらもお盆にやっています。
[目次]
I.展覧会概要
(1)展覧会名称
「ルーブル美術館展 肖像芸術ー人は人をどう表現してきたか」展
ルーブルの中でも肖像芸術(絵画・彫刻・銅像等)に焦点を当てています。ルーブル美術館全般から展示というよりテーマに基づく企画展です。
(2) 場所
国立新美術館 @ 乃木坂 または 六本木
ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
※ いつもは、直結している乃木坂駅か、都営大江戸線の六本木駅で7出口から東京ミッドタウンに出て、政策研究大学院大学の前を通っていきますが、この日は六本木ヒルズの駐車場に車を停めて、歩いて行きました。六本木ヒルズからは7、8分でしょうか。
なお、六本木ヒルズは「ヒルズカード」があると、2時間まで駐車料金無料です。(今回はこの特典サービスを利用しました)
(3) 会期
2018/5/30(水)~9/3(月) ※ 火曜日休館 ただし、今度の8/14(火)は開館しています。
(4) 開館時間
10:00〜18:00
※ 金・土はナイトミュージアムで21:00までです。
(5) 訪問時間
7/22(日) 16:30頃 鑑賞時間は70分程度でした。
(6) 料金
大人1,600円、大学生1,200円、高校生800円、中学生以下無料
※ 私は、かなり前の前売で1,000円のときに購入しました。
(7) 混雑状況
行ったのは少し前ですが、日曜日の夕方でも、混んではいませんでした。鑑賞者は普通にいますが、ゆっくり見られます。
(8) 写真撮影
撮影不可です。
(9) ミュージアムショップ
絵ハガキは普通サイズのもので一枚150円(税抜き)です。
クレジットカードは利用可能です。
(10) 美術館メモ
ルーブル美術館展のほかにいくつかの展覧かもやっています。私が行ったときは書道展をやっていました。8/24からは「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」と『ジョジョの奇妙な冒険』の原画展をやるようです。(私はあまりアニメに興味がないのですが、こちらの方に来る人も多そうですね)
(11) 行くきっかけ
ルーブル展をやることは以下のようなところから、情報を得ています。
・日経おとなのOFF 2018年1月号 2018美術展ハンドブック(2017年の年末に購入)
・チラシミュージアム
ルーブル展ということで、情報を得た時点で行くつもりでいましたが、3月9日にオンラインサイトからチケットを購入しました。
ルーブル美術館はフランス・パリの現地にも3回行っているので、見てみたいと思ったのもきっかけです。(きっかけを語るというより、ルーブル展=「見に行く」というマインドセットになっていましたね)
II. 展覧会所感
(1) 個人的な所感
ルーブル美術館は3度のパリ旅行で、実際に現地に行ってきました。
1日や2日で見られるような数の展示ではありません。その中から、ルーブル展として展示を選りすぐるのは、大変な作業であったと思います。(ルーブル展は開催されるたびに思いますが、学芸員の方はやりがいもあるでしょうが、その分、大変なことも多いかと思っています)今回のテーマは「顔」。古代エジプトやギリシャからナポレオン、そしてアルチンボルドの絵など、いろいろな顔をテーマにした展示が日本に来ています。今回は絵画というより、特に展示の前半は彫像が多い印象です。
(2) 展覧会の構成と気になる作品
(こども向けパンフレットのフロアマップです)
・プロローグ マスク-肖像の起源
ここでは、エジプト出土のマスクと肖像が最初に飾られています。最初は、上のパンフの左上のマスクが展示されています。それとあわせて、写真はないですが板に蝋画で描かれた女性の肖像が展示されています。この肖像画は、写実的で、このような絵がエジプト時代に描かれていたのかと思うような、現代の肖像画にも通じる表現だと感じました。
・1. 記憶のための肖像
このエリアは、古代オリエント、古代ギリシャの肖像が並びます。続けて、ローマ時代、中世パリの肖像が展示されています。
なかには、ペスト流行時の流行のスタイルとのことで、痩せた女性の腹部を虫が食べたり、腸が出ていたりと、凄惨な姿の彫像もあります。16世紀のブルボン公爵夫人、次いでブーローニュおよびオーヴェルニュ伯爵夫人ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム(1465-1511)の像で、墓標として像が作成されているようですが、なぜ、このような像が流行となるのか、今度、調べてみたいと思います。(こういうのが流行る感覚は、正直、私には理解しがたいというのが率直なところですが、歴史的事実として、その背景にあるものに興味はあります)
・2.権力の顔
こちらも古代エジプト、イタリア、ギリシャなどの彫像の展示に続き、フランス・ルイ14世などの彫刻や油彩が展示されています。
こちらでは若き日のナポレオンの姿として、アントワーヌ=ジャン・グロの「アルコレ橋のボナパルト」が展示されています。絵を見ても若さが伝わりますが、若き日が描かれているので、威厳あるイメージを保つために多少矯正されたナポレオンの絵より、こちらの方が、真実の姿に近いのでは、という話を聞いたことがあります。いかがでしょう?!
このエリアでは、このほかにクロード・ラメ「戴冠式の正装のナポレオン1世」という大きな像が展示されたり、フランチェスコ・アントンマルキの「ナポレオン1世のデスマスク」など、ナポレオン関連の展示が続きます。ナポレオンのデスマスクは医学的にデスマスクが採取された後、あとで売れることも考え、複製されていたとのことで、展示も複製のようです。これが、本当のナポレオンの顔からとったマスクかと思うと、ナポレオンの時代と今がつながるような感じで、タイムトラベルをしたかのような不思議な感覚を覚えます。
続けて、ドミニク・アングルによる「フランス王太子、オルレアン公フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン=オルレアン(1810-1842)の肖像」(前述パンフの右下)の絵などが展示されています。このほかには、当時の宝飾品、指輪、カメオ(浮き彫りの装飾品)などが多数展示されています。
男性の権力の象徴が続いた後は、女性の権力の象徴です。
クレオパトラ、スペイン王妃の肖像が続きますが、私が、中でも目を引いたのはセーブル王立磁気製作所ルイ=シモン・ボワゾ(1743-1809)の原作に基づく「フランス王妃マリー=アントワネット(1755-1793)の胸像」です。以前、サントリー美術館さんでしたっけ、セーブル展にも、同じような胸像が展示されていたと思いますが、磁気でこのような造形をどのように作り出すのかと思うような、緻密で精巧な作り、髪等の感じも、よく表現されていると感じました。ぜひ、見てみてください。
・3. コードとモード
このあたりから、絵画が多くなってきます。また、権力者だけではなく、いろいろな肖像画が増えてきます。
こちらでは、最初のパンフレットにも掲載で今回の展覧会の顔ともいえる
ヴェロネーゼの女性の肖像・通称「美しきナーニ」をはじめとして
・レンブラント「ヴィーナスとキューピッド」(上記パンフレット左上)
・エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン「エカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人(1761-1829)の肖像(上記パンフレット右上)
などが展示されています。私はエリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブランはフランスの女性画家ですが、彼女の描く女性像は若々しさ、みずみずしさ、明るさが表現されていて、個人的には結構好きで、ルーブル美術館に行った時もほかの絵の絵ハガキを購入してきました。
(※ この絵は、今回の展覧会には展示されていません)
そして、ゴヤの描いた「第2代メングラーナ男爵、ルイス・マリア・デ・シストゥエ・イ・マルティネス(1788-1842)の肖像」という子供の絵も、私の持っているゴヤのイメージ(少し重たい感じ)と違ったかわいらしい絵だと思い、思わず絵葉書も買ってしまいました。(上記パンフレットの左下の子供の絵です)
・エピローグ
いよいよ最後ですが、ここで、あのアルチンボルドの作品が2点展示されて終了です。ルーブルでも見ました。確か、少し前(昨年?)西洋美術館でも展覧会があったかと思います。何べん見ても、不思議であるが、なにか魅了されるものがある。「顔」をテーマとした展覧会のエピローグにふさわしい最後の展示のように思います。「顔」って、いったい、なんなんだろう。。。
(3) 最後に
ルーブルは膨大な収蔵品でモナ・リザのように絵画のイメージもありますし、ミロのビーナスのような古代ギリシャの彫刻、またハムラビ法典のような考古資料等々、世界最大級の美術館でもあり、博物館でもあります。その中のほんの一部ですが、ルーブルの持つ博物館的要素、美術館的要素を「顔」というテーマでまとめて、ルーブルらしさを感じられる展示だったと思います。テーマ性もあり、おもしろい展覧会であったと思います。ぜひ、夏休みに、一度、訪れてみてください。
以上です。